1 掲示板
【裸の集団現る!?】某、掲示板にて。体調の悪そうな裸の集団が薄暗い通路を歩いている写真が掲載された。
:Σ(-∀-;)ナニコレ!?
:釣乙
:通報待ったなし
:荒ぶるおっぱい
:ぱい乙
:キモ
:何?特撮?
:特撮に謝れ
:ごめんなちゃい
:素直
:許す☆
:優しい……┌(┌^o^)┐ホモォ…
:ア―――――――ッ!
:チーン
:おちちそ
:自衛団さん、こいつです
:いや、これガチじゃねえの?
:おいおい
:これだから感のいい子は嫌いだよ…
:いや、マジで拡大してみ
:裸のパレードがガチだからってなんだよ!乱交ぱーちぃですか!は?ふぅ…
:マスかくな。ふぅ…
:やめれ
:あーいや主語抜けてた。これ冗談とかじゃなくてさ真面目にヤバい奴なんじゃねえかってこと
:ヤバいのは見ればわかる
:今更感(゜-゜)
:変態とかの意味じゃなくてな?護兵やってる奴いる?俺、これ、アンデットに見えるんだけど
:おやまあ…
:アンデットw
:映画の見過ぎw
:現実考えてw
:眼科いけ
:ボロクソw
:護兵ってロスト中心の集団だろー?急にエリート自慢?
:自慢じゃなくて…魔物は分かるだろ
:外の話じゃん
:いるかも微妙な
:いるだろ映像や写真はあるし
:ペットスライムはいるな
:で?アンデットやらだとして、あれって魔物の話だろ人間関係ねーじゃん
:アンデットは魔物だけじゃなく人もなるぞ
:ソースは?
:自分で調べろ
:はいはい知ったかー
:うぜえ…
:幽霊とかアンデットとか電波の類じゃんw
:ウケるwww
:www
:お前らがアンデットになった時も笑えてれば良いけどな。俺は用意するから抜ける
:滲み出る自尊心w
:プライド傷つけられて、えーん!ママのおっぱいちゅぅのぉ~
:やめやw
その後、最新の映画の話題になり流れたが後になってみると、これは悪夢の情報の始まりだったと言える。
*
龍尾街内中心部地区にて古来学指定の自動運転の巨大長車が専用道路を移動する。場所によっては手動の方が運転がしやすい所も存在するが自動専用道路の手動車は規制されて使えない状態となっている。この道路では基本、等間隔で車が自動で走り速度も決まっており。中に人が居ない場合があれど本来の自宅や本人の呼びかけで移動したり燃料を用意したり安全で使い勝手の良さが高まっている。
「桃島杏華君は古来学では珍しい一般科の特別学級の子だ」
「一般科の特別学級ですか…」
「うむ」
教育者の畑がトラックの運転席に座り喋り始め隣の席に座った鬼宮が相槌をうつ。
「君達ロストの血族を主に能力科とし、学力中心を専攻するものを一般科としているが」
後ろの席には芯、智盛。そのまた後ろには団子兄弟が乗っている。
「特別学級は少々違う」
車の窓からは高い位置にある道路から街並みがよく見え。流れていく街並みはゴツゴツとして活気に溢れ中心部に近づくほど入り組んでいた。
「あの子達はロストのような能力は持ちはしないが…古来よりロストとは違う力の所有者とされている」
普段は余り話を聞かない智盛は畑の話を黙って聴いている。
「伝承によれば古来でこれは…スキル能力といったそうだが…」
「杏華さんは…」
鬼宮が気になるのか名前を出して『彼女の技能能力は何か?』と促した。
「私も全ては知らないが…今は衰退する精霊術に近しい力を持っていると学長は仰っていた」
「あー…あいつ妖精っぽいもんなあ!」
智盛がニコニコ顔で呟く。車内に一瞬生温い空気が流れた。智盛は一人楽しそうだ。
「まあ…精霊術者は国の管理に置かれるのが一般的だ。学び精霊術士や魔術士になるにしても成らずとしても貴重な存在な事には変わらない。その為、保護と学びも兼ねて古来学の寮加入を求めているそうなのだが」
寮という言葉に智盛の眉が上がる。
「少々、ご家庭の事情で承諾が受けれず。今は交渉中との事」
黙って頷く智盛。
「頻繁な通いも遠すぎて物理的に難しい。どうにか名目の学力試験を受けてもらえはしたがな」
そこまで言い終えて畑が、ふっと笑う。
「しかしなあ…智盛と芯との知り合いとは…」
車の振動で後観察鏡に付けられたキノコの小物が揺れる。
「この機運。まさに女神との運命を感じる」
智盛が瞼を瞑り静かに呟いて鬼宮が後ろの席に振り向く。
「数年前に一名が亡くなって」
ツンツン短髪栗毛の背が低い方の団子兄弟が呟く。
「確認されているのが今は十一名だっけねー?世界規模としたら少なすぎのこんこんちきだー」
「その内、六名も極楽行きそうだけどー」
指で数を現して背の高い方の金髪サングラスの団子兄弟が合わせてきた。年齢層が高い六名、他五名。そこに近しい杏華が加わると十二名となる。
「…それってさー。杏華がキラキラしてんのと関係ある?」
団子兄弟が頬を押さえて、きゃぴきゃぴしだした。
「いやーん甘酸っぱい~!」
「きゃーん盲目ってやつぅ~?」
ふと、にまりと笑うと栗毛の方の団子が呟く。
「まーでも有り得るね」
「おっ」
「魔力を精霊にかりて魔術にする際に紋章や文字、魔方陣は必ず輝くからね」
金髪、薄茶色眼鏡の団子も合わせる。
「無詠唱ですら、そうだし我らの智盛氏なら根本が見えても不思議じゃないでしょ」
金髪団子がサングラスを外すと、トントンっと縁を叩く。サングラスは魔方陣を浮かび上がらせキラキラと輝く。
「似てる?」
じっと智盛は見つめて言う。
「いや違げえな。杏華のは、もっと綺麗で柔らかくて温けえ感じ…」
「ふられた!」
「のろけだ!」
団子兄弟が、がーんっと天井を仰ぐ。トラック内天井には過去の卒業生の落書きが描いてあり愛アイ傘もあった。フェルとシュガー。名前からして大陸出身だろうか。
「まあ…オレのこれは魔法道具だからね。魔物の魔石から加工して作って精霊から魔力をかりる媒介にしている分、色味は違いそう」
「オイラ、さっきは、パンツばっか見てたけど次会ったら新しい魔法道具の参考になるかもだし精霊の事聞いてみよ」
「パンツ見たのか」
「見た」
「白だよ」
「なるほど…」
智盛が頷く。
「畑先生」
ずっと黙って外の景色を窓から眺めていた芯が声を上げた。
「見えましたよ」
「おお、ホームセンターか」
畑が目の前の先を見れば彼らがトラックの目的地としていた開拓広場が見える。広く大きい面積が取られた場所だ。流れる車は殆どが、そこに向かっていたのだった。
*
「みんなっみんながやってくる~♪」
「ここは巷で噂のクレイジーなホームセンター♪」
団子兄弟がホームセンター屋上で、るんるんっと歌っている。
「トラック用の駐車は上しか空いていなかったな」
「搬入が大変ですね」
畑と鬼宮が話しながら綴込文具に止めた紙を捲って文字の一覧を眺めた。
そもそもで彼らが運動服姿に着替えてホームセンターに来たのは古来学が今後する文化祭の為だった。早い段階から荷物の仕入れは必要なので部活などの出し物で、また違ってくるが大きく決まっている学館の外装などの仕入れを智盛の罰で今日する事にしたのだ。連帯責任含めて四人も男手の手伝いがあれば随分、搬入は楽になる。
「その気になればぁ?」
「なんでもぉ?」
「「つくれるぜええぇ!」」
「小鳥用の♪」
「犬用の♪」
「人用の素敵なお箱も作れちゃう♪」
屋上駐車場から下りると上の階から各店舗で必要な材料を揃えていく。流石最大規模なだけあり業務用は多く学館規模の要求に迅速に応えてくれた。また今は間に合わない物は後日、揃え次第、配送もしてくれるとの事。上の項目から紙に数や備考を書き加え鬼宮と畑は進んでいく。トラックに荷物を運ぶ時だけ二手に分かれ智盛達は動き。途中で積む物がなくなったので団子兄弟が売られているスライムが見たいとの事で二手に分かれたまま向かい。智盛と芯は店のお客用ソファーに座り、きゃいきゃいと楽しむ団子兄弟を眺めていた。
ピンポンパンポーン。ピンポンパンポーン。
『迷子のお知らせです。迷子のお知らせです。ネズイチアカルちゃん、ネズイチアカルちゃん。保護者さまが二階サービスセンターにてお待ちしております。繰り返します…』
保護者が迷子の放送が流れ、目の前では水槽の中を大小様々なスライムが流れている。元々、魔物から栽培され作られたペット用スライムを眺めて団子兄弟は二人で、あーだ、こーだと言って笑っている。楽しそうだ。
「なんだーなんだー浮かねー顔して」
ソファーに背を預けた智盛が隣に座る芯に話しかける。芯はソファーの肘掛に肘を乗せ、その手の平に顎を乗せ携帯を触りながら、ぼーっとしていた。
「…僕らは罰で此処にいるんだよ。浮かない顔にもなるでしょ」
淡々と芯が言葉を返し。
「すまねーな」
智盛が軽く笑いながら返す。
「で?君は反対に嬉しそうだけど」
「だって!杏華だぜ杏華!」
にかーっと笑った笑顔は本当に嬉しそうだ。
「良かったね」
「おう!」
芯が身を伸ばし智盛を見る。
「……すぐに会えるわけじゃないのに?」
「生きてりゃ良いんだよ」
真剣な声で智盛は呟き、ふと思い出したように言う。
「あと、もう場所も分かるし会いようがあるからな!やっぱなあ。外にいたんだなー」
「じゃあ護兵になるって話は辞めるの?」
「あー散々渋られてたやつか。まあロストと言えば護兵ってのあるから…外出れるからな、あれ」
特に可でも不可でも無く街の外に出る為になろうとしていた口調だ。
「十三審や他関係者から今、通達多いよ」
芯の言葉を聞き智盛は顔を顰めた。
「抱け抱け、うるせーのか…」
「一部、容器での子種提供でも良いとはあったけどね」
「げー」
「仮に全部に提供すれば智盛は将来、遊んで暮らせるぐらいは手に入るけど」
「そもそもで撒き過ぎは十三審が許さねえだろ」
「まあね」
「…ガキを道具にするって分かってて誰がやるかつーの」
「君の腹違いの兄弟は、するかもね」
「…一度も会った事ねえ兄弟とか意味わかんねー」
すぅっと芯は息を吸い訊く。
「…仮に杏華ちゃんと一緒になるとしたら…?」
智盛はピクリと眉を上げ。
「あー…杏華が求めない限りは…まあ、さ……俺みたいに運良く杏華とか芯とか、そこの団子共とか?まあ…気の許せるのに会えるか分かんねえ人生背負わすのはなあ…」
それを聞き芯は、じっと智盛の金色の瞳を見た。
「…もしも背負う人生がなければ?」
芯の碧眼を見返すと智盛は歯を見せて笑顔になった。
「杏華の子供は全員最高!」
「笑うから」
芯が苦く微笑む。
団子兄弟がスライムを買うのを決めたらしい。会計に向かっている。
「…その内さ、また三人で遊んでみたいね」
「だよなー!!」
ぱあっと明るくなる智盛に芯も笑っていれば手で軽く弄っていた携帯が鳴った。画面を見れば畑先生の文字。
「…畑先生からだ」
画面押して出る。
「はい。雉羽です……今は三階にいます……ええ。そうですか、ありがとうございます」
会計を終えた団子兄弟に目を向け。
「はい、すぐに。それでは、のちほど」
電話を切ると芯が言う。
「畑先生がご飯をごちそうしてくれるって」
「えっマジ!?」
智盛の瞳が輝いた。
「二人もおいでー地下に行こうか」
芯が帰ってきた団子兄弟に呼び掛けると二人は両手を上げて返事をした。
「はーい!」
「はーい!」
「焼肉~」
「寿司~」
目の前の三人は、きゃっきゃっしている。
「王様の道楽、ラーメン屋だよ」
ふと芯は団子兄弟が音声機をお互いの耳にして片方ずつ聴いているのを歩きながら聞く。
「真剣に二人は何聴いてるの?」
「「ニュース!!」」
「お前ら聞かなそうなのにな」
「こらー!このやろー!」
「偏見~!」
笑顔で中指を智盛に立てた後、二人は意気揚々と語りだす。
「ほら重要項目と何時オイラ達出会うか分かんないじゃん?」
短髪栗毛の団子が真剣に言う。
「おー」
智盛が軽く返事をし。
「野生スライムでの、おなごアオカン情報とか!」
金髪サングラスも真剣に言う。
「ねえよ!!」
智盛が突っ込みを入れた。
短髪栗毛の団子が、トントンっと指先で自分側の音声機を突いて笑う。
「史上初の大渋滞みたい」
「げっ、やべーの?」
「ヤバい」
「ちょーヤバ」
団子兄弟が自分の頬を両手で挟み可愛らしく言う。
「えー…」
「なんと推定、待ち時間、五時間待ち!」
「うわー…」
「これから増える可能性大!」
ニコニコとニュースの情報を智盛に伝える団子兄弟。
「お前ら嬉しそうだな」
そんな中、共に歩きながら団子の情報で携帯を見ていた芯が足を止めた。
「…僕、ちょっと用事できた」
「は?」
芯が何やら見ていた掲示板を閉じると三人に笑顔を向けて。
「親の関係で呼ばれたから、ご飯は僕抜きで食べてほしいな」
そう言ったのだった。
*
その日は出勤してから妙に忙しい日だった。
夜勤組の死体処理係の面々は普段と違い最初から入っていた依頼に動き出す。
『人が死んでいる』
何度目かの通報に駆け付け出会う死体、死体に眉を寄せる。出会う死体は何故か、どれもこれも食いちぎられて死んでおり生前の判断が難しいものだった。出来るだけ身を調えて袋へ詰め大型の専用の車に乗せていく。
「おそうじクン残りは頼んだ~」
近くにいる、自立型生活補助機械おそうじクンの背中をポンポンっと叩き掃除を託す。散らばった肉片や血液、脂等を綺麗に処理してもらうのだ。最初は事件性の為に、一つ一つ調べようと彼ら以外の自警団が出て来ていたが今では処理が全く追いつかず仕方なく作業効率を重視している。
「この箱も、いっぱいじゃん」
「じゃあさジャンケンして勝った方が片方組が、この三台分の車、処理場等に持って行って二時間休憩してくるって感じにする?」
「休憩!休憩させて~晩御飯食べたい!」
「負けた方は帰ってきてから交代して二時間休憩って事で」
「ハイ!じゃあ、じゃんけーん!ぽいっ!」
巨大長車が三台流れて去っていく。二台残った一つは普段の司令塔兼、休憩場所なので使わず、一台に出来るだけ詰める予定だ。
「イチがジャンケンで負けるとか初めて見たかも」
「わかる。勝負事、強いもんな」
「言い出しっぺの、お前らは負けて良かったのか」
「あ~?勝ちたかったに決まってんだろ~!」
「何故、輝かない俺の黄金の右手!」
「今日は休暇中ですの!?」
「……まあ、あの処理の山だ。渋滞含め最悪帰って来ないだろうし、お前ら二人先に休憩取ってこい」
「「えっ」」
ショックを受けた顔をする二人。
「餡包は酢漬胡瓜多めで三人前位買って巨大長車に入れといてくれ」
「マジですか……」
「一人でやんのか……」
「いや食って厠に行ったら帰ってこいよ」
「仕方ねーなぁ」
「買ってきますよっと!」
「おう、後でな」
死体の腐臭で店に入る事は極力避ける彼らは自動販売機で餡包を大量に買い。公園の駐車場に止めてたらふく食べて、またイチと合流した。
「食ったのに元気ないな、お前ら」
「いやぁ……」
「なあ、イチ死体って動いたりしたか?」
「はぁ?」
「休憩かねて情報探してたわけよ俺ら」
「いやさーこれ見てみろって」
通信機器の画面を見せてくる二人。
「最後ら辺は映画の話題しかしてないんだけどさ今になって、これが上位に上がり出して見てみたら……」
「なんか、ガチっぽくねえ?」
「……」
無言イチは死体を詰めた巨大長車に近づき扉を手の甲で、ガンガンガン!っと叩く。
「……音はしないな」
いきなり乱心したイチに目を丸くした二人だったが意図がわかりハッとする。
「今の所は生き返ってはいないみたいだが一応、防具と武器を装備するぞ」
そう言って休憩用の巨大長車に入り、三人は各々、日頃から形式的に支給されている防具や武器類を確りと身に着けた。
「お前らって壁の外での経験は?」
「ない……」
「です……」
「わかった。流石に今日の異常な死体の量は可能性がある。俺達が片付けたのは、どれもこれも損傷が激しいものだった。その為に変化していないだけなのか単純に遅いか、または、ただの塊か」
「おお……」
「頼もしいなイチ」
「とりあえず片付ける事を続けるか止めれるか上を促してみる。今は周りに警戒しながら処理を進めてくれ。そこの公園で食って厠行ったら帰ってくるから」
「はい……」
「ガンバリマス」
「何かあればサイレント外して空に一発撃ってくれ」
「ういっす」
「うっす」
イチが公園で厠を済ませると少し遠目で恋人同士が絡んでいるのが見えた。その前を猫の獣人らしき者が眺めながら通り過ぎていく。
「……はあ。リサに会いてえなあ」
感慨深げに夜空を一瞥して車に戻り飯をガツガツと食べながら別れた組と上司に電子の連絡通知を送る。食べ終わってから電話をかける予定だ。一人前を食べた頃、電子機器が鳴り応答する。
「はい、こちら処理係」
『生きていたか今は何人だ?』
「……テリーとカトウ、俺を合わせて三人です。他は三台分の荷物を輸送中」
『よし、死体処理は、もういい!それよりも最重要任務を命じる』
「任務とは」
『今、モール付近に有能な聖龍者様がいる。その方を、お守りしろ』
「末端の汚れた係に、まるで優秀な護兵の仕事をさせるんですね」
『とにかくだ、お前の読み通り屍呪者ならば浄化できるのは聖龍者のみだ。わかるな?』
「……了解。全力を尽くします」
 




