【歩けるようになった!…少し、調子乗ったかも。】
ちょっと長くなってしまいましたが、お付き合いいただけると嬉しいです。
誤字脱字など、見つけたらご報告いただければ幸いです。
前世の記憶を思い出して〈物心ついた〉時から三か月ほどが過ぎていた。
今は生後六か月と姉上が遊びに来た時に話して聞かせてくれた。
今はハロルド先生との授業を行っている。
ハロルド先生との授業の日々も過ぎていき、今ではこの国の成り立ちは完璧に覚えてしまった。ハロルド先生は案の定子供が好きだったみたいで、俺に話し聞かせている時は目をキラキラさせている。しかも気になったことや疑問に思ったところは、何故か分からないけど一度止まって必ず補足を付けてくれる。なぜ分かるんだろうか。有能すぎるし、頭の中全部見られているみたいで少し焦る。 ほら、また微笑みかけてくれる。タイミング良すぎ。 初日の仏頂面は何だったのだろうか。
そろそろ授業を始めて二時間が経つな。
「ウィルラド様、そろそろですね。本日の授業はこれまでにしましょう。」
「あーーう!」
「いいお返事です。それでは一時間後にまた伺います。」
俺の返事に満足したのかハロルド先生が席を立つ。
最近では、授業を始めて二時間が経つ前にハロルド先生が部屋を出ていくようになった。
俺自身は、体がいうことを少しだけ聞くようになってきたため泣く事は随分減っている。と言ってもこの三か月で三回ほど夜泣きをしてしまっている。最近では四週間前の夜だ。寝返りがうまく打てなくて苛立ったら泣いてしまった。まっ、四週間も経てば寝返りもそれ以外も完璧だけどね!
出ていくハロルド先生を見送ったら部屋が静かになる。
普段ならハロルド先生と入れ替わりでケイラが部屋に入ってくるんだけど、今日は遅いな。
ケイラが来るまで暇だし、動けないので天井を凝視する。
いつ見ても天使の絵が綺麗だな。何でここだけ絵が描いてあるんだろう他の部屋の天井にはないのに、、、あれ?
天使の目の部分に穴空いてない? 今まで天使の瞳が黒いんだと思ってたけど、穴が開いてるから黒いんだ。何で穴なんて、、、うぇ!?
天井の穴を凝視していると、天井の裏側に人がいる事が少しだけ透けて見えた。
余りに驚いてしまったため表情と体の動きに現れてしまう。
俺の動きに驚いたのか、天井で「ガタッ、、」と音が鳴った。
しばらくすると扉からノック音がした。
――――――――――――
「失礼します、ウィル坊ちゃん。先ほどは失礼しました。話は聞きしましたので、旦那様、、、ウィンバル辺境伯様からのご指示で、説明と紹介の為に伺いました。」
部屋を開け入ってきたのは執事長のへイロだった。
「先ほど天井裏に潜んでいたのはこの者です。」
ヘイロが少し左にずれると背後から、烏色の髪のまだ10才程の少年が現れる。
「この者は、ウィル坊ちゃんの従者 兼 護衛となる予定のカイルという者です。ウィル坊ちゃんが生まれた時より、側で周りを見張らせていました。」
従者 兼 護衛となる予定のカイルが一礼する。
カイルが天井にいた人物だったことは分かったけど、潜んでいたのがばれたと思ってヘイロに報告しに行ったって事だよね。何で赤子に気づかれたと思ったわけ? 確かにさっきびっくりしてめちゃくちゃ表情に出たとは思うけど、さすがにね、、、おかしくない!?
「カイルは特別で、魔力の感知に長けております。 、、、先ほど「ウィルラド様は全てお気づきになりました。」との報告を受けましたので、旦那様にもお伝えしております。」
「はい、そのように報告させていただきました。また、ウィルラド様の行動は日々、旦那様にご報告させていただいております。」
頭の中見られてる?ってぐらいの適格な回答、こわっ!
というかまじで? 俺の行動が見られてたとか全然気づかなかった。今日だって穴を見つけたから凝視してたからなぜか見えただけだし。って、あの透けたように見えたのが魔法なのか? 初めての魔法が透視って、変態ぽくない? なんか嫌だなぁ。
「今後は、カイルが従者となりますので、常に側で仕えることとなります。今後はいろいろと大変でお辛い事が増えますでしょう。何なりとこのカイルをお使いください。」
改めてカイルが、俺に向かって恭しく一礼した。
カイルの紹介は、今までのヘイロの雰囲気とは違いとても厳しいものに感じた。笑顔ではあるのだけど、、、。
「ウィル坊ちゃま、失礼いたします。お食事とお召し物を変えに来ましたよ。遅くなってしまい、大変申し訳ございませんでした。、、、?」
「それでは失礼いたします。ケイラ、ウィル坊ちゃんに粗相のないように」
「失礼します。」
「、、、!! 承りました。」
部屋にケイラが入ってくると、ヘイロとカイルが部屋を出て行ってしまう。
ウィルラドは急激な雰囲気の変化と処理するには多い情報で、重要なことは何も教えてもらっていない事に気づけなかった。
一体何があったの?全然わからないんだけど。粛々と裏で何かが進んでいる気がするけど、まったくわからないよ!
そして、この日からケイラは俺のことを「ウィル坊ちゃま」ではなく、「ウィルラド様」と呼ぶようになった。
――――――――――
ご飯を食べ終わった俺のもとに、ハロルド先生が戻ってきた。
太陽は一番高い位置にあり部屋の中を明るく照らしている。
「ウィルラド様、今日はお外に参りましょう。」
「いいですわね。ヴァンラーム辺境伯の邸には素晴らしい庭と東屋がございます。本日はそちらで日向ぼっこでもしながらお勉強いたしましょう。東屋の準備を伝えて参ります。」
ハロルド先生からの提案を嬉々として肯定したのはケイラだ。
日差しは高いけど、温かくて気持ちいからいいかもしれない。俺の意識がしかっりしてからは初めての庭だし、結構楽しみだな。最近は体も思うように動くようになってきたし、そろそろ、、、フフっ。
不敵な笑みを浮かべていると、すぐに戻ってきたケイラに抱きかかえられる。
最近では慣れてきたケイラの抱っこだが、気を抜くと動悸がするし、それに罪悪感を感じるからなんかいたたまれなくなる。
しばらく抱えられて歩くと庭に着いた。
手入れが行き届いている庭はとにかく圧巻だった。建物から庭に出るには吹抜の廊下を通ることになるから、視界には入っていたし、その時ももうすでに凄かったけど、正面から見た庭はまったく違う。
「ウィルラド様、どうでございましょう。この庭はヴァンラーム辺境伯様が誇るお庭にございます。奥様であるエルラーダ様が自ら植える植物をお選びになっております。奥様の聖なるお力が自然と植物にいきわたり、素晴らしく咲き誇るのです。」
「うおーーーい。ひえーい!」
すごく綺麗だな。お母様はお庭のセンスも素晴らしいのか。これはお父様が誇るのがよくわかるな。
お父様の瞳の色である紫を基調に、アクセントとしてお母様の瞳の色である桃色が添えられている。黄色や青、白の植物が至る所に控えめに添えてあり、緑との調和も取れている。
前世で芸術とかは「綺麗だなー」とか「凄いなー」としか思えなかった俺でも、この庭にはため息が出た。
「お気に召していただけたようで良かったです、お誘いした甲斐がございました。それではケイラ様、東屋へ向かいましょう。」
うん、うん? さっき聖なる力って言ってた? お母様は聖なる力を使えるのか。魔法は遺伝するって神が言ってたから、もしかしたら俺も使えるかも。最初の魔法が透視とかいう変態チックなものだったし、期待しちゃうよ!
しばらく庭を眺めながら進むと、東屋が見えてきた。
地面にはもう既にシートが敷いてあり、テーブルの上にはティーセット〈赤子用〉が準備されていた。
ケイラが俺をシートの上のクッションに優しく座らせる。
最近では食事の時に座って食べるようになり、ことある毎にお座りを披露するようになっていた。
「えいあー。」
近くに座ったケイラに話しかける。
心の中ではケイラと呼んでいるつもりだけど、なかなか難しい。
「どうされました?」
すぐさまこちらを向き体を寄せてきてくれる。
そのままケイラの服を掴んで体を立たせていく。
「まあ! もう立てるようになられたのですね!!」
驚きと共に声が震えるケイラ、その隣で驚愕の表情を浮かべているハロルド先生。そこから離れて見守ってくれていたカイルも少しだけ表情を動かしていた。
そのまま手を離してゆっくり歩きだすと、思ったよりも体がいう事を聞いてくれる。
五メートル程歩いたところでお尻からポテっと地面に座った。
ふぅー、少ししか歩いてないのにめちゃくちゃ疲れた。でもゆっくりではあるけど歩けたな。
後ろを振り返って彼らを笑顔で見ると、驚愕を通り越して蒼白となり、地面に座ったウィルラドを抱えに来る事すら忘れて動けなくなっていた。
あれ? 歩くのはまだ早かったかな。立ったことを褒められて調子に乗ったかも。
少しだけ反省していると、カイルがいち早く復帰し俺を抱えに来た。
その後は皆で楽しくティータイム、、、とはならずにしばらく俺を褒める時間となった。
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