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アウェイな屑  作者: いば神円
三幕 モール派閥
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12 操作捜索

 

 人工庭の天上の真ん中部分を開けて太陽の光を入れる。世の中は変わってしまったが太陽の光は同じままだ。屍呪者アンデットで汚れた服は元々、生物広場ペットショップに置いてある洗濯機で洗い前は中干しや乾燥機が多かったが最近は量が極端に増えたので庭に干している。

「お前らは、しねえの?」

 死体処理班という自衛団の傘下の一人テリーが身なりを整えながら声をかけてきた。ここの元、従業員ワタリとアイムは振り向いて視線を見合わせ。少し気まずそうに話す。

「いやー…なんかなあ…」

「まともに話してないしな」

「ほーん。ああ、でも彼女、えーっとミカゲか。ミカゲは条件出してきたから等価交換は出来てんじゃね?」

「え?」

「条件とは?」

「なんか恋人が、集合店舗モールで行方不明だから探してくれってさ。携帯で撮ってある裸で抱き合った写真とかみせられたわー」

「ここで別れ離れに…?」

「厳しくないか…」

「さあ?まあ避妊具使う上で探すなら積極的に相手してくれるみたいだし?自分は探すけどさー」

「…うーん。まあ探すのは全然良いけど…」

「…それは屍になった状態でもなのか?」

「多分そうじゃね?確認するまで諦めきれないんだろうさ」

「そっか…」

「確かに、そうかもな…」

 しんみりする二人に首を傾げて、テリーは言う。

「で?しねえの?このまましないならカトウかカキミヤが二回戦行くみたいだぞ」

「え、ああ…とりあえずは、いいかな…」

「オレも遠慮しとく」

「まじでー?信じらんねー!もし生きてるの見つかったら抱けなくなるかもしれねえのにー変なやつらだなあ…」

 そう言って、テリーは人工庭の空いている部分に行くと寝転がった。

「じゃあ自分、寝るわ。誰か用事あったら起こして、おやすー」

「へ…」

「はやっ」

 寝転がって呼吸を調えたかと思うと吐息を漏らし眠るテリー。その様子に苦笑いを浮かべる二人だった。



 *


「イチと言ったか。お主、変わっておるのお…」

 太男が林檎飲物リンゴジュースを飲みながら言う。

「あんたみたいに十三人も愛人居る方も大概だと思うがな」

 店の電子機器を使い情報を探しながら答える死体処理班、黒髪のイチ。

「わしは金を持っとったからなあ。任務も確りこなし貯まっていく金で買った合意の元、愛人関係になるぐらい良いだろう」

「俺達に出した条件でよく言う」

 モールに来てから信念を貫き、アンデットを潰し片付けながら太男が出した条件の『女子供を探し出し連れてくるならば力を貸す』を聞きイチ達は行動していた。彼らの信念には犠牲が付き物だ。

「わしも鬼じゃないぞ。ミカゲが出した条件で、その者が屍呪者になっていたならば治してやるさ。まあ致命傷を負った完全体は生き返らんがな」

「ちなみに」

「ん?」

「あんた何でまた、このモールに居たんだ?仕事じゃなかったろ」

「ああ。それは決まっとる七番目と八番目の愛人と会う日でな」

「二人…」

 イチが呆れた目をした。

「可愛い二人が、ここで好きなだけ買い物をしたいと言うから、よしよしと来ようとすれば大渋滞でなあ…待っているじゃろうと何とか、アレを止めては来たのだが…悲しいのう…」

「…もしかして、女子供の条件って」

「もちろん、その二人を見つけれたら一番良いからなあ。まあ他で満足できるなら、それもまた」

「ちなみに性別は…」

「古来学の姉弟じゃ。十八と十三だのう」

「わーお。あんた好き者すぎるだろう」

「一途を通り越した、お主に言われるのもしゃくじゃ」

「俺の女神は世界を凌駕する」

「むむ…」

「…手え出したら、あんたでも生きてる事、後悔させる」

「おお、こわいこわい」

 扉が開く音がした。二人は上半身裸で下着だけ着けたカキミヤと目が合う。

「お主は正直者じゃのう…」

 太男が呟けば、カキミヤが笑う。

「好みの身体じゃないけど抱いて良いなら抱くよ、そりゃあ」

「…まったく」

 イチが呟き水道の水を器に注ぎ飲みながら近づいてくるカキミヤ。

「イチはしないわけ?」

「俺は愛した女以外に子種を出さない主義だ」

「えっ何、その予想外な性格」

「こやつは毎日何かを探しておるだろう」

「お?うん」

「どうやら、その好いた女を探しているらしい」

「あ、そうだったわけ?へー何?俺も探そうか」

「手伝ってもらうのは有り難いが気に入って俺の女神に手を出したら去勢するぞ」

「わお…ええ…こわっ」

「こわいのう…」

「そんなに好きなの?」

 イチが振り向いた。精悍な瞳が真っ直ぐに向く。

「好き?そんな簡単な話ではない。彼女は俺の全てだ俺は彼女の存在で息が出来、食事をし生きていると他ならない。彼女がいなければ、この世は無意味だ。彼女は生き残るべき人間だ。そして彼女は死んでいない。俺にはわかる。俺の全てだからな」

「わー!」

「こわいのう…」


 食事の時間、死体処理班の一人カトウが大きく笑った。

「あーイチのリサ話聞いたわけ?そりゃ怖ええ!笑う!」

「わかるわかる。でも、それは挨拶みたいなもんだな、こいつの怖さは、それだけじゃねえよ!」

 テリーも笑って言う。

「リサが世界だとか愛を振りまきすぎて死体処理班だけじゃなく自衛団の中でも殆ど知れ渡ってるし」

「イチ顔良いし知らない女からは、モテるのにな」

「リサ以外に意味は無い」

「その、リサさんって美人なの?」

 最初とは変わり条件を承諾された事でハッキリと喋るようになったミカゲが訊いた。

「美しいな。尊い美しさだ…俺と彼女は幼いころからの知り合いで一目会った瞬間から俺は彼女で生きようと決めた」

「わあぁ…」

 ちょっと頬を染めて微笑むミカゲ。

「良いね。こんな美男子に熱烈に告白されたなら、リサさんも良い感じなんじゃない?」

「それが違うんだよ。ミカゲちゃん」

 カトウが手を左右に振り言う。

「イチはさ、その瞬間から息をするように告白しつづけて全部フラれてんの」

「え?本気?」

「それ、どっちの意味?」

 テリーが笑いながらミカゲに訊く。

「どっちも!断るのも驚いたけど、そんなに告白続けれるもの?というか息をするようにって本気にできなくならない?」

「え…」

 イチが真顔になる。

「リサは、どう思ってるんだろうな?」

「嫌なんじゃね?だって、その所為で女に走ったって言われてるし」

「あれは噂だ!それに女と一時遊ぼうが俺の愛は変わらない…!」

 イチが真顔で深き底から出すような声で呟いた。

「必死過ぎか」

「この人、こんな感じだったのか…」

 従業員組のワタリとアイムが呟く。

「イチって、リサと結ばれる為に、ずっと生きてるから安定安心の家の相続も継がずにリサを追いかけて、きっつい死体処理班に入るし仕事の相棒の座を狙って上司であろうが潰すし。あれってリサの出世の道も潰したよな」

「あれは酷かった。でも今のリサの相棒が女のヒカルになったからか我慢はしてるみたいだけど」

「リサの立場も考えてやれよなあ」

「好きでもない男の所為で道は閉ざされ相棒を志願してきて鳴り続ける音楽のように告白してくる粘着さ。そりゃあウザいって」

「……」

 イチが黙り込んだ。

「そっか…リサさんは、女の子が好きなんだ…そこは好みだもんね…」

 ミカゲが神妙そうに言う。

「最終的に選ぶ初めての男が俺なら良いんだ」

「え、最後の男じゃなく、処女をってこと?ちょっと気持ち悪いね…」

「な」

 ミカゲが少し引いて言えばイチは固まる。

「処女じゃなくても女は良いもんだぞー」

 カキミヤが笑って言い。

「まあ、どちらも楽しめるが拘り過ぎると何もできんぞ」

 太男が言う。

「…いや…リサが…そうじゃなくなれば…した相手を殺すまでで…リサは愛すけど」

「殺すなや」

「強姦じゃ無い限りは見逃さないと本気で嫌われない?」

 ワタリとアイムが突っ込みを入れ。イチは瞼を、ぎゅーっと瞑った。

「バレないようにするから大丈夫だ!俺は死体処理が上手いからな!」

「うわっ」

「こわ…」

 二人に少し引かれる。

「あはは!内容は野蛮だけど、これは、ちょっと可愛いかも!」

 ミカゲが笑う。

「えっ何故っ」

 ワタリが驚きの目を向け隣のアイムも不思議そうだ。

「少し擽る部分があるよ、イチさんは。でも、リサさんが、どんな人か知らないし…一度リサさんとも会ってみたいなあ…」

 ミカゲの隣にいた少年が箸を置き呟いた。

「…僕、外に出るわけでは無いし暇なので検索しましょうか?情報を、ある程度教えてくれたら…」

「むむ?わしの相手があるぞ」

 太男が言えばミカゲが男の腕に抱き付いて言った。

「私で十分でしょ?」

「む…わしは三人でも…」

「だーめ!そうだ。イチさん彼がリサさん見つけたら売るの完全に外してあげてくれない?流石に初恋も恋人もまだで、これは可哀想だし」

「…ミ、ミカゲさん?」

 少年が驚いた顔をしている。ミカゲが片目を一度閉じて笑う。

「ね?私だけ条件聞いてもらうのも平等じゃないし」

「…あんたは、それで良いのか…?」

 イチが不思議そうな顔をした。

「二言は無いよ。どうなの?」

「…わかった。見つけたら俺が約束しよう」

「…僕は…貴女に何もしてないのに…」

 少年が苦しそうに言えばミカゲは笑う。

「何もしてないのが良いんじゃん?」

「……」

 少年が静かに俯き涙を滲ますと隣に座っていたカキミヤが少年の頭をクシャクシャと撫でた。

「素直に聞いときなって。よしよし」

 カキミヤに頭を撫でられて身が揺れる少年。

「あ、そういえば、おっちゃん私の顔、気に入らないっぽかったよね?」

「む…!」

「どういう顔が好きなの?化粧で作るよ。おっちゃん好みになるからさ」

「むむ!」

「今から教えてよ。ね?」

「そうじゃあなあ…」

 眺めていたカトウが口笛を吹いた。

「ミカゲちゃん好きかも!」

「はー?告白しないでくださーい」

 ミカゲが笑いながらカトウに言えば、ご飯を食べ終わって手を合わせた、テリーが言う。

「ミカゲって口付けだけはしないよね、あれって彼氏の為なの?」

「はーい。ネギ君一筋でーす」

「良いねえ。彼氏もちってのが滾る」

「カキミヤは性癖歪んでね?」

「イチと、どっちの方がヤバいかな」

「イチじゃね?」

「イチかー!」

 笑い合う面々にイチは鼻を鳴らす。

「俺は一途なだけだ」



 *


 イチから提示された情報に少年ことホムラは確かに怖い人だと思った。幾つも大事に持っている情報場には大量の写真が保存されており。情報も細かい。趣味趣向。日常の時間。生理の時間まで把握しているのは、どうなのか。完全にコレは粘着妄想ストーカーなのではとホムラは思った。思ったが真面目な子なので口は噤んだ。

「リサの登録している電脳アプリはここで拒否状態になってから心配している。彼女は、この掲示板を使っているが一度消えてから見つけても鍵が掛かっていて中を確認できない。だが、あの日、相棒となっているヒカルと休日、遊びに出かけている筈で、モールの線が高いんだ」

「ツーボですね」

 個人別掲示板ツートボックス一度、情報を消された上で別の情報を探し見つけて鍵と徹底している相手に対して今もなお向かえる精神力は強いなっとホムラは思いながら考えた。

「ちょっと、やってみます」

 ホムラは自分の携帯は無くしてしまっているので、自分のツーボをイチの携帯で開くと久々に呟いた。

『モールで暮らして十三日目。もう僕ら以外、誰も生きていないのかな…?#集合店舗モール生き残り求』

『明日こそは人を探しに外に出ようかな…でも怖いな…#集合店舗モール生き残り求』

『寂しい…ようやく充電器を見つけて呟けたのに…#』

 そんな哀愁漂う内容を淡々と呟くと少し反応がみられた。

「あ、モールに居るらしい眼鏡って人から通知がきました」

「眼鏡?リサとは違うぞ」

「わかんないですよ。同じ空間で過ごしているかもしれません」

「同じ空間…リサと…」

「無言で椅子の背もたれ割らないでください…怖いですよ」

「すまん…」

「多分、直ぐに打ち解けるのは無理ですが、モール関係の人と話して少しずつ情報を探してみます」

「そうか…頼んだ」

「はい」


 眼鏡という名前の眼鏡の画像の人は、どうやらモールの手洗い場に暮らしているらしかった。人数は九人らしい。自分もまた人数を提示する。情報の探り合いだ。別からも通知が来るので、そちらとも会話する。キビダンゴという団子が画像の人や何やら食べ物系の人達から連絡が来た。




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