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【見た目赤ちゃんでも恥ずかしいものは恥ずかしい】


 今まで眠っていたのか、目を開けて初めて見たのは天使が描かれた絵だった。


 うわぁ、名のある画家が描いてそうだな。

 前世でプレゼン用に資料を作成している時、どっかの有名な教会にもこんな絵が描かれていた気がする。


 天使の羽が生えた子供が描かれた絵は、天井に直接描かれている。


 頭の悪い感想を思いながらも天井の絵画に見入っていると、すぐ側から女性の声が聞こえた。



「ウィル坊ちゃま、お召し物を変えましょうね!」



 声のする方を向くとクラシカルなメイド服を着用した三十代ぐらいの女性が立っていた。


 前世で関わりの無かった服装だけど、素材がいい事だけは前世が庶民の俺でもわかる。


 いい素材ならコスプレの可能性は低いけど、正装か普段着か、どちらにしてもこの世界で着用する服装の可能性が高いな。

 天井や部屋を見る限り、俗にいう中世ヨーロッパの宮殿内の部屋みたいだし。まあ、テレビでしか見たことないから詳細とか知らんけど。


 簡単な答えを出したときだ。 下腹部の圧迫が消えおしりがスースーし始めた。



「あらあら、今日もお元気ですね!いっぱい出せて偉いですよ。」



 楽しそうに話しかけてくる女性の顔が近い!

 目と鼻の先だよ、ちょっとドキッとしちゃうから!!


 少しときときめきながらも、圧迫感の無くなった下腹部を恐る恐る見下ろすと、自分が置かれている状況が初めて分かった。


 手足が小さくて、あそこも小さい。すごく小さい。


 彼女の手によって外されたであろう布には茶色い物体も乗っていた。


 ここでようやく自分が赤ちゃんになっていて、目の前の女性は俺のおしめを変えに来たと理解する。


 まあ赤ちゃんなら何見られても恥ずかしく無いし、大丈夫だし、、、


 一生懸命の強がりも、顔の熱を自覚してしまい余計に恥ずかしくなってくる。



「まあまあ、ウィル坊ちゃま。お顔が赤くてお可愛らしいですが、

 熱があるようではないので少々室温が高いのでしょうか。」



 女性は目の前の赤ちゃんが恥ずかしがっているなど(つゆ)ほども思っていないだろう。


 さっきの俺のときめきを返してほしい。赤子じゃときめいても何もないじゃん!!

 むしろときめく方が辛いやつじゃん!


 顔を赤くしたり青くしたりと忙しい俺の頬に彼女の手が触れる。


 優しいくて柔らかい手のひらに少し気が緩みそうになったけど、熱が無いことをしかと確かめた彼女は手を離してしまう。


 もうすでに少し好きになってた気がする。手を離しただけなのにすんごく寂しいんだけど。

 うん、赤ちゃんだから人肌が恋しいって事にしたい。


 今世での初めての女性の温もりに既に絆されそうになった気持ちは、赤子だったからと心に仕舞い込む。


 何か焦ったからか喉が渇いてきたな、赤ちゃんって何飲んでたっけ?

 ミルク? 生後何か月なんだろう。俺の場合は中身28才だけど味覚とか大丈夫なのかな?


 中身が見た目とかみ合っていない自分に少し不安を覚えていると



「うぎゃぁ、、おんぎゃぁぁああぁ!」



 急に鳴き声が聞こえてきた。


 誰か泣いてるのか? ってこれ俺の体から聞こえてる? 全然制御できない!

 うーん。赤ちゃんって泣いてるとき、こんな気持ちだったんだ。どうしたらいいんだ?


 どうしようもない現実を受け止められず現実逃避をしてしまう。



「ウィル坊ちゃまはお腹がすいてしまわれたのですね! 今用意してまいります!」



 彼女は早足に部屋を出ていき、しばらくすると手に離乳食と白い飲み物を持って部屋へ戻ってきた。


――――――――――――――


 ご飯を食べて落ち着いていると扉をノックする音がした。



「ウィル坊ちゃま、講師のハロルド様がいらっしゃいました。失礼いたします。」



 声と共に部屋に入ってきたのは髪に少し白髪の混じった男性だった。


 その男性の後ろからもう一人男性が入ってくる。


 紺色の髪で目元は眼鏡をしていてよく見えないが、中肉中背の男性だ。


 表情は硬く、緊張しているのか普段からその表情なのか。


 少し怖いと思ってしまうのも赤子で気持ちの制御ができないからなんだろうな。


 眼鏡の男性は俺に向かって歩みを進め近づいてきた。


 ベビーベットのそばまで来ると恭しく一礼してから名乗ってきた。



「お初にお目にかかります。私はカルバン伯爵家の三男、ハロルド・カルバンと申します。

 本日よりウィルラド様の歴史の講師を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。」



 うえ? 歴史の講師? まだ赤子なのに、英才教育すぎん?

 といか、俺の名前ウィルラドっていうのか。だから「ウィル様」なのね。

 とりあえずハロルド先生の表情怖いし、笑顔で挨拶だけでもして友好的だと伝えないと、怖くて泣きそう。


 笑顔、えがお、、、「んちゃぁ!」


 笑って右手を少し上げて挨拶する。


 すると後ろの執事らしき男性が、手で目頭を押さえ、



「坊ちゃま、何と可愛らしい挨拶!ハロルド様に挨拶を返せるなんて、、、ゔっ、」



 挨拶しただけで褒められてるんだけど、ごめんね中身おっさんで。


 軽く泣いている執事の男性に罪悪感を感じながら、中身おっさんと言っているが、前世は享年28才だったためおっさんというには微妙なラインだ。本人は前世で独り身だったため、近所の子供との触れ合いしかなく、もっぱら「おっさん!」と言われていたから全然抵抗はないらしいが。


「この年齢で私の挨拶を理解し返してくださった?

 いや、たまたま声を発しただけだろう。うーん、、、、、」


 ハロルドさんだっけ?

 最後の方は聞き取れなかったけどもしかして子供に甘いんじゃないか? 深く考え込んでいるみたいだけど顔が緩んでるよ!

 今後の先生なら仲良くなれた方がいいんだけどな。子供好きなら仲良くなれそうだから嬉しいな。

 まあ、この国の常識は知らないけど赤子の講師を引き受けてくれるぐらいだしきっと子供好きなんだろう。うん、そうに違いない!


 一連の流れをポジティブに捉え、今後のハロルド先生との明るい授業風景が見え安堵していた。



 挨拶の後はハロルド先生による絵本(挿絵のある歴史書)の読み聞かせと本の内容に沿った国の成り立ちの授業を受けていた。


 二時間ほどすると自然と泣いてしまう。


 そんな俺見ながらハロルド先生は授業を切り上げ「失礼いたします。」とだけ言い残して部屋を出て行ってしまう。


 これは赤ちゃんとしての生理現象だから仕方ない。

 仕方ないから恥ずかしくないし、、、仕方ないからね!!ハロルド先生が部屋から出て行ったのも理由があるってわかってるから。寂しくないからな!


 誰に伝えるでもない言い訳を心の中で叫んでいると、扉をノックする音がした。



「ウィルラド様、ケイラ様をお連れしました。失礼いたします。」



 声の後扉が開き先ほどの執事服の男性とメイド服を着た彼女が入ってきた。


 何かさっきから赤子に対して畏まりすぎてない?

 ハロルド先生は伯爵とか言っていたし、メイド服に執事服だから貴族社会っぽいけど、伯爵家の者が家庭教師で畏まってるって事は結構偉い家の子供なのかな。分からないけど、そういうもんなのかな。


 理解はしてないけどそういうもんかと思考に区切りをつけたとき



「ウィル坊ちゃま、お待たせいたしました。お食事といたしましょう。ヘイロお願いします。」

「分かりました。失礼いたします。」



 ケイラからのお願いで執事服のヘイロが一礼し部屋から退室した。


 退室してもらってからの食事?

 何でだろう。見られたら問題なのかな。ケイラはさっきの離乳食の皿を持っていないみたいだけど。


 ウィルラドが疑問を抱えたままでいると、ケイラと呼ばれたメイド服の女性がウィルラドを抱きかかえた。


 そのままケイラはメイド服の上からボタンを順番に外してく。


 赤子なので目線を外す必要は無いのだが、何となく視線を天井に向ける。


 ウィルラドの前世は28歳の男だったから何となく後ろめたい。


 前世の年齢であれば予想したケイラの年齢とあまり変わらないため自然と目が泳いでしまう。


 でも、体が赤子だからか安心感や罪悪感はあるが、それ以外は何も感じなかった事にウィルラドは安堵していた。


 だけど、安心感とは別に罪悪感はある。ウィルラドはこの後目を瞑り無心で必死に吸った。

 (何がとは言わないよ!!)


お読みいただき、ありがとうございました☆彡


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