2-23エリクサーを手に入れる
「ソアン、ジーニャスとフォルクはもうデビルベアの群れと戦っているようだ」
「ええ、そうですね。この剣士さん達がお二人の護衛だったのでしょう」
「ステラ、僕たちの目的はジーニャスの救出、それに運が良ければエリクサーの入手だ」
「はい、リタ様。ジーニャスさん、それにシャールさんの命がかかっていますね」
「そうだった、ステラ。これをつけておこう、少しはデビルベアを誤魔化せるかもしれない」
「リタ様、それは何のお薬ですか? くんくん、あれっ匂いが何もしない」
「以前にこのダンジョンで拾った匂い消しの薬だ、デビルベアも生き物の匂いに敏感なはずだからね」
「なるほど、凄いですね。一滴で私についていた匂いが、もうすっかり消えました」
僕は自分にも一滴だけ匂い消しの薬を使った、足元が血の海だから血の匂いが靴につくことは避けられない、だがそれ以外の生き物独特の匂いはこの薬で消すことができた。そうしてから僕たちは更に警戒を強めながら、デビルベアの群れがいたと書き込んであるカイトの地図、それを頼りにして奥の方へと進んでいった。
するとやがて大勢の人間の声がした、それはデビルベアと戦っている剣士たちだった。でもほとんど戦えている剣士はいなかった、ただ魔法使いの中には中級の攻撃魔法で、どうにかデビルベアを一頭なら倒すものがいた。でもその魔法使いも魔法を使った隙を別のデビルベアに狙われた、あっという間に彼の首はデビルベアの鋭い爪で引き千切られた。
ここで戦っている命令に忠実な剣士や魔法使いには悪いが、僕たちの目的はあくまで友人であるジーニャスを助けることだった。だから僕たちは戦いには加わらずに、戦っている場所を避けて更に奥にある森に歩みを進めた。そうするとやがて小さな祠が見えてきたが、デビルベアが2頭そこの前をうろついていた。いや既に犠牲になった剣士や魔法使い、彼らをデビルベアは食べていたのだ。
「……ソアン、まずは魔法で僕が一頭を倒す、だからそのあとを頼むよ」
「はい、その後に次の魔法の詠唱が終わるまで、リタ様は私が必ずお守りします」
「それじゃ、行くよ。『火炎嵐!!』」
「リタ様には絶対に近づかせません、こっちですこの熊野郎!!」
僕がまず右側にいたデビルベアを炎の魔法で焼き殺した、するともう一頭いた左側のデビルベアが僕めがけてやってきた、ソアンは僕とデビルベアの間に入って大剣でデビルベアの攻撃を防いでみせた。だが力持ちのソアンでも防ぐのが精一杯だった、僕は素早く次の魔法の詠唱をしていた。そしてソアンに合図した、彼女はデビルベアの攻撃を弾き返して素早くそいつから離れた。
「『強雷撃!!』」
ソアンがデビルベアから離れたところを狙って強い雷を魔法で落とした、デビルベアは雷で脳まで焼かれて白い煙をあげながらドスンとひっくり返って動かなくなった。逆立っていた毛並みもねてしまっていたから、そのデビルベアが死んでいるのは間違いなかった。僕とソアンはお互いの無事を素早く確認して、そのままデビルベアが守っていた祠のような建物に入っていった。
その中には古代遺跡でできた大きな広場があった、そうしてそこの中心にはジーニャスとフォルクがいた。だがジーニャスが既に傷を負っていた、なんと右腕を肩から斬り落とされていたのだ。見ただけで分かったが出血の量が多かった、ジーニャスにはすぐに治療が必要だった。フォルクが血で染まった剣を持っていて、ジーニャスの頭を乱暴につかんでこう言っていた。
「なぜ、貴様は兄に逆らう? あんな妾の妹など死んでも構わん。なのに何故父上は貴様を選んだ?」
「…………フォルク兄上、どうか俺が弟だと思い出してください」
「何を馬鹿なことを言っている、貴様が弟なのは嫌なくらいに分かっている!!」
「…………兄上、どうか昔に、以前の貴方にお戻りください」
「貴様の言っていることは分からん、俺様は今も昔も変わらない。このゼーエン家のたった一人の跡取りだ」
「…………兄上」
僕とソアンはフォルクがジーニャスのことに集中している隙に、フォルクの後ろにこっそりとまわりこんだ。そうしてフォルクがまたジーニャスに剣を振り下ろそうとした時、その時に二人で飛び出してフォルクをソアンが思いっきり突き飛ばした、僕はフォルクに魔法『気絶』を効果範囲は狭く威力は最大でかけた。フォルクは剣を持ったまま気絶して倒れた、僕たちはすぐにジーニャスにかけよった。
「ジーニャス、しっかり!! 今斬られた右腕を繋ぎます!!」
「リタ様、ジーニャスさんの右腕です!!」
「…………うっ、兄上」
ジーニャスは失った血が多すぎるのかぐったりとしていた、ソアンが切り落とされたジーニャスの右腕を見つけて、僕がその右腕を『大治癒』の魔法で元通りジーニャスにくっつけた。彼はしばらく『兄上』としか言わなかったが、やがて僕とソアンのことに気がついた。そうして、僕たちに彼は弱々しくでも彼らしい抗議をした。
「リタ、ソアン。なんという危険な場所にきたのだ」
「フォルクが貴方を狙っていると、そう偶然に聞いてしまったのです」
「リタ様がご友人を見捨てられるとお思いですか!?」
「ふはははっ、なるほどプルエールの森のエルフたちは仲間想いだな」
「ええ、だからここからも無事に脱出しますよ」
「そうです、もう外の剣士や魔法使いは全滅してるかもしれません」
僕とソアンは両側からジーニャスを支えて立たせた、最初はふらついていたがジーニャスは自分の力で立ちあがった。それから彼はこう言った、自分の命も危なかったのに彼はこう言ったのだ。
「どうか力を貸してくれ、リタとソアン。エリクサーが、シャールの為のエリクサーがここにある」
僕たちはふらつくジーニャスについていき祠の奥に入っていった、そこにはまた大きな広場があってその中心の台の上に、キラキラと光をはじいて輝く薬瓶が置いてあった。どうやら何かの宝石でできている薬瓶らしかった、ジーニャスはその薬瓶を大事そうに手に取った。そして腰につけている小さな鞄に、その内側が綿でできている鞄の中に大事そうに入れていた。
「俺の先祖がいつか一族で必要になったら使え、そう書き残していたたった一つのエリクサーだ」
「失礼ですが、それは本物でしょうか」
「『鑑定』の魔法が必要ですね」
ジーニャスの先祖が残していたからといって、そのエリクサーが本物とは限らなかった。これだけ人の犠牲を出しておいてだが、偽物である可能性も否定できないのだった。でもジーニャスは疑ってしまった僕たちに力強く笑ってみせた、彼がこうやって笑う時には何か自信がある時だけだった。それから彼はこう言った、そうして僕たちを驚かせてみせた。
「いいや、必要ない。俺は大魔法使いだぞ、だから『鑑定』だって使える。これは本物のエリクサーだ」
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