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ご都合主義の世界で


 前世では転生ものの小説が流行っていた。

 多くは中世ヨーロッパ風の世界に魔法があるという設定で、中にはお風呂やお手洗いなどの衛生面の心配をする内容を見かけた。


 でも「ご都合主義の世界で」という小説は、中世ヨーロッパ風の世界観で魔法がありながら、水洗トイレはもちろんテレビもスマホもある乙女ゲームの世界に転生したという、型破りな内容だった。


 だからネットには「ご都合主義もいいとこ!」「ありえない!」「でも、この世界なら転生してみたいw」という声が溢れていた。


 どうやら私はその小説「ご都合主義の世界で」に転生してしまったようだ。


 でも、よりにもよって悪役のヒロインって……。


 よくあるヒロインが悪役令嬢の転生者で、悪役がヒロインの転生者と言う王道(?)のストーリーで、私は悪役のヒロインで転生者のオリビアに転生してしまった。ややこしい。


 ゲームとは違い小説なので、ルートというかストーリーが1つしかない。

 いきなり詰んじゃってる?



 魔法国家アルカナ

 科学が発展していく中、魔法という素晴らしいものが消えることを憂慮した過去の人たちが、魔法を残すべく奮闘してくれたお陰で未だに魔法が残っている稀少な国。


 私も前世で便利な物に囲まれながらも「魔法が使えたらな〜」と思ったことがある。


 この国の貴族の子どもは15歳になると王立学園に入学するのだが、魔法科と普通科のどちらかを選択しなければならない。


 この世界では基本的に魔法科で学ばなければ精霊と契約する資格を得られないので、攻撃魔法などが使いたい場合は魔法科を選ぶしかない。


「もちろん魔法科!だって、せっかく魔法のある世界に転生したなら魔法を使わなきゃ!」


 なんて思うのは、魔法があることが「当たり前ではない世界」の人の思考らしく……。


 いざ学園に入学すると、魔法科には所謂「厨二病」の転生者しかいませんでした。


 先程から「私は悪役令嬢のロージーよ!オリビア様はどちらにいらっしゃるの!?」「俺は王太子レオナルドだがロージーもオリビアも選ばないぞ!俺はロージーの友達のイザベラが好きなんだ!」「困ります!私はモブ専なんです!」「俺はモブと見せかけて隠れキャラで、封印が解ける前の魔王ダニエルだ!」というカオス状態が、こちらまで聞こえてきています。


 そう、聞こえてくるのです。隣の棟から。


 はい、私は普通科を選択しました。


 魔法は魅力的ですけど、戦いたいわけではないので生活魔法が使えれば充分だし、自ら破滅の道に進むほど愚かではないし、いざという時のために手に職をつけておきたいので。


 王太子にも封印された魔王にも興味はないので、巻き込まれないように卒業後はどこか別の国にでも行こうと思っています。


 それにしても本当に、


「「普通科にしておいて良かった」」


 えっ?今ハモった?


 隣を見ると、長身の金髪碧眼の美青年と目が合いました。

 彼も驚いたように私を見ていました。


「俺はアミール。君と同じ転生者。ってことでいいのかな?」


 アミール?どこかで聞いたことあるような……。


「オリビアです。はい、転生者です」


「貴方はまともな人みたいで良かった。ちなみに俺は、小説では補足説明で名前だけ出てきたシャムス帝国から留学中の第二王子です。これからよろしく」


 なんてご都合主義の世界でしょう。



*****



 科学が発展していく中、未だに魔法が残っている稀少な国アルカナ。

 そこで繰り広げられる物語「ご都合主義の世界で」


 ヒロインの悪役令嬢ロージーは、王立学園の魔法科と普通科合同の卒業パーティーで悪役のヒロインであるオリビアを虐めたと断罪され、王太子レオナルドから婚約破棄を言い渡される。

 しかし、3年間SNSで交流を続け、ひっそりと愛を育んでいたモブのダニエルや友達の侯爵令嬢イザベラのお陰で疑いが晴れ、濡れ衣を着せようとしたレオナルドは廃太子、オリビアは修道院送りとなる。


 パーティーの後、ロージーはダニエルから「ずっとあなたを想っていた」と告白される。


 ゲームでは単なるモブでしかなかったダニエルが、実は封印が解かれる前の魔王だったという小説オリジナルのストーリーがあり、ロージーの愛のお陰で封印が解かれることがなかったため、誰にも魔王だと気付かれることなく、ダニエル本人さえも気付くことなく、物語は「めでたしめでたし」で終わる。

「ちなみに、5周目以降に登場するシャムス帝国のアミールは今回は登場しなかった」という補足説明があった。



 ロージーは憧れの魔法科に入学した興奮から、初日に自ら転生者であると告白するかのような発言をしてしまったことを後悔していた。


 興奮していたとは言え、なんであんなことを言ってしまったのだろう?

 別にオリビアに「私を陥れなさい」とか言うつもりだったわけではないのよ。

 小説通りだとしてもオリビアは転生者だから、転生者同士仲良くできないかな?と思って。

 それにあの小説の終わり方は割と気に入っていて、私はダニエルと愛を育むつもりだったから、早くオリビアと仲良くなって王太子との恋を応援しようと思っただけなのに。


 そう独り言を言ったつもりだったので、まさか返答があるとは思わなかった。


「なんだ、そうだったのか。釣られて魔王だってことを言ってしまった俺が言うのもなんだけど、とんでもないやつがロージーに転生してしまったなってショック受けてたんだよな。俺も結構あの終わり方は気に入ってて、ロージーに会うのを楽しみにしてたからさ。でもお前、そんなに悪いやつでもないみたいだし安心した。これから3年間よろしくな」


 ダニエルの爽やかな笑顔にときめいてしまったロージーだった。


 なんてご都合主義の世界でしょう……。


 とりあえずLIME交換した。



*****



 イザベラは後悔していた。


 突然レオナルド様からあんな事を言われて怖くなって思わず「モブ専」なんて告白してしまったけど、普通そんな事を言われたら引いてしまうわよね?

 普通に話しかけるだけでも「狙ってる?」と思われてしまいそう……。


 独り言を言ったつもりだったので、まさか返答があるとは思わなかった。


「失礼いたします。ハミルトン様、話しかけ辛いなら僕から話しかけてもよろしいでしょうか?僕はカーライル伯爵家の長男ジャックと申します。完全なるモブなのですが、前世で小説を読んでロージー様を助ける優しいイザベラ様にずっと憧れていました。もし迷惑でなければ、これからも話す機会をいただけないでしょうか?」


 綺麗な紫色の瞳に真っ直ぐ見つめられて真っ赤になるイザベラだった。


 本当に、なんてご都合主義の世界でしょう。


 まずはイソスタ交換した。



*****



 いったいどうなっているんだ?


 婚約解消したロージーは封印が解かれる前の魔王ダニエルと小説通り、いや、それ以上に仲良くなっていて近々婚約すると言う話だし、イザベラもモブのジャックとかいう男と付き合って、先月婚約してしまった。


 ただの令嬢よりは聖女の方が王太子の俺には相応しいから、オリビアが現れたら付き合ってやろうと思って、父上から勧められた他の令嬢との婚約話を全て断ってやったのに未だに現れない。


 聖女を探し出すように指示を出しているのに、上がってくるのは偽の情報ばかり。

 もう3年生になってしまったぞ!?


「オリビアはいつになったら現れるんだ!?」

 思わず叫んでしまった。


「……王太子殿下、まさかご存知ないのですか?」


 ロージーが信じられないものを見るような視線を向けて来た。


「何をだ?」


「オリビア様は普通科に入学されていて、そちらで出会われたシャムス帝国のアミール様から熱烈に求婚され、2年からはオリビア様がシャムス帝国へ留学なさいました。先日ご婚約なさって、卒業と同時にご結婚の予定とのことですわよ。シャムス帝国の第二王子とのご婚約ですから、ヤッター!のトップニュースにもなっておりましたよ」


「何っ?我が国の聖女が他の国へ嫁に行くなど認められるわけないだろ!」


「えっ?何をおっしゃっているのですか?誰が聖女なのですか?」


「オリビアに決まってるだろ!お前は小説を読んでないのか?」


「失礼ではございますが、そのお言葉、そのままそっくりお返しいたします。オリビア様は聖女ではございませんわよ」


「何を言ってるんだ!オリビアは悪役だけどヒロインなんだぞ!」


「しっかりと思い出してくださいませ。魔法科で学んだオリビアが2年の時に精霊と契約して初めて聖女になるのですよ。でもこの世界のオリビア様は普通科に進学していますから聖女になりようがありません」


「そっ、そうだが、魔法科に進学すれば聖女になる者を見逃すなど国の損害ではないか!」


「ですが、それをどうやって証明するのですか?今現在、聖女ではなく単なる伯爵令嬢のオリビアがアミール様に求められてシャムス帝国に嫁がれても国は止めたりいたしません。それに、治癒専門の聖女様は数人存在しておりますし、この世界には魔王が存在しないのですから小説のオリビアクラスの聖女は必要ありませんわよね?」


 そう言うと、ロージーはダニエルと視線を合わせて微笑んだ。


 レオナルドは呆然とした。


 道理で聖女を探しても見つからないはずだ。

 ということは、オリビアと結ばれる未来はない。では、俺は誰と結ばれるんだ?

 みんなには相手がいるというのに、なんで俺には誰もいないんだ?

 全員断ってしまったではないか!


 おい!何故みんな目を逸らす?

 まさか、このままってことはないよな?


 そうだよ!ここはご都合主義の世界なんだから大丈夫だ!

 この後きっと小説には載っていない聖女が現れて、俺と恋に落ちるんだ!



 ご都合主義の世界でも、現実を見ず反省もしない人にはどうにもならないこともある。


 今後幸せを掴めるかどうかは彼次第。


 頑張れレオナルド!負けるなレオナルド!



 めでたしめでたし





いつも誤字報告ありがとうございます。

大変助かっております。

尚、下記3つはそのまま使っていいのかわからなかったのでわざと変換してあります。

・LIME

・イソスタ

・ヤッター!


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