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【若い従者の驚きと誓い】

ウィルラドの従者のカイル視点の話になります。


読まなくても支障はないですが、カイルの人となりが早い段階で分かるので是非読んでみてください!!

ぜひ! ぜひ!


5/2にサブタイトル変更【カイルの驚きと誓い】⇒【若い従者の驚きと誓い】


それではーー。  ゴー―――!


≪カイル視点≫



 僕が十歳になってしばらくして、春の温かい日差しの日にウィルラド様がご誕生された。


 孤児で親からの愛情など全く知らなかったし、人への感情が乏しかった僕としては、拾って仕事を与えてくれたヴァンラーム辺境伯様への感謝はあるけど、感動や嬉しさみたいな感情(もの)を共有はできなかった。


 屋敷の中が浮足立っている時、僕は僕の正式な仕事が始まったとだけ思っていた。



 ある日、ヴァンラーム辺境伯様よりお声が掛かりウィルラド様のお部屋(になる予定)へ向かった。


 ウィルラド様がお生まれになった日の翌日だった。


 僕としては今後ウィルラド様の従者となる為の準備で忙しかったため時間を無駄にしたくなかったけど、主であるヴァンラーム辺境伯様のお声がけだから快く応じた、、、と思う。


 ウィルラド様のお部屋はあまり華美ではないが気品のある深い赤を基調とした装飾であった。


 天井には一人の天使が二人の男女を見下ろしている絵が描かれている。よく目を凝らすと、見下ろしている天使の瞳はくりぬかれており、穴が開いていた。


 今後警備を行うであろう部屋の配置や装飾を観察しているとヴァンラーム辺境伯様からお声がかかる。



「カイル、これからこの部屋はウィルラドの部屋となる。お前にはこの部屋でウィルラドを常に護衛し、見守ってもらう。対処できない事や困ったことがあれば、場を離れるのではなく魔法などで近くの者を呼びなさい。ウィルラドの側から離れる時は離れる他無いときのみとする。」


「承りました。私の全てを()して拝命いたします。」


「うむ。 エルラーダ入りなさい。」


「失礼いたします。」



 すぐさま奥様に入室いただくため扉を開けた。


 奥様の胸元には、抱きかかえられたウィルラド様がいらっしゃる。


 気持ちよさそうに寝ているウィルラド様を確認し部屋の隅へ移動する。



「エルラーダ、ウィルを中央のベットに寝かせなさい。今後この部屋がウィルの部屋となる。」


「分かりました。ウィル、この部屋があなたの部屋よ。大丈夫、怖い事なんてないわ。」



 優しく話しかけベットに寝かす奥様は、きっと聖母のように見える美しい光景だったのだろう。周りの使用人たちが見入っていた。



 ヴァンラーム辺境伯様と奥様が歓談していたが、しばらくして奥様が僕の名前を呼んだ。



「もっと近くでウィルを見てみて。手なんか柔らかくて気持ちいのよ。触れてみて。」


「、、、いえ、私なんかが触れていいお方ではございませんので。」



 伸ばしそうになった手を戻す。


 そうだ、お優しい方たちだから勘違いをしそうになる。

 黒髪で孤児の僕が触れていいわけがない。ウィルラド様だって僕なんかに触れられたと知ったら嫌悪するだろう。自分が穢れていることを忘れてはダメだ。


 そのとき、わずかしか伸ばしていなかった手を引かれる。



「 っ! 奥様いけません! 手をお離しください!!」



 驚きのあまり手を振り払おうとしてしまうが、主であるヴァンラーム辺境伯様の奥様のお手を振り払うわけにはいかない。


 必死の訴えも虚しくウィルラド様の手に触れてしまった。



「、、、!! やわら、、かい、。」


「そうでしょう! この世のものとは思えないほど柔らかいのよ。ラルのときもとっても気持ちよかったのよ!」


「ラルを男に触れさせるわけにはいかないがな。私がその者を殺したくなる。」



 ヴァンラーム辺境伯様の今の顔はエラルダ様には見せられないだろう。それほど険しい表情をしていたし、その顔を見た使用人たちも顔を引きつらせていた。



「カイル、ウィルラドが握り返してくれているわよ。答えてあげないと!」


「、、、っ!、、ふぐっ、えぐっ、、、うぅっ。」


「「カイル!?」」



 温かい、優しくて柔らかくて、穢れを知らない幼くて小さな手。


 穢れていると捨てられた僕の手を必死に握り返してくれている。


 幼く無邪気なウィルラドはきっと知らないだろう。生まれて数えるほどしか泣いたことのないカイルが、初めてこの屋敷で涙を流した意味を。


「うぐっ、、、。」


 目から流れてくる雫を、服の袖で拭う。


 背筋を正し改めてウィルラド様を見つめ片膝を床に着ける。



「誓わせていただきます。 このカイル、全てを賭してウィルラド様のお力となります。」


 誓いを立てたカイルを、ウィルラドのクリっとした紫色の二つの相貌が見つめていた。



――――――――



 数か月前を思い出していたカイルは、改めて自分の主となったウィルラドを注視していた。


 庭での授業となり、敷物の上にチョコンと座っているウィルラドが倒れないように見張る為だ。



「えいあー。」



 ウィルラドがケイラを呼ぶ。


 意図して発しているのか、最近では意味のある単語を発していると分かるほどんの言葉を話すようになってきた。

 部屋でお一人で言葉を発している時は、何かを考えこんでいる事が分かる内容だったし、もう既に僕たちと同じかそれ以上の思考能力があるのだろう。


 本当にいつでも驚かしてくださるお方ですね。




 本日、初めてウィルラド様に認知された時も、本当に驚いた。


 天井の上から警護していたため気づかれる事は無いと思っていたのに、生まれて間もない生後六か月程で魔法を使うなんて。しかも気配の察知は人間の持っているどの属性でも使うことはできない。

 きっとこの先ウィルラド様は苦難の多い人生を歩まれるだろう。少しでも僕がこの方の助けになろう。


 ウィルラド様が必ず幸せになる未来をつくります。


 改めて心に誓いを立てたカイルを他所(よそ)に、ウィルラド様は元気に歩き出していた。


お読みいただき、ありがとうございました☆彡


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