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3-26警備隊が調べてみる

「でもエルフは簡単に他者を害さない、他種族を見下さない、もちろん人間を下にも見ない。だから、イデアが連続殺人犯ではないはずだ」


 僕はそう考えてイデアが犯人である可能性を否定しようとした、でも僕が見た夢がもしそのままイデアの経験したことだったら、ソアンが言っていたように長い妄想の果ての犯行だったとしたらだ。確かにイデアは連続殺人犯に合う特徴をいくつも持っていた、声変わりをしているという少年だったし、恋愛ができないというのも去勢されているせいかもしれなかった。それにエルフは成人すると年齢が分かりにくくなるのだ、だからもしかしたら150歳よりもっと年上かもしれなかった。


 それだけの長い経験をイデアが殺人に費やしていれば、それは恐ろしく習熟した連続殺人犯なれるはずだ。僕はまさかと思いつつ目の前にいるイデアを見ていた、彼は連続殺人犯を馬鹿にする曲も嫌がった。そしてイデアの歌う美しいボーイソプラノ、その声で普通に話をしたら連続殺人犯のように、小鳥のような高くて美しい声かもしれなかった。そんなふうに疑念を抱いた僕に対して、イデアとアウフの二人は子犬のように平和にじゃれあっていた。


「リタ、いい加減にコイツをどうにかしてくれ!?」

「好きです!! これこそ恋です!! 心から愛してます!!」

「…………いや他人の恋愛関係に、迂闊に口を出すわけにはいかないから」


「俺とコイツは恋愛関係なんかじゃない!?」

「いいえ、もう恋人と言っても過言ではないです!!」

「…………恋人だって言っているし、僕は関係がないかなと思う」


「俺を見捨てるのか、リタ!?」

「さぁ、イデアさん。俺と一緒に愛の世界へ行きましょう!!」

「…………どこの世界か分からないけど、歌の邪魔をしないでくれるかな」


 そう言うと僕はまた例の連続殺人犯の為の曲を歌いだした、その曲を聞いた途端にイデアの顔の表情がこわばった。しつこく寄ってくるアウフを牽制しているが、目はずっと僕の方を見たまま曲を聞き続けていた。この曲は連続殺人犯を貶めて、皆を元気づける曲だ。それをどうして嫌がる、曲に対して過剰に反応する、もしかしてという思いが僕の中で強くなっていった。


 街の通行人や広場にいる者たち、彼らはこの曲に対して銀貨や銅貨を投げてくれたりしていた。ソアンがそれをしっかりと回収している、僕はソアンに相談したくなった。だから今日は演奏はここまでにして、広場から少し早いが引き上げることにした。イデアがまだアウフに纏わりつかれていたが、人間にしか見えないがアウフは獣人族で、大いなる種族だから殺される恐れはなかった。


「ソアン、僕は恐ろしい可能性を考えている」

「もしかして、イデアさんのことですか」


「え!? どうしてそう思うんだい」

「イデアさんは犯人の候補の一人です、そしていつもあの曲に過剰に反応します」


「ソアンの言っていた犯人の特徴にも当てはまる、でも何か証拠を調べるのは難しい」

「いきなり下着を脱がせることもできません、ですがイデアさんが持っている物を調べるとか」


 僕たちは帰り道で小声で話し合って、ジーニャスにも相談することにした。領主の別宅に帰ってさっそくジーニャスに相談すると、彼は少し考えて警備隊に持ち物の検査をさせると言った。ただ本当の犯人だったら警備隊が危険だ、だから何を見つけても異常はなかった、そう言わせて引き揚げさせることになった。それから街に来てからのイデアの行動、こちらも警備隊に調べてもらうことになった。


「できればこの考えが外れて欲しい、あのイデアが犯人だなんて……」

「とてもあり得ない話で信じられないですか、いざ連続殺人犯が捕まった時に周囲がそう言うことがあります」


「ソアンはどう思っているんだい、君の考えではイデアは連続殺人犯なのか」

「あの曲への反応を見る限りは怪しい、私としてもこの思いは外れてほしいですけれど」


「警備隊の動いた結果次第か、何も起こらないことを祈るよ」

「はい、もしイデアさんが犯人だと、私たちもまずいことにもなります」


 イデアは確かにエルフだった、もし本当にイデアが犯人だった。そうなったら、このオラシオン国とプルエールの森との関係が悪化しかねなかった。プルエールの森のエルフではなくても、連続殺人犯がエルフだと噂になれば、人は同じ種族であるエルフを憎みかねなかった。だからイデアが犯人だったら、ソアンの言う通りとてもまずいことになるのだ。


「いずれにしろ、警備隊が調べに行く。リタ、警備隊のふりをして一番後ろで控えておけ」


 ジーニャスは領主の跡取りとしてそう判断した、そして警備隊に何か起こってしまうことを考えて、僕もその場に立ち会うことになった。警備隊の服を着て帽子で顔や耳を隠して後ろから見守るだけ、もしイデアが上級魔法を使った時に、皆を守れるようにそうすることになった。ジーニャスは貴族として街の皆を守るつもりだ、誰一人死なせたくないという彼の判断だった。


「リタ様、無理はしないでくださいね」

「ちょっと荷物を調べるだけだよ、これでイデアの疑いがはれるといい」


「ええ、そう願っています。私がお傍にいられないのが悔しい、それがとても残念です」

「さすがに警備隊に女性は少ないから、僕も目立たないように後ろで見守るよ」


「リタ様に、大いなる力の加護があらんことを」

「ああ、ありがとう。行ってくるよ、ソアン」


 翌日僕は警備隊に加わってイデアのところへ行った、イデアはあちこちの宿を転々としていた。一カ所に留まらずいろんな宿を試している、そう警備隊が来た時に言っていた。イデアはとても落ち着いていて、荷物の検査をしたいという警備隊に、何故そんなことをすると聞いた。連続殺人犯の捜査をしているというと、一瞬だけ顔色が変わったが好きにしていいと答えた。そうして一通り、イデアの持ち物を調べた。


 リュートに衣服、それに旅に必要な道具などが沢山あった。ローブも見つかったが血はついていなかった、だが『魔法の道具(マジックアイテム)』だったら血がつかない可能性があった。警備隊はジーニャスに言われたとおりにイデアの持ち物を調べて記録した、何も見つからないかと思ったその時だ、ふと僕はイデアのリュートに目が止まった。


 イデアのリュートは音がどこかおかしかった、だからもしかしたらと思って他の警備隊の者に、思いついたことをこっそり耳打ちした。僕はそのリュートの中を調べるように頼んだ、警備隊がリュートに手をかけるとイデアが顔をしかめた、それからリュートの中からは袋が出てきた。その袋の中にはいろんな物が入っていた、ボタン、首飾り、腕輪、時計、そして髪留めなどだった。


 どれも普通の品で何も怪しいところは見られなかった、何故リュートの中にこんなものを入れているのか問われると、イデアは警備隊に向かって平然とこう言った。


「今までの旅の思い出の品なんだ、大事なものだからリュートに隠している」

読み終わったら広告の下にある☆☆☆☆☆から、一話ごとに★をください、★は何個でもかまいません、貴方の気持ちを★の数にして贈ってください。


例:★大嫌い ★★嫌い ★★★普通 ★★★★良い ★★★★★とても良い などでどうぞお願いします。

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