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2-10思わぬ幸運がやってくる

「ソアン、デビルベアの足跡だ。しかも……、まだ新しい」

「分かりました、リタ様。ゆっくりと刺激しないように下がります」


 僕たちはデビルベアの足跡を見ていきなり走って逃げたりはしなかった、普通の熊でも走って逃げるものを追いかける習性があるからだ。だから近くにいるのかもしれない相手を刺激しないように、慎重に静かにゆっくりと歩いてその場から去った。デビルベアがどこにいるのか分からない、だから僕たちは一旦は出口まで戻ることにした。


「ソアン、周囲に注意しながら出口に戻ろう」

「はい、リタ様。またダンジョンには入りなおせばいいです」


 かなりデビルベアの足跡を見つけたところから離れてからのことだ、僕たちが後ろを気にして振り返ったら、十数頭のデビルベアが集まっているのが見えた。僕たちはそれを見て森に身を隠すようにして動いた、木々の影に隠れながら記憶しておいた地図をたよりに出口に向かっていった。デビルベアの群れは幸いにも襲ってこなかった、こちらが風下で僕らの匂いなどがデビルベアに届かなかったのが、それが良かったのかもしれなかった。


「ソアン、ほらっ出口だ」

「はい、リタ様。良かった、出口です」


 ソアンから先に出口に入ってもらって僕たちは外に出た、今更ながら背中を冷たい汗が滑り落ちていくのが分かった。一歩、あと一歩を不用意に踏み出していたら危ないところだったのだ、僕たちが今ここで生きているのは慎重に行動していたから、そしておそらくデビルベアの群れが空腹でなかったことが原因だった。なぜ彼らが空腹でなかったのかはあまり想像したくない、他の冒険者が襲われていないといいと願った。


 僕もソアンもしばらく青い顔をしていたがやがて落ち着いて、またダンジョンに入る冒険者の列に並びなおした。僕とソアンは列が進むのを待っている間に、声を出さないで合図だけで会話するように練習した。このエテルノのダンジョンはかなり危険なダンジョンだ、本当に気を抜かないで行動しなければならないと気合を入れなおした。


「ソアン、今度も同じようなことがあったら、まずは落ち着いて同じようにしよう」

「はい、リタ様。ゆっくりと相手を刺激せずに、後ろに下がるのですね」


「デビルベアとは戦わない方がいい、一頭ならどうにかなるかもしれないが、それが群れだとなると話は別だ」

「一頭でも戦いたくない相手です、なるべく遭遇しないように慎重に行きましょう」


「ああ、本当にさっきは怖かった、この怖さを忘れないようにしよう」

「ええ、恐怖心を持つこと馬鹿にするのは、本物のお馬鹿さんだけです」


 そうやって次に僕たちがダンジョンに入ったら、何なのだろうか草原が広がっていたのだが、その草原の真ん中に奇妙な塔のような建物らしきものが見えた。僕たちは今度も慎重に辺りを見回しつつ、まるで塔のような建物に辿りついた。恐る恐るドアに触れてみると鍵はかかっていなかった、だからその塔に僕たちはゆっくりと入っていった。


 そうしてまた驚いた、そこには沢山の薬瓶が山のように並んでいたのだ。僕たちが数日前に拾った物と同じ物もあったが、それ以上に装飾に凝った薬瓶もあった。あまりにも薬瓶があるものだから、どれを持って帰ろうか迷ってしまった、だからできるだけ珍しい装飾が施されている物を中心に選んだ。エリクサーは貴重品だから、きっと普通の薬瓶には入っていないはずだ。


「ああ!! これを全部持って帰ることができる魔法の鞄が欲しいよ」

「そうですね、これだけあると迷ってしまいますね」


「できるだけ装飾が珍しい物、金や宝石が使ってある薬瓶を選んでくれ」

「はい、リタ様。うっわっ、これなんか大きいダイヤモンドがついてます」


「本物なら薬瓶だけでも売れるね、中身の薬はきっと大事なものなんだろう」

「全部持って帰れないのが本当に残念です、それにここには二度と来られないかもしれません」


 僕もソアンも同じように見つけた薬瓶の全てを持って帰りたかった、でもそれはどうしようもない無理な話でしかなかった、僕たちが二人で運べる量には限界があったからだ。僕たちはできるだけの薬瓶を荷物につめた、でもそれでも走れるだけの余力は残しておかなくてはならない、ここから出口までに何があるのか分からないからだ。


 こうして僕とソアンは大量の薬瓶を持って帰った、全て荷物の中に入れておいたから出口でも、他の冒険者の注目を集めなくてすんだ。すっかり重くなった荷物を抱えて二人で宿屋に帰った、あとは食事やいつもどおりのことをして眠りについた、いや持ち帰った薬のことを思うとなかなか眠れなかった。今度こそエリクサーが見つかっているといい、そう思いながら僕は眠り薬でどうにか眠りについた。


「これは血液のお薬です、特別な病気の方に効きます」

「これは匂い消しの薬です、一滴で匂いがすっかり無くなります」

「これは血止めの薬です、切り傷などにどうぞ」

「これは強い解毒剤です、効果はほとんどの毒薬に効くでしょう」

「これは……」


 僕たちは翌日になって持ち帰った薬瓶の山を冒険者ギルドに持ち込んだ、そこで『鑑定(アプレイゾル)』をして中身を調べてもらった。そして必要の無いものは売ってお金して、必要そうな薬はいくつか売らずにとっておくことにした、例えばマンチニール木などには猛毒があるので強力な解毒剤は必要だった。それから一つだけとても気になる薬がみつかった、ソアンがダイヤモンドがついていると言っていた薬瓶のものだった。


「これは万能薬(強?)です、凄いです!! …………多分ですが、エリクサーにも近い薬かもしれません」


 それを聞いて僕は判断に困った、万能薬という名前は良いとして、効果の(強?)とは一体なんなのだろうか分からなかった。『鑑定(アプレイゾル)』が使える冒険者ギルドの職員にも、(強?)の意味は分からないようだった、だから彼女は多分ですがと僕たちに言ったのだ。僕たちはひとまず荷物の整理をするために宿屋の部屋に戻った、それから僕は万能薬(強?)を飲むべきか飲まないでおくか、そのことに僕はいつになく凄く悩んでしまうことになった。


「リタ様、そのお薬って飲んで大丈夫ですか?」

「分からない、だけど一応は万能薬だ」


「効果が(強?)っておかしいですよ」

「そうなんだ、何が起こるか分からないから困った」


「今回は止めておいたほうが、やっぱりよろしいのではないでしょうか」

「………………いいや、飲んでみるよ!!」


「リタ様!?」

「飲んでみて僕がおかしくなったら、殴ってでもいいから止めてくれ」


 僕は万病薬(強?)という薬を飲むことにした、そうしないと後悔することになりそうだからだ。やっぱり飲んでみれば良かったと思いたくない、もし何か起こったとしてもソアンなら僕を殴ってでも、多分なんとかしてきっと止めてくれるはずだ。僕は決めたことをすぐに実行した、そうして飲んだ薬はとてもあまい蜂蜜のような味だった。僕はだんだんと薬が効いてくるのが分かった、そんな僕にソアンがそうっと小さい声で話しかけてきた。


「リタ様、どうですか? お体は大丈夫ですか?」

読み終わったら広告の下にある☆☆☆☆☆から、一話ごとに★をください、★は何個でもかまいません、貴方の気持ちを★の数にして贈ってください。


例:★大嫌い ★★嫌い ★★★普通 ★★★★良い ★★★★★とても良い などでどうぞお願いします。

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