【忍び寄る影たち】
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ハングル先生と初めて会った日の深夜二時頃。
カイルは静かに天井裏に潜んでいた。
今ウィルラドは静かに寝ているため、ウィルラドの睡眠を妨げないため部屋ではなく天井裏で待機している。
そんな中ウィルラドの部屋に人影が忍び寄っていた。
――――――――――
ヴァンラーム辺境伯が住むこの城は厳重に守られており、ヴァンラーム辺境伯ことウィンバルはこの国最高の騎士である。
そのため、この城は刺客などが容易く侵入できる場所ではない。
だが、稀にこのウィルラドの部屋にのみ刺客が侵入してくることがある。
特段ウィルラドの部屋だけが離れにあるわけでもないのに。
ウィルラド様がお生まれになってから、既に三回の賊の侵入があった。
この国最高の騎士ヴァンラーム辺境伯様が住まう、この城に刺客が侵入する事など自殺行為に等しいはず。なのに、、、、。
考えられるのはカイルがウィルラド・ヴァンラームの従者にふさわしいかを試しているか、実際にとんでもない能力を持った刺客が三回侵入してきているかだ。
実際は前者しか考えられない。
それは、カイルが始末できる程度の賊たちだったからだ。
刺客というにはあまりにも杜撰な侵入者たちだった。
この国には冒険者ギルドなどもあり、腕の立つ者もそこそこいる。
金さえ積めばいくらでも汚い事に手を染める力のある連中も確かにいる。
だが、ヴァンラームの騎士たちは国外に面している領を守る騎士たちである。そこそこ腕が立つ程度では大人と赤子程の力量差が生まれる。
そのような砦に侵入してきた刺客達をカイルが一人で速やかに始末出来るはずがないのだ。
そのため、前者しか理由が付かない。
なぜ測る必要があるのだろうか、、、。
カイルがウィルラドの従者に選ばれたのには二つの理由からだった。
一つは、ウィルラドとの歳の差が一番近かったからだ。
これはウィルラドの父であるウィンバルが孤児院の近くからカイルを拾ってきた時に既に決まっていた。
国で最重要である砦、ヴァンラーム領は城内の人員を滅多なことでは変えない。これは、見知らぬ人物を特定しやすくするただ。
その為、カイルを雇用する時点で産まれる前のウィルラドと歳の差が近い者がカイルである可能性が高く、それを見越して従者教育を施していた。
上位貴族では成人(20才)前に籍を入れることが多く両親が若くして子供が生まれることが多い。
これは魔法の素質の遺伝を。、、、血族を絶やさないためだ。
ヴァンラームでも同様で、ウィルラドの母エルラーダは姉エラルダを22才で生んでいた。また、ウィルラドを26才で生んでいる。
体が強くなかった母エルラーダだが、エラルダを生んだ後すぐにでも第二子を産みたいと言っていた。
でもエルラーダを気遣ったウィンバルがそれを許さなかったという。
二つ目はカイルの戦闘能力と魔法力がヴァンラームの騎士団員と遜色がなかったからだ。
実際、カイルは騎士団長から直々に騎士団への勧誘を受けている。
10歳にして既に騎士団員と遜色ない戦闘力は末恐ろしい才能だろう。
でも、カイルは騎士団の誘いを今も断り続けている。
カイルが今も生きていられるのはウィラルドの従者として拾ってもらえたからだ。
その事をすでによく理解しているカイルとしては強くなることも、ウィルラドの従者として生きていくことも、どちらも息をするように当たり前の事だった。
―――――――――
天井の穴からウィルラド様を眺めていたら、一時間程が経っていた。
ウィルラド様は今も寝息を立て健やかに夢を見られている。この寝顔を守るのも僕の務めだ。
パキッ...
ウィルラド様の部屋の外、、、屋外から小枝の折れる音がした。
距離は数百メートルは離れているところから音がした。
この時間にこの周りを警備している騎士はウィンバル様、、、旦那様と奥様のお部屋とウィラルド様の姉上エラルダ様のお部屋の周りを警護している騎士と建物付近を警護している騎士で、五名ほどだ。数百メートルも離れてはいない。
警護している騎士が折ったわけじゃない。となると、四度目の賊の侵入か。
ウィルラドの部屋は建物の角に有り、階は三階だ。
外から侵入するには難しく、カイルがウィルラドを抱えて飛び降りても怪我をしない高さ。
この階には旦那様と奥様、エラルダ様のお部屋もある。
どなたもウィルラド様のお部屋とは離れている。
建物内に侵入してこの階にたどり着く事は無いと断言できる。
でも、窓からの侵入であれば入ってこれるかもしれない。というか僕の考察が合っていれば招き入れたといっても過言じゃない。
最初に侵入してくるのはウィルラド様のお部屋の可能性が高い。足音の向かっている方向的にもこの部屋の真下へ向かっているみたいだ。
カイルは枝の折れる音を聞いた時から魔法を使って足音を追っていた。
数秒すると足音がピタリと止まる。
壁面を登る準備を始めたか。 ...準備を始めよう。
カイルは徐にウィルラドの部屋に静かに降り立ち、物音を建てずに窓を人ひとり通れる分だけ開けた。
体を窓から乗り出したカイルと登るために上を見上げた侵入者の目線が交わる。
侵入者は二人か。
足音で確認はできていたけど、しっかりと目視でも確認しないと。
目線の合った侵入者二人が一瞬だけ体を硬直させた。
今回も無事に終わってくれそうだな。
もう既に窓から飛び降りているカイルは、壁に張り付いた二人の侵入者の頸椎を懐からすでに出していたナイフで素早く切りつけ、地面に着地した。
頸椎を切られた侵入者二体も遅れて地面に落ちてくる。
音がしないように二つの死体を受け止めたカイルは静かに地面に置き、懐に仕舞っていたロープで念のため縛り上げる。
今回の侵入者もこの城に侵入してくるにはあまりにも拙いな。
きっともう既に騎士はこちらに向かっているだろうし。
やっぱり僕で従者が勤まるかを確認しているんだろうな。侵入者を確認してからはずっと誰かが魔法を使用している気配がするし。旦那様も既にお気づきなんだろう。
二人の騎士たちが静かにカイルに近づいてくる。
視線だけ合わせ言葉を交わさずに死体を担いだ騎士たちは、その場をすぐに離れていった。
カイルも急いでウィラルドの部屋へと向かう。
向かう間もウィラルドの部屋への警戒は怠っていなかった。
最短距離の壁面を急いで駆け上り、開けてあった窓から部屋へ入る。
入室した後カイルは一瞬だけ体を硬直させた。
警戒は怠っていなかったのに。
部屋の中には大きな人影が二つ、賊の侵入を許していた。
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