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アウェイな屑  作者: いば神円
三幕 モール派閥
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14 結託への道


 討伐組から外された。ネギは予想外な状況に焦っていた。彼女達の状況を改善したいのは山々だがネギには待っている恋人がいる。

 置いてくる形になり、状況を何も知らないミカゲに一言も連絡が取れず戻る事も出来ない状況は彼をより焦らせた。

 しかし魔術士の舌に気に入られた事により彼女達の立場はネギが居る限りは安全性が増したのは確かだった。

 この緊急事態は人をおかしくさせるのだろう。ネギ自身、身を持って知っている事柄ではあったが現時点で考えが浅はかであったと痛感している。

 殆ど機能はしていないが、まだ通信ができる携帯を壊したくないと置いてきたのが間違いだった。本来の予定は死体を片付け自販機に寄って帰ってくる何かに出会おうと距離としては近く十分もかからない筈だった。彼らを目にした瞬間にせめて携帯の存在を思い出していれば。どうして人を簡単に信じてしまったのか。危機的状況で、ミカゲと共に未来に希望を手に入れられるかもしれないという楽観視が原因だ。本当に浅はかだった。外は危険だと思っていた筈なのに。

 何度考えようと後悔しようと状況は変わらない。途中、逃げ出そうともしたが、それは無理だった。小さい子に懇願された捨てる罪悪感と、何かを察した魔術士の命令が状況を悪化させた。

「コイツを襲うな。怪我をさせるな。絶対に此処から出すな」

 魔術士の言葉に二言目には、はいと言う彼らの目は隙間なく監視してくる。

 どうして、こんな状況が出来上がってしまったのかは不明だが。明らかに洗脳された人々は本当に、ここに国があるとして振舞っている。

 もしも自衛団の姿があれば目が覚めるのだろうか。それとも、このまま突き進むのだろうか。分からない。分からないが、どうにかミカゲと連絡が取る方法がないか。

 自分が生きている事と決して此処には来てはいけない事を教えたい。気持ちは焦るばかりだ。



 *


「ネギにはホント感謝してる。弟がさーあっち側で。ネギ来る前までは目すら合わせなくなっちゃって。もー心折れそうでさーマジでコレが鬼ヶ島かよみたいな」

 鬼ヶ島とは過去、傍若無人の、人間にとって悪夢の島と言われていた場所だ。しかし古い時代に浄化され今は何もされないとは聞く。ただ詳しい者はそういないので謎なままであり。最近は、ヤバい状況を鬼ヶ島なんて呼んだりする。若者言葉だ。

「だからねーちゃんとしたの真面目に作ったら前みたいに話せるかなって思って。でも怒られるだけで、もー怖いったらホント、下がるわーってなってたらネギっしょ?英雄ヒーローじゃんねー上がるわー」

 彼女達が喋ったり笑うだけで怒る者も、まだチラホラ見えるがネギが顔を出すと急に笑顔になって去っていく。変な気分だった。見えない鎖に、どんどん絡まっていくような。

「でもさー外に情報もらすなって取られてた携帯、弟が、そっと渡してくれて今、歓喜状態なの。流石、弟、わかってる」

「え」

 携帯。彼女達に訊いたら誰一人持っていないと言われた、それが今、彼女の手にある。

「あの、お願いがあるんだけれど…」

「ん?いいよ。ネギの頼みなら、どんとこい」

「助かる!って、えっ、な、なんで脱ぐの!?」

「え?そういうのじゃなくて?」

「どういう事!?いや、違うよ。恋人に連絡取りたくて…」

「ははーん!なる!ツーボやってる?」

「うん。名前は…」

 十四日目。ようやくミカゲと連絡が取れそうだ。

「ま、あーちと友達じゃないし?直ぐは無理かもだけど裏てから送っておくから。あ、写真とるか!」

「わ、あ、じゃあフライパンと…」

「何故に!?いやウケるわーネギ最高じゃん」

 フライパンとの写真をミカゲのツーボの裏側の連絡に出してくれたみたいだ。今、ミカゲはどうなっているだろうか。食料自体は、まだ持つとは思うけれど心配だ。死体も片付けられなかったし。もしも扉を開けて出した時に、なって思うと。不安で仕方がなかった。

「ん!はや。きた」

「え!」

「ほら」

 戸惑いと感激と心配に溢れた言葉が乱立している。

「わ、わ、わ。凄い勢いで画面うまるじゃんかーやばば」

「えっと、怪我せず生きてるって事と、光の国には絶対に来ないでって伝えてくれる?」

「あーい」

 ポチポチと押してもらうと直ぐに返信があった。『助けに行く』と。

「え?え、な、だめだめ、なんで?いやいやいや…」

「まあ好きなら来ちゃうよねー」

「えぇ…?」

「まあ、あれよ。誰かときて助けてくれるなら嬉しいし無理なら、ここってネギが居れば良い感じだし、いいんじゃない?」

「何言って…」

「だってネギがいなくなったら困るしー」

「……っ」

 彼女の、その無邪気な笑顔に背筋が、ぞっとした。


「ま、半分、冗談だけどさあ」

「へ…っ」

 青い顔でネギが固まっていれば髪の毛先を指先でクリクリさせて彼女、アーチは肩を揺らして笑った。

「今だに電話は繋がりにくいから手紙メールであーちも、彼ぴに連絡したから助けてくれるかも」

「彼氏さん…」

「彼ぴ強いから多分、生きて来てると思うのねー」

 アーチはフウっと息を吐く。

「弟も、それを信じて隠してあった携帯見つけて持ってきてくれたんだろうしさー外のバケモノは怖いけど正直、ここもナシのナシ。ホントありえない。人の善意に文句付けるぐらいなら許すけど頭おかし過ぎでしょ」

「……」

「ま、ネギが来るまでは忘れてたんだけどね」

 そういってアーチは、にっと笑った。

「ありがとね。ネギ。本気で感謝してるよ」



 *


 わっと騒ぎ出したミカゲに彼らは目を丸くして宥める。急激な変化だった。ある程度落ち着くとミカゲは言う。

「ネギ君が生きてた!ありがとう龍神王!罵って、ごめんなさい…良かった!ネギ君!良かった!」

「むむむ…光の国と言ったか…」

「うん。知ってる?」

「わしも丁度、そこに用事ができたし行かねばならぬのう…」

 太男は何かを考えている。

「あそこか…」

 黒髪の男が椅子に座って軽く脚を組んで考えているようだ。

「ネギ君は生きてた。助けてくれるよね?約束でしょ」

「ああ…まあな…」

「あそこ規模のデカさと魔術士がやっかいなんだよねー」

「自分ら何度も、あそこに挑もうとはしてるんだけど厳しいわけよ」

「え…」

「あー俺、そこに一回誘われたわ」

「ん、そういえば自分らと出会った時、二階から観察してたな」

「そう。一度断ったけど一応、確認したくてさ。なんかヤバいよなあそこ」

「ヤバいの…?」

 ミカゲの顔が青くなる。

「まあ、中身は男にとっちゃ良い方かもね」

「むむ?男にとっては?そういえば、お主ら、そこから奪いたいが奪えないと何度も言っていたな」

「あれは簡単に言えば、この状況を逆手にとった新教だ。どうやって、この短期間で作り上げたのかは謎だが」

「新教か…このモールの大部分の生き残りが、あそこに集結してると考えると」

「僕らも一緒に屍、退治するようになってから覗いてるけど、あれって何人いるんだろうね」

「食料持つのかあれは」

「まあ食料品店の規模は凄いし数ヶ月は余裕なんじゃない?」

「見る限り籠城もエグいけど徹底してるしなあ」

「わかった」

 悩んでいた黒髪が呟いた。周りの目が一斉に向く。

「他の生き残りと手を組もう」

「他の…?」

「ホムラ」

 少年が頷いて携帯の画面を上にし面々に見せる。

「どうも別で僕らぐらいの生き残りが二組いるみたいなんです」

「二組…」

「数も同じぐらいだが、この中で生き残っている面々だ」

 黒髪は口端を上げた。

「期待しても、良いだろうさ」



 *


 手洗い場から抜け出して集合店舗モールの二階から一階を慎重に見て周っていく面々。行く先々で想像するよりも屍呪者アンデットが少なく。不思議な感じだった。勿論、場所に寄っては最初から近づくべきではないと、ボーイで分かった為に寄らなかったが、それにしてもだ。

『アズカ様』

「えっ」

 先程から、よく目にしては掃除をしている、おそうじクンに名前を呼ばれ面食らう杏華。他の面々も驚いている。

『伝言です』

「伝言ですか…」

『マスターが数日後には地下に辿り着けると、おっしゃっています』

「え?ますたー?」

「知り合い?」

 ヒロに、そっと聞かれて顔を横に振る杏華。

「ますたーさんという知り合いは居ません」

「もしかして名前は別にあるんじゃないかな」

「そうね。そんな気がするわ」

 太陽とリサが言う。

「えっと、おそうじクン。その方のお名前を訊いても大丈夫ですか」

『マスターマスター。通信中通信中』

「わ。おそうじクンの、こういうの不思議な感じするね」

 ヒカルが少し楽しそうだ。

『アズカちゃん。芯です。携帯の方でも連絡したけど丁度、君の姿が見えたって、おそうじクン達から連絡があってね。話かけちゃった。あとチモが、ごめんってさ。また会ったら謝ると思うから話だけでも聞いてあげて。じゃ。また連絡するね』

「あ、シン君!?」

「え、知り合い?」

「はい。友達です。あの、この前、話したモールに来てくれようとしてくれている友達です」

「おおーえ、てか。マスター?」

「おそうじクンのマスター…」

 ヒロが少し考え、リサも不思議そうな顔をする。

「おそうじクンの製作会社と言えば『鳥』だよねー…アズアズ。シン君の上の名前は?」

「雉羽です」

「雉家!!」

「もしかして息子!?」

「わー命懸けで助けに来る男の子かあ…こ、れ、は…」

「春ってやつね!」

 太陽とヒロが驚きの声を上げ。ヒカルとリサが楽しそうに弾んだ言葉を投げかける。

「ハル…ちゃん?」

「え」

「まさかアズアズ…」

「そういえば、ずっと街外にいたんだっけ…」

「おじいさんと、ずっと…」

「側にいるのは、ボーイ…」

「なるほどね…」

「シン君、応援したくなってきた…」

「十三審との禁じられた恋…」

「一本、映像館で放映できそうね」

「落ち着いたら皆で映像作る?」

 ヒロが何気なしに言い。

「終わりゆく世界で新しいモノ生み出すとかいかしてるじゃないの」

 リサが乗り気で笑う。

「えーそれも良いけど釣もしようぜ」

 太陽が言い。ヒカルが笑う。

「釣の場面は買い物袋取りかな」

「あれかあ~」

 そう、和気あいあいと彼らが進み。そして足を止めた。二階からの眼下。あの男達の会話から予想できた魔術士達がいるだろう場所が見えた。彼らの笑顔が消える。

「わーお」

「……」

「考えたわね…」

「下から行かなくて良かったね、これは…」

「…はい」

 頷く杏華。彼女らが眼下に見たのは下半身を切られて蠢くアンデット達の壁。通り道。その先には防塞と暮らす人々の姿。沢山の屍が半分動いたまま彼らの暮らす防塞を護っていたのだった。



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