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早春の知らせ

◇◇◇


 大地の雪は解け、緑が芽吹き始めた。落葉樹の枝先の新芽はまだ堅い。春告鳥がさえずりの稽古を始めた。よく響く高い声の歌姫ミソサザイは稽古をつけるかのように、長く歌い続けている。


 ナイトレイ侯爵領は長い冬から目覚めようとしている。四月はまだ寒いが、着実に春は近付いている。


◇◇


グランドール国民は六歳になると各領地の神殿で洗礼を受ける。

無事に成長出来たことを神に感謝し、その日を境に、神から預かった宝から、グランドール大国の民となる。

国としては、戸籍謄本代わりに国民を管理し、国益であると同時に驚異ともなりうる魔力持ちを取り込む手段なのだ。

平民でも魔力を持っていれば、国の援助で教育を受け、爵位を授かり準貴族になれるとあって、洗礼を拒む者はいない。

逆に貴族の子でも、魔力を持たない者もいる。

故に、原則、王位も爵位も世襲制ではない。


◇◇


「魔力鑑定?それは、どの様にして、行われますの?」

「シルヴィア様。詳しくは存じませんが、(わたくし)は洗礼の際、大きな水晶のような物に両手で触れると魔力を吸い取られました。そこで気を失い、気が付くと自宅におりました」

「まあ!皆、そうなのかしら?」

「兄も同様でしたので、恐らく、魔力を持つ者は皆かと」

「面白いわ。お兄様の洗礼の儀式は、来週でしたわね。(わたくし)もご一緒できないかしら」

「シルヴィア様。洗礼の場への入室を許されるのは、本人と保護者、神官のみですわ」

「お父様にお伺いしてみるわ」

「今からで、ございますか?」

「ええ!」


 シルヴィアの好奇心と行動力には、もう諦めの境地に至っているマリーだ。シルヴィアが病から回復して、約二ヵ月が経った。今では、四歳児ではなく、同年代の淑女として、会話を楽しみ、多くを学んでいる。シルヴィアの博識に舌を巻き、身体能力に惚れ惚れする。

 マリーは益々シルヴィアの虜になった。侍女として側に置いて頂く為に、情報収集と魔力の鍛錬を積んでいる。

 マリーは水氷属性の魔力持ちだ。


◇◇


多くの魔力持ちは一つの魔力属性を持っている。

稀に、複数の魔力属性を持つ者や、精霊の加護【祝福(ギフト)】を授かる者もいる。


◇◇


 シルヴィアの場合、精霊の【祝福】だけではなく、ルフの【神力】の影響下にあるので、特殊なのだが、このお話は追々。


◇◇◇


 時は遡り、ルフと共にシルヴィアが帰還した翌日


 執務室に、側近が一堂に会した。


 シルヴィアの父であり、領主のウィリアム(William)ナイトレイ(Knightley)侯爵

 先代から仕える優秀な家令スチュワードヨハン(Johan)テオ(Theo)男爵

 法務担当ゼン(Zen)サンチェス(Sanchez)伯爵

 財務担当エドウィン(Edwin)コックス(Cox)伯爵

 騎士団長アッシャー(Asher)ケリー(Kelly)伯爵

 ウィリアム専属執事(バトラー)兼護衛フィル(Phil)グレイ(Gray)男爵


 まだ興奮冷めやらぬ様子の六人は、今後の対策を検討している。


「領内外へ、神の加護を伏せることは出来るか」

「口外する家人はおりませんが、いずれ、国王の耳に届くことは否めません」

「国王は相変わらずウィルに執着している。王室の間者は居ろう」

「フローラ様は、早急に、王室へシルヴィア様婚約の一報を入れる事が肝要とお考えです」

「真実を織り交ぜ、建前を流布するか」

「いざとなれば、シルヴィア嬢のことはルフ様がお守り下さるさ」

「はぁああ」

「そう落ち込むなウィル」

「神の舅殿」

「誠に有り難いことではないか」

「私の可愛いヴィーが!もう嫁に……」

「ウィル、落ち着け。まだ先の話だ。十六までは嫁にやらんと宣言しろ」

「後、たった十二年しかないではないか」

「「「「「……」」」」」


 こうなっては、仕方が無い。フローラ以外にウィリアムの機嫌をとれる者はいない。

 放っておこう。

 言外に互いの意を読み取り、各々が動き始めた。


 翌日、領内にはシルヴィア婚約の朗報が行き届いた。王都への道程は、早馬でも一週間以上かかる。王族が察知する前に、届く事を祈るばかりだ。


◇◇◇

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