惹かれ合う魂
◇◇◇
(……転生の原理が、わかるかもしれませんの?)
『すまぬ。我に、転生の原理は分からぬ。こうして話しておるうちに、【空間】の力かと思い至ったのだ』
(左様でございましたわね。ですが、嬉しゅうございますわ。皆を守る力を得ることができましたもの)
嬉しげなシルヴィアの言葉を聞き、ルフは不安に思い、諭すように静かにシルヴィアに言い聞かせた。
『シルヴィア、生あるものには必ず死がある。決して、理を曲げてはならぬ。精霊は等価交換しかせぬ。与える魔力に見合う魔法しか使えぬ。貴女の精神は大人であろうと、身体はまだ幼子。今回のように枯渇させては命が危うい。頼む。我にこの世を滅ぼさせるな』
(……私の健康がこの世の安寧に影響しますの?……承知いたしましたわ)
シルヴィアのことしか眼中にないルフの不穏な発言に困惑しながら、改めて魔法と神力の恐ろしさを心に刻んだ。
『もし、貴女に【空間】の力があるとすれば、異空間収納ではなく、我と同じ、瞬間移動の能力ではなかろうか』
(まあ!では早速、試してみとうございますわ!泉の場所へ参りましょう!)
シルヴィアは強く念じてみた。
(……神々の住まう森の泉の場所へ行きとうございますわ!……泉!……)
だが、何も起こらなかった。「はぁ」と深い溜息を吐き、項垂れるシルヴィアを愛おしげに撫でながら、ルフは堪えきれずとうとう笑い出した。
『はっはっはっ!我は安堵したぞ。貴女が我の前から姿を消すことは無いな』
(……遠すぎるのかしら?場所ではなくて、具体的に……)
シルヴィアは、寝台を下りドレッサールームへ移動した。そして、目を閉じ、ルフの元へ戻ることを強く願った。
『シルヴィア』
ルフの声と温もりと匂いと鼓動がシルヴィアを包む。ゆっくりと瞼を開けると、シルヴィアはルフの腕の中にいた。実験が成功したことに興奮するより先に、「ああ、やはり」と納得した。
(私の魂は貴方様だけを求めておりますわ。死をも、時空をも越え、貴方様を求めた魂ですもの。私は貴方様から離れません。ルフ、私を見つけて下さり、ありがとう存じますわ)
『シルヴィア、我が魂の片割れ。死すらも我らを分かつ事は出来ぬ。シルヴィアに永遠の愛を誓う』
「ルフに永遠の愛を誓います」
シルヴィアとルフは、巡り逢えたことを改めて喜び合った。
◇
いつまでもこうしていたいのは山々だが、朝日が昇っている。鍛錬を続けてきたシルヴィアの身体がうずきだした。
(ルフ……、私、やはり、落ち着きませんの。行って参りますわ)
『我も参る』
「はい!」
シルヴィアは飛び起き、準備を済ませると【隠密】で家人から認識されない状態にした。そして、いつものように、窓から庭へ軽やかに飛び降りた。昨日より身体が軽く感じる。そのまま走り出すと、自分が風になったような感覚に陥った。
(空を飛べそうな気がするのは、さすがに気のせいかしら)
シルヴィアは隼の様に空を舞う自分の姿を想像した。トン、と大地を蹴り、跳躍する。すると、ふわりと身体が浮いた。
(嘘!私もルフのように飛べますの!?)
驚きで身体が強張った途端、大地に足が付いた。
(……気のせいかしら?)
考え込むシルヴィアに、ルフは寄り添い『シルヴィア、力を抜いて楽しめ。さあ、空中散歩へ参ろう』と誘った。
(ええ!お供致しますわ)
今度は、大地を蹴ることなく、シルヴィアの身体はふわりと舞い上がった。
(ルフ、ありがとう存じます。コツが掴めましたわ)
シルヴィアはルフとの空中散歩を四半刻(三十分)程楽しんだ。
◇
『シルヴィア、疲れておるな』
(空を飛ぶのは、走るより体力を消耗するようですわ)
『慣れれば、歩くよりも楽だ。泉で神力を満たすか?』
(私は……、出来ますれば、また、ルフの神力を分けて頂きとうございますわ)
シルヴィアは目覚めた時に聞いた『…我の神力を直接注ぎ込んだ…』と言うルフの言葉がどういう行為なのか知りたかった。
『我の神力を欲すか』
(はい。お願い致しますわ)
『……先ずは、我の神力を満たそう』
そう告げるとルフはシルヴィアを抱きしめ、いつものように泉の場所へと瞬間移動した。
神秘的なこの泉の場所はシルヴィアのお気に入りだ。ルフは泉の水を飲み、シルヴィアの魔力だけでは賄えない神力を補う。いつもと違うのは、ルフが人に変化していることだ。
シルヴィアはルフの腕に腰掛けるように抱き上げられた。
『シルヴィア。貴女の本能が欲するままに、我の神力を求めよ』
吸い込まれそうな虹色の瞳をじっと見つめ、シルビアは本能のままにルフの神力を求めた。
◇◇◇




