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2-12希望のある未来をみる

「どうしてエリクサーが見つからないんだ、見つけた者には俺様が金貨1000枚を与えるぞ!!」


 そう言って騒いでいるのはこの街の領主の長男であるフォルクだ、一度エリクサーを金貨1000枚で手に入れたからまたそれを狙っているようだった。フォルクの周囲にはエリクサーに一見すると見えるような、とても豪華な薬瓶を持った冒険者が溢れていた。でも皆がエリクサーの本当に価値を知っているはずだ、それらしく見せてフォルクに金貨1000枚で売ろうとする偽物だろうと僕は思った。


 フォルクは自分の部下に『鑑定(アプレイゾル)』をさせていた、当然だがエリクサーは一瓶も見つからなかった。本当なら金貨10000枚以上の価値があるのに、本物のエリクサーを金貨1000枚で売ったりはしないのだ。フォルクはイライラと自分の右手の爪を噛みながら怒鳴っていた、同じことを狂った機械のように繰り返して言っていた。


「ソアン、関わり合いになると面倒だから、目線を合わせないようにしよう」

「はい、リタ様。相手にせずにさっさと、エテルノのダンジョンに入りましょう」


 しばらくエテルノのダンジョンに入る人の列に並んでいるとジーニャスがやってきた、そしてフォルクに何事か言うとフォルクはジーニャスを殺しそうな目で見たが、それ以上は何もせずにダンジョンの入り口から去っていった。ジーニャスは人々に向かって優雅に一礼し、それから何人かの剣士たちと一緒にエテルノのダンジョンに入る列に並んだ。


 どうやらジーニャスもエリクサーを手に入れたいらしい、それは妹のシャールに使うためなのだろうか、話をしてみたかったが距離が随分とあってそれはできなかった。僕たちは列が順調に進んでいって、エテルノのダンジョンにまた入っていった。入ってすぐには状況が分からなかった、僕とソアンは真っ暗な空間に入ってしまったからだった。


 こんなところでデビルベアに遭ったらたまらない、だが動物特有の生臭い匂いなどはしなかった。それよりも僕にとっては懐かしい匂いがした、プルエールの森の自分の部屋に戻ったような気がしたくらいだった。これは時間がある程度経った紙の匂いだった、そう古い本たちの匂いに間違いなかった。だからソアンに魔法を使って貰った、そうして僕らはまたこのダンジョンに驚かされた。


「リタ様、灯をつけます『永き灯(ロングライト)』」

「ああ、ありがとう。ソアン」


「ええ!? こっこれは!?」

「この前は薬品庫で、今度は図書室なのかな」


「凄いです、本がいっぱいです。あっ、でも私には読めない」

「古代文字の本だ、僕も全ては読めないな」


 僕たちが立っていた入り口から少し先に頑丈そうな扉があった、その中には本棚がずらりと丸く円を描いて並んでいた、そしてその中心にある台の上に二冊の黄金と銀でできている本があった。僕たちは罠の可能性を考えて慎重にその本に近づいた、でも近づいてみても罠も仕掛けも何もなかった。ただキラキラと光をあびて輝く黄金と銀の本がそこにはあった、僕はその黄金の方の本を手に取ってみた。何千年か何万年か経っているだろうに、白くて美しい劣化していない紙で中身はできていた。


 僕は片言だが古代文字も読むことができるから中を見てみた、この本はおそらくだがこの図書室の中で一番に重要な本だ。そうして分かったのは今の僕には簡単には解読できないということだった、この本は持ち帰って調べるほかなさそうだった。古代文字は難しく今の僕には村にはあった研究室がない、だから僕自身の記憶に残っている古代文字だけが頼りだった。


「ソアン、この黄金の本は僕が持って帰る」

「はい、リタ様。重要な本なのですね」


「多分だけどこの本が読めれば、エテルノのダンジョンのことが分かると思う」

「それは重要な手がかりです、リタ様ゆっくりとほどほどの速さで解読してください」


「ふふふっ、僕は昔から夢中になると他の何もかもを忘れてたっけ」

「そうですよ、酷い時には眠るのも忘れるから心配なんです!!」


 そうして僕は表紙が黄金の装飾でできている本を自分の荷物に入れた、少しだけ重いが本の中身は紙だから一冊くらいなら問題なかった。さて他の並んでいる本達などはどうしたものだろうか、とりあえず僕はもう一冊の装飾が綺麗な銀の本を手に取ってみた、そうしてすぐに読める単語だけをひろって読んでみた、ソアンは古代文字が読めないから魔法の灯で僕の手元を照らしてくれた。


「最初……純粋な水……、……の薬と、……葉を混ぜて……エリクサー……、えっ、作り方!?」

「はいぃ!? その本はエリクサーの作り方の本なのですか」


 僕が次に手に取った本にはどうやらエリクサーの作り方が書いてあった、でもいくつか分からない単語があって材料を全部揃えるのは難しそうだった。それでもこの本は現代の錬金術師にとっては二つとない宝物になる、それと同時に悪用しようとする者にとっては最悪の万能薬の教本になってしまう、この本もこのままここに無防備に置いておくことはできなかった。


「ソアン、どうやら本物のエリクサーの作り方みたいだ」

「それは放っておけません、リタ様」


「ああ、いつかプルエールの森に帰る時に持って帰ろう」

「そうですね、悪い人間に悪用されないように」


 できるなら今すぐにプルエールの森に持ち帰って、僕の研究の一つにしてしまいたかった。だからこの銀の本も持って帰ることにした、金と銀の本を僕は荷物にいれてしっかりと持った。それから他の本もソアンと一緒に見たが、どれも今では作れない貴重な薬の作り方の本だった。持って帰るのは簡単だがそれを悪用される恐れがある、僕たちは他の本達はこのままここに眠らせておくことに決めた。


 僕はクレーネ草の薬を飲んで中級魔法までが使えるようにした、ソアンも中級魔法までなら使えるが今回は僕が魔法を使った方が良かった、そしてこの図書室から出たら僕は頑丈な扉に魔法をかけた。


「強く外れることのない鍵をかけよ『施錠(ロッキング)』っと。よし、これで僕以上の魔力を持つ者しかこの扉は開けられない」

「リタ様以上の魔力もちとなると、オラシオン国でも一人か二人でしょうね」


「それでいいんだ、民衆に容易く使えるような薬ばかりじゃない」

「悪い人が使ったら、とっても怖いことになりそうです」


「上級の回復薬だけでも、きっと凄く怖いことが起こりそうだ」

「簡単で完全に人間の傷の回復ができるなら、例えばですが戦争に利用されそうです」


 そうソアンの言う通りにこの部屋にある薬の本は確かに人々を救う、でも一歩使い方を間違えれば薬は毒となって人々に害をもたらすだろう、今の僕たちにはまだこの膨大な知識を得るのは早過ぎるんだ。もっと世界が平和な国々ばかりになって、戦争なんてものが滅多に起こらなくなったなら、そうなったらここの知識は有効に活用されるのだ。 


 その時がいつくるのかは僕たちにも分からない、僕はあと750年くらいは生きるだろうから、僕が生きている間にその時が来ればよかった。そうでなければ未来へと希望を繋ぐのだ、いつか僕も誰かと婚姻して子供を育てその子に未来をたくすのだ。できるならば早く来て欲しい美しく魅力的な未来だった、だがそんなに簡単なことではないと僕もソアンも思っていた。


「今はまだ眠っていてくれ、希望のある未来がくるその時まで」

読み終わったら広告の下にある☆☆☆☆☆から、一話ごとに★をください、★は何個でもかまいません、貴方の気持ちを★の数にして贈ってください。


例:★大嫌い ★★嫌い ★★★普通 ★★★★良い ★★★★★とても良い などでどうぞお願いします。

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