4-10女心は複雑過ぎる
「ジェンド、発情しているからといって、すぐに交尾するものじゃないんだよ」
「ええとお互いに発情しているのにか、どうしてなんだ?」
「交尾を行うと子供ができる可能性もある、それにお互いに心の整理ができていない場合もある」
「エルフの繁殖は難しい、他の種族も同じなのか?」
「そうだと思うよ、ドラゴンはとても愛情に正直な種族だね」
「うん、そうだ。好きだと思ったら交尾する、子どもはいくら産まれても可愛い」
ジェンドの価値観は単純でとても分かりやすいものだった、僕たちエルフや人間などの他種族はもっと複雑だ。ソアンはまだ顔が真っ赤だったが、どうにか僕の背中を殴るのは止めてくれた。ジェンドは次にジーニャスとマーニャを見て首を傾げていた、どうみてもマーニャの方がジーニャスにせまっていたが、ジェンドは意外なことを言いだした。
「あの女は発情していない、なのに男に発情を促している。変な奴だ」
「マーニャはジーニャスを好きじゃない?」
「どうみても惚れてるから、それでからかっているようにみえますけど」
「でもあの女からは発情している匂いがしない、もちろんジーニャスからもしない」
「それじゃ、なんでマーニャはジーニャスに声をかけているんだろう」
「女心は複雑ですからね、なんとも言えません」
僕はマーニャという女性を観察した、確かに落ち着いてよくみればジーニャスを見る目が笑っていない、ああいう目はもっと違う場所で見たことがあった。そう親を殺された子供がするような目、つまりは怒りがこもっている目だった。マーニャがジーニャスに対して怒っている、ミーティアの結婚式の日そんなにジーニャスはマーニャを怒らせてしまった。
「ソアンの言う通り、マーニャの気持ちは分からないな」
僕は女性の心理を上手く理解できない、男性だからというのもあるが苦手なことだった。だから未だにソアンの気持ちを確かめられていない、可愛い養い子を見守るという立場から動けないでいるのだ。この関係を壊したくない、その一方でソアンから男性として愛してもらいたい、僕も感情の整理が上手くできないでいるのだ。
「ええい、もう今日は帰る。お前の相手はしていられない」
「ふん、なによ。ちょっとあたしのことを真剣に、しっかりと思い出してくれればすむことよ」
「お前とはちょっとだけ、酒を一緒に飲んだ仲だ!!」
「それ以外の事もしなかった? 本当に全部を忘れちゃってない?」
「俺は酔っても記憶をなくさないほうだ、お前とは酒しか飲んだことがない!!」
「ちぇ~、つまんない。こっちは一生懸命なのに、思っていたとおりに冷たい人ね」
ジーニャスは今日もマーニャを振り切って帰ることにした、犯人であるバントルが見つからないなら街にいる意味はなかった。本当に彼はどこに隠れているのだろうか、誰かが匿っているとしか思えないかった。そうでなければこの街に来たばかりの人間には隠れる場所が無い、だから誰かがバントルを隠し守っているのだ。
でもそんなことをして匿った者になんの得があるだろう、バントルからお金でも貰っているのだろうか、それにしてもこの街の領主を敵にまわすなんて損な話だ。ジーニャスと警備隊は秘密裡にバントルを探し続けていたが成果はなかった、そしてフェイクドラゴンも相変わらず街道に現れ続けていた。このゼーエンの街を憎んでいる誰かがいるのだ、それは本当にバントルだけか分からなかった。
「そこのエルフのお兄さん、ソアンちゃん以外とも偶には一緒に飲まない?」
「マーニャさん、僕はお酒は飲まない主義でして」
「ソアンちゃんも、お姉さんと一緒に飲まない?」
「私も普段はお酒は飲まないんです、マーニャさん」
「つまんなーい、じゃあ。そっちのお兄さんはどう?」
「へ? 俺か!? なんだ酒を飲めばいいのか?」
ジーニャスがいなくなってしまったら、マーニャは酒を片手に昼間から僕たちに絡んできた。僕とソアンは断ったがジェンドが捕まってしまった、そうしてかなり強い酒をすすめられていた。ジェンドが酔っぱらったら大変なことになる、ドラゴンの姿にでもなられたら一大事だった。でもジェンドは素直にぐいっと酒を一杯飲んでしまった、そうして平然とグラスをマーニャに返した。
「すごーい、お酒に強いのね」
「俺は酒に酔ったことがない、このくらいの毒は分解される」
「毒って何よ、失礼ね。何も入れてないわよ、ただのお酒よ」
「エリーが酒はアルコールという、弱い毒だと言っていた」
「他の女の話をしないでよ、もういいわ。一人で飲むから!!」
「……女はやっぱり難しくて怖い」
女性はやっぱり不可解な存在だった、とりわけこのマーニャはわかりにくかった。しばらくマーニャは強い酒を飲み続けて、酒瓶を空にすると自分の家へとふらっと帰っていった。ジーニャスを好きでもないのに口説く女性、いやジーニャスを憎みながら口説く女性、彼女の考えていることとはなんなのだ。僕には到底理解できなかった、ジェンドもまた首を傾げていた。
「さぁ、それじゃ。フェイクドラゴンでも倒しに行きますか」
「そうだね、少しでも街道の危険を減らしたい」
「あのトカゲをドラゴンって言われると、なんか嫌な気分だ」
僕たちは犯人であるバンドルが見つかるまで、フェイクドラゴン退治をしていた。他の冒険者もフェイクドラゴンでも金になるので、積極的に退治しに行っていた。ただそれなりに強いので弱いパーティでは返り討ちにあった、僕たちは僕とジェンドは上級魔法が使えるし、ソアンは空さえ飛ばれなければフェイクドラゴンと良い勝負をできた。
何度もフェイクドラゴンを退治して、そうとうなお金を稼ぐことが僕たちはできた。ジェンドはそのほとんどを孤児院に寄付していた、彼にとってはその日の食事や宿屋の分だけお金があれば、他には何も困ることはなかった。僕たちはジェンドほど寄付に熱心でなかったから、アクセサリ屋にまた世話になった。珍しい宝石と金でできた腕輪がまた増えた、ある意味で重りをつけているようなものだった。
随分とお金持ちになった僕とソアンはジェンドを見習って、アクセサリに出来ない分の報酬は孤児院へ寄付するようにした。そうしないと金のアクセサリの重さで身動きできなくなりそうだった、フェイクドラゴンを退治してもらえるのは金貨20枚だが、人間一人が一年は遊んで暮らせるくらいの額なのだ。そうしていたら、僕はジェンドが時々宙を見ているのに気づいた。そして、更に他のことにも気づいた。
「ん? おかしいな、誰かに見られている気がする」
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