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【書籍化】幼馴染彼女のモラハラがひどいんで絶縁宣言してやった  作者: 斧名田マニマニ


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図書館デート(前編)

 数日後の土曜日は、六月だというのに珍しく澄み渡った空が広がった。

 待ち合わせの時間は、十一時。

 平日と同じ時間に起きてしまったので、食パンを焼いて軽い朝食を食べ、のんびりしたくをした。

 それでもまだ時間がかなり余っている。


 せっかく天気もいいし、早めに家を出ようかな。

 待ち合わせ場所の駅まで散歩がてら歩けばちょうどいい時間になるはずだ。


 平日休みの両親はどちらもすでに仕事へ出かけたあとなので、いつもどおり鍵を持って家を出る。

 玄関前で施錠をしていると、不意に悪寒がした。

 こんなこともう三度目だ。

 うんざりしながら振り返ると、意外にも花火の姿はなかった。


「あれ……。今度こそ気のせい……?」


 まあ、そうだよね。

 あれだけしっかりと突き放したし。

 そのうえでさらに付け回したりしたら、もうストーカーと変わらない。

 いくらなんでもそれはないはずだ。


 誰もいないのに視線を感じるなんて、被害妄想も甚だしい。

 やれやれと息を吐き、駅に向かって歩き出す。


 俺が駅の改札についたのは、待ち合わせ時間の三十分前だった。


「えっ」


 信じられないことに、もう雪代さんがいる。

 噴水の縁に腰掛けた彼女は、いつものようにカバーを外した文庫本を熱心に読んでいた。


 学校にいるときは違い、ふわりとしたセミロングの髪を肩まで垂らしている。

 ちょっとダボっとした白いロングワンピースが、色白の雪代さんにはとてもよく似合っていた。

 制服姿の時以上に、彼女の魅力が引き立っている。

 シンプルなのに個性的で、好きなものを選んで傍に置いている感じがした。


「雪代さん」


 駆け寄りながら声をかけると、驚いたように顔を上げた。


「あれ! 早いね、一ノ瀬くん」

「雪代さんこそ」

「えへ、実は緊張して早く来ちゃったの」


 はにかんだ笑みを浮かべながら、「よっ」と言って彼女が立ち上がる。

 文庫本は斜めがけにされた帆布バッグの中にしまわれて、代わりに革のパスケースが取り出された。

 持ち物の全部がおしゃれで、しかもちょっと大人っぽい。

 雪代さん本人は、どちらかというと童顔なタイプだからギャップを感じた。


「前から思ってたけど、雪代さんっておしゃれっていうか雰囲気があるよね」


 思ったことをそのまま伝えたら、彼女は一瞬で真っ赤になってしまい、「そういうことを平気でいう一ノ瀬くんのことが私は結構怖い」と睨まれてしまった。

 褒めたのにおかしいな。


「それじゃあ行こうか。はい」


 俺が手を差し出すと、雪代さんはきょとんとした顔で首を傾げた。


「えっ。え……!? い、いいの!?」


 なんでそんなに慌てるんだろう。

 不思議に思いながら手を差し出したまま待っていると、その手をおずおずと雪代さんが握ってきた。


「え!?」


 今度は俺が驚きの声を上げる番だ。

 だって、なんで、手を繋がれたんだろう!?


「わ!? うそ、私間違えた……!?」


 慌てたように彼女がパッと手を放す。

 また首まで赤くなってしまった雪代さんが、「もうやだ、恥ずかしすぎて死にそう」と言いながら頭を抱えている。

 それを見て、俺が間違えたことに気づいた。


「なんかごめん……」

「……ううん。あの、でも、一ノ瀬くんの手って……どういう意味だったのかな」

「荷物持とうと思って」

「荷物……。私の……?」


 信じられないという顔で聞き返されて、確信を持つ。

 しまった。

 やっぱり俺が間違えたんだ。


 花火は会った瞬間、俺に荷物を押し付けてきていたし、それに街中でも彼女のバッグを持ってあげている彼氏を時々見かけることがあったから、それが普通のデートスタイルなんだと思い込んでいたのだ。


「荷物は持たないほうがいいんだね。わかった。気をつけるね」

「ううん、私こそ勘違いしちゃってごめんね」


 お互い何とも言えない恥ずかしさを抱えながら目を合わせた。

 数秒後、どちらからともなく笑ってしまった。


「ぷっ……あははっ。だって一ノ瀬くんずるいよ……。あんなふうに手を差し出されたら、勘違いしちゃう……あはは!」

「ふっ、ははっ。だよね。よくよく考えれば、荷物を持ってあげてる彼氏より、手を繋いでる人たちのほうが圧倒的に目にする確率高いし。これからは気をつけます。あ、でも、雪代さんがバッグ持ってもらいたいタイプなら俺全然持つけど」

「こーら、一ノ瀬くん。好きでもない女の子を甘やかしすぎるのは、メンヘラ製造機になる危険があるからだめだよ」

「そ、そうなの?」

「うんうん。それに私はバッグ持ってもらうより、手を繋ぐほうがうれしいよ」

「なるほど」

「……」

「……」


 俺たちの目がぎこちなくあう。

 雪代さんの瞳が何かを期待しているかのように、一瞬だけ俺の右手に向けられた。


「……手、繋ぐ?」


 せっかくデートに誘ってくれた雪代さんが少しでも喜んでくれるなら。

 そう思って尋ねてみたら、彼女は両手で口を覆って「うれしい……」と呟き、その場にしゃがみ込んでしまった。

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