1-32薬に抵抗する
「クレーネ草の副作用がきたんだ、ソアン。ごめんね、本当にごめんね」
「リタ様、クレーネ草は毒草だとご自分でおっしゃったじゃないですか!?」
「でも薬として使うこともある、今回は薬にしている時間がなかったんだ」
「魔法を使うために大事な薬を使った、嘘じゃないけど私に本当のことを言いませんでしたね!!」
「だからごめんよ、ソアン。本当にごめん、他に方法が何もなかったんだ」
「ああ、もう、私にできることを言ってください!! それがなんだって私は叶えてみせます!!」
僕はソアンにクレーネ草を使ったことを誤魔化して伝えていた、でもその副作用がでてきたからにはもうソアンを騙せない、これから僕の体に起こる様々な症状がそれをさせてくれないんだ。どんな症状が出るのかは本で読んで知っていた、クレーネ草をまた口に入れたくなる、その他には不眠や強い不安感そして物凄い寒さに襲われるはずだった。
「ソアン、ごめんよ。どうか僕を許してくれるなら、薬の副作用が収まるまで…………傍にいて」
「許すに決まっているじゃないですか、私を助ける為にリタ様がしてくれたことです!!」
「……ありがとう、それじゃこのまま宿屋に帰ろう。今の僕にはいつもの眠り薬と温かい毛布が必要だ」
「分かりました!! リタ様、どうか何が起こっても、死なないでくださいね!!」
ソアンはそう言うとガタガタと震えている僕をひょいっと背中に背負った、そうしてジーニャスに向かって一礼すると宿屋に向かって全速力で走り出した。僕はソアンの温かい背中が気持ち良くて、必死にその小さい背中にしがみついていた。ソアンに触れている部分だけが温かった、それ以外は氷のように冷たく感じて僕は震えが収まらなかった。
ソアンは神殿から宿屋まで僕を背負って走った、まだ夜は明けていなかったから人通りは少なかった。もし僕たちを見た人は驚いただろう、顔色が真っ青な大人が小さな少女に背負われて、物凄い速さで運ばれていたからだ。宿屋の主人はもう朝の仕込みの為に起きていた、だから僕たちは借りている宿屋の部屋に入ることができた。
宿屋についたらソアンに魔法でお湯を作り出して貰って僕はそれを全身に浴びた、その間は体が温かくて気持ちがよかったのだがすぐにまた寒さは襲ってきた。僕は熱もないのに宿屋の部屋で毛布にくるまって寒いと言い続けていた、ソアンが宿屋の主人と話して更に毛布を持ってきてくれた。でもそれだけじゃ足りなかった、薬の副作用で感覚がおかしくなっていて寒くて体が千切れるかと思った。
不眠も症状として現れるはずだから、いつもの倍の眠り薬を僕は飲み込んだ。このくらいなら死んだりはしない、でもいつもより眠り薬の効果がでなくて、僕はなかなか眠れなかった。それで僕はずっとソアンを見ていた、彼女が無事だと何回も見て確認した。こういった強い不安感も薬の副作用の一つだった、僕はソアンが傍にいてくれることで何度も安心した。
「寒い、寒い、寒い……」
「リタ様、私に他にできることは何かありませんか?」
「……ソアン」
「はい、何でしょうか!! 何でもおっしゃってください!!」
「ごめんね、いつものように君を抱きしめてもいいかい?」
「なんだ、そんなことですか。ちょっと待ってください、私も水浴びをしてきます!!」
そう言ってソアンは僕の傍から離れた、するとまた強い不安感が襲ってきた。僕はソアンを助けることができなくて、世界でたった一人になってここにいるんじゃないかと思った。でもそれは薬の副作用からくる不安感がそう思わせていただけだった、ソアンはすぐに戻ってきて僕の腕の中に潜り込んできた。僕は彼女の温かい体を大切に抱きしめて、その温かさを感じることができて安心した。
それから10日間、僕はソアンに迷惑をかけた。一日中起き上がることができなくて、僕は寒さをずっと感じていた、だから温かいソアンの体を手放せなかった。ソアンは時々不安感から馬鹿な事を言う僕を、温かい言葉で安心させて理論的に正しいことを言ってくれた。おかげで僕は薬の副作用と戦うことができた、またクレーネ草を食べたいと時に思ったが、それは更に危険なことなのだと僕は思いとどまった。
10日後に僕の寒さはどうにか収まった、ソアンを抱きしめて眠る必要もなくなった。でもソアンは僕のことを心配して、眠っている間は僕の腕の中にずっといてくれた。ミーティアの音楽指導もこの10日間はできなかった、僕がつかの間の眠りについている間に、それはソアンからミーティアに伝わったようだった。11日目にようやく僕はベッドから起き上がった、そうしてジーニャスがユーニーをどう処分したのか、それが気になってソアンと一緒に出かけていった。
「リタ様、本当にもう大丈夫ですか?」
「ああ、ありがとう。ソアン、君のおかげで薬の副作用に負けずにすんだ」
「もうクレーネ草を食べちゃダメですよ!! 絶対にダメです!!」
「クレーネ草のまま口にはしないけど、薬に作りかえて持っておくよ」
「お薬にしたら危険じゃないですか、それは飲んでも大丈夫なのですか」
「少なくとも今回のような、激しい副作用は出ないと思う」
起き上がれるようになって分かったことだが、僕はまた魔法が使えなくなっていた。だから僕はクレーネ草を薬として加工しておこうと思った、もうないといいが危険なことが起きた時には必要だったからだ。クレーネ草のおかげで魔法をまた使うことができた、今回は薬に頼ってどうにかできたことだが、いずれは僕自身の力だけで魔法を使えるようになりたかった。そう思いながら僕たちはジーニャスがいる領主の館、街で一番に高い屋敷に辿り着いた。僕らが名前を言えば、すぐに中に案内された。
「おお、リタにソアンよ。特にリタよ、もう体調は良いのか?」
「ジーニャスもお元気そうで何よりです」
「リタ様は病み上がりです、お話は手短にお願いします」
「それでは簡単に言おう、フォシルのダンジョンは危険だから、全てを火で浄化することになった」
「フォシル自身の遺体やそれに禁書、死霊魔法の本を燃やしてしまうのですね」
「それは良い事です、フォシルさんもこれでようやく、世界の理に帰って眠れるのかもしれません」
「それからお前たちに褒賞を渡す、危険な死霊魔法を使うネクロマンサーを倒してくれた礼だ」
「それは助かりますが、本当にいただいていいのでしょうか」
「リタ様、貰えるものはもらっておきましょう!!」
ジーニャスはそこで一度話すのを止めた、そして何か心の中で迷ったすえにこう話しだした。それはネクロマンサーだったユーニーのことだった、そう僕は彼女のことも気になっていたのだ。裁判でどんな判決が出たのか、それをどうユーニーが受け止めるのか、それが気になっていた。だがジーニャスが語ってくれたのは、ユーニーの思いもしない行動だった。
「あのユーニーという女は牢の中で死んだ、自分で自分の腕の血管を嚙みちぎってしまった」
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