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アリスファイトクラブ  作者: BPM839
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エンゼルフレンチ

ミスドでお茶するお話です。物語は進みません……。

 とりあえず、約束通りさっき起こった一連の事情を話すため、鍵山さんと俺はミスドに向かった。

 ――で、現在。

 鍵山さんは俺の向かいでエンゼルフレンチを頬張っている。俺のおごりのエンゼルフレンチを。ものすごく幸せそうな顔で頬張っている。一瞬、天使に見え……た……よ?


「人にご馳走してもらって食べるエンゼルフレンチは格別ね。日々、勉学に励んで頭を使う学生には最高のご褒美ね。糖分が疲れた脳に染みるわ」

 

 悪魔だったわこの人!


「それはようござんしたね! つーか、心にも思ってないこと言うのやめてくれない? 棒読みだし、イジメられた気分だよ。それに、鍵山さんって意外と性格悪いこと口にするのな」

「イジメだなんて失礼しちゃうわ。もともと、有栖川君がひとりでブツブツ喋っているのがいけないんでしょう? それに奢りだって承諾の上じゃない。どこがイジメよ? これはただのお詫びでしょう?」

「うっ……、そうですよそうですね。これは俺からのささやかなお詫びです待たせてごめんなさい」

「うむ、よろしい!」


 そう言って鍵山さんはまたひとくち笑顔でエンゼルフレンチを頬張る。俺がおごったエンゼルフレンチを。


「それにしても、エンゼルフレンチって、フレンチクルーラーにチョコがかかった、ひと品で2つも味が楽しめるお得な一品よね」

「何を藪から坊に。鍵山さんはミスドの回し者か何か? しかもそれ今ならセールで100円だし?」

「コストパフォーマンス高いわね!」

「わざとらしい!! まあ高校生にとってコスパは重要な問題だからな。ありがたいのは事実だよ」


 なんとステルスマーケティング的会話だこと。最近の高校生は侮れない。都会じゃ高校生が歩く広告塔なんて言うらしいしね。お金になるなら企業案件お待ちしております。

 そんなことはさておき、俺は鍵山さんにさっき起こった出来事を話した――。曲がり角で何者かにぶつかったこと。ぶつかった相手が実はモフモフのウサギだったこと。そのウサギは、茶色い毛でダボダボスラックスにこれまたダボダボの燕尾服を纏い、ラスタカラーのニット帽を被ったレゲエチックなウサギだったこと。そのウサギは異世界から来たウサギで、しかもワンダーランドから来たとかなんとかいうウサギだったこと。とにかく口が悪いウサギだったこと。俺にしかウサギが見えないのは選ばれた人間らしいからってこと。どうやらウサギたちの世界の“ハートの女王”を討伐するために俺が助けを求められていること……。イチから全部説明した。

出来事を全部聞いた上で、鍵山さんは答えた。


「有栖川君って、いわゆる中二病なの?」


 ですよねー!


「まあ普通はそうなるよね……」


 どうしようもない……。いっそ俺の幻覚だったってことで片付けるか? 多分だれも信じてくれないし、こんなことクラスにバレたら残りの高校生活終了だろ? 高校生になって中二病の噂は痛すぎる……。ただでさえ普段中二病のような妄想に浸りがちなのに、それがマジに現実と区別がつかなくなったなんて知られたらいよいよ病院送りにされてしまうかもしれない……。せめて高二病のが良かったか……。


「どうすれば信じてくれるかな……。確かに、いきなりこんなこと言うのはおかしいって分かってるよ。俺だって、もし鍵山さんがウサギが見えるなんて言ったら、鍵山さん頭大丈夫? って思うもん」

「それって、自分はバカですって言ってるのと変わらないんじゃない?」


 ――自滅した。


「いや、確かにそうかもしれないけど、これは事実なんだよ」

「じゃあ証拠を見せてよ」

「証拠っていっても、鍵山さんが見えないんじゃあ証拠にならないよ。それにレゲエウサギとはさっき別れちゃったし」

「それじゃあ、仮に私が信じようとしたところで難しいわね」

「んー、例えば、俺に不可解な点とかなかった? 曲がり角を曲がる直前で、なにもないはずのところで何かにぶつかったように倒れたところとか」

「そうねえ……、残念だけど有栖川君が曲がるところ見てなかったのよね……。気づいたら倒れてたみたいな」

「そもそも見てなかった!」

「ああ、でも奇妙といえば、誰かと話している態度とか話し方が妙にリアルだったかも……。普通はあんなふうにだれかと喋ってるシーンを一人で演じるのは難しいわね。必ず演技だってボロが出る時がある」

「そう! あの時確かにウサギがいたからこそ、会話をしていたからこそそういうふうに見えたんだよ!」

「でも、有栖川君はそういうのも実は上手だったりして。というか、妄想でも思い込めばリアルに誰かと会話しているような見せ方はできるわよね……」

「元も子もない!」

「んー、何でも良いから証拠があればいいのに」

「証拠って言われてもな……」


 俺は、先ほど起こった出来事を必死で思い返す。何かないか何かないか。鍵山さんが信じるような証拠……。

 ………ダメだ。全然思いつかない。どうする、何かでっち上げるか? いや、それこそ妄想だ。意味が無い。レゲエウサギは何か言ってなかったか?


“お前は選ばれた”


 ……ああ、そうか。

 さっきレゲエウサギに言われたこと、鍵山さんにも言えばいいんだ。ひらめきは突然やってくる。

俺はぬるくなったブラックコーヒー(男は黙ってブラック)を一口飲むと鍵山さんに言った(ぬるくなったコーヒーほどマズイものはない……)。


「そうだ、これじゃあ埒が明かないし百聞は一見にしかず。実際に見てみればいいよ」

「だけど見えないんでしょう?」

「実際にワンダーランドへ行こう!」

「はい?」

 鍵山さんが訝しむ。

 俺は顔が引きつる。

「はい……」

「有栖川君、頭大丈夫?」

 会話は振り出しに戻った……。

この度は数ある作品の中から、本作品を閲覧いただきありがとうございます。

小説初心者です。頑張って投稿し続けられるように頑張ります。週一でアップできたらいいな……。

どうか、暖かい目で見守っていただけますと幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] ホームルームや放課後の様子など、学生時代を思い出すような丁寧な描写がとても楽しかったです!いきなり日常を壊したウサギとの出会いもワクワクします!
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