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神々の住まう森

◇◇◇


 ここは、神々の住まう森。精霊や聖獣だけではなく、多くの獣たちも生息している。人の立ち入ることを許さぬ、神に守られた神聖な場所。



『シルヴィア、こっち!』


 シルヴィアとマリーは、精霊たちに招かれ、その聖なる森を、奥へ奥へと、進んでいる。精霊たちは、シルヴィアのお願いを快諾し、マリーにも姿を現している。


「シルヴィア様、戻りましょう。この森は禁域でございます」

「マリー、(わたくし)どもだけでは、帰れないと思うわ」

「……、左様でございますね」


 道標を残そうと試みたが、無駄だった。振り向いた瞬間、まったく違う場所にいる。既に、方向も判らぬ森の奥。二人だけで帰る術はない。


『あっちには、甘い蜜の花畑があるよ!』

『そこには、春になると甘酸っぱい苺が沢山実るの!』

「いちご?(わたくし)も食べてみとうございますわ!」


 シルヴィアを招待した精霊たちは、興奮気味に飛び回っている。シルヴィアはマリーを少しでも安心させようと、手をしっかりと繋ぎ直した。


 精霊たちに先導され、しばらく進むと、清らかな水が滾滾(こんこん)と湧き出る泉に辿り着いた。


『シルヴィア、飲んで!』

『『『飲んで!』』』


 シルヴィアは、そっと泉に近付き、清らかな水を(むす)ぶ。水を口に含もうとした瞬間、シルヴィア達の前に、美しく大きなの白銀の狼が、姿を現した。


 マリーは、反射的に、シルヴィアを背に隠し、防御の姿勢をとった。


「シルヴィア様、お下がりください」

「マリー、大丈夫よ」


 シルヴィアを守ろうと、なおも戦闘態勢を緩めないマリーに、シルヴィアは落ち着いた口調で伝えた。


「あの御方は聖獣よ。決して、私たちを傷付けたりなど、なさらないわ」


 シルヴィアは、聖獣に(かしず)いた。淑女の礼(カテーシー)の姿勢を崩さず、聖獣からの声かけをじっと待つ。


 マリーはゆっくりと警戒を解き、シルヴィアの後ろへ控えた。


『我が魂の片割れよ』


(魂の片割れとは、まさに言い得て妙ですわ)


 シルヴィアの中に湧き上がった感情を的確に表現した言葉に納得した。


 一方、聖獣から発せられ言葉に衝撃を受けたマリーは、思考停止して固まってしまった。


『シルヴィアよ、近う寄れ』

「はい」


 シルヴィアは必死の思いで動揺を隠しながら、ゆっくりと姿勢を正し、聖獣の元へと歩みを進めた。


 マリーは控えた姿勢のまま、シルヴィアを目で追う。威風堂々としたシルヴィアの後ろ姿は、神々しいほどに美しい。


『シルヴィア。我を、名付けよ』

アドルファス(Adolphus)…ルフという名は、いかがにございましょう」

『気高く高貴な狼か。気に入った』


(私は、この御方と出逢うために、此処へ導かれたのだわ)


 シルヴィアも直感的に感じていた。魂が求めている。出逢ったら離れられない。離れて生きることは出来ない。


『我は真神(まかみ)。ようやく魂の片割れと出逢えた。我は、常にシルヴィアと共にあることを望む』

「光栄至極に存じますわ」


 シルヴィアは優雅に淑女の礼を執った。


◇◇◇

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