告白
大道寺絵里花は親まで呼び出されて、こっ酷くしぼられたらしいが、それでもSkypeでやりとりしていた相手の名前は上げなかったという。
今回の件を唆した相手がいるからって大道寺絵里花の罪が軽くなるわけではないけど、彼女が共犯者を庇うタイプには思えなかったので、担任経由でその話を聞いて少し驚いた。
大道寺絵里花は花火に何か弱みでも握られていて、名前を出せないのだろうか?
うん、大いにありえる。
花火は先の先まで考えて行動するタイプだし、自分が不利になるような展開を避ける術を幼少期から身につけている。
大道寺絵里花の嘘がバレたときのことだって想定してあっただろうし、それを見越して、先手を打つぐらい絶対にするはずだ。
担任は、大道寺絵里花が共犯者を吐きそうにないので、今度は俺を呼び出して大道寺絵里花がやりとりしていた相手を教えて欲しいと言ってきた。
もちろんそれは丁重にお断りした。
俺が仕組んだ罠や、大道寺絵里花の裏にいた花火の存在について明かせば、確実にややこしいことになる。
罠に嵌めた事実を知れば、この担任のことだから、大道寺絵里花のついた嘘まで疑いかねないと思うし。
正直この人は教師としても、大人としても信用ならないし、今回の一件で花火がしたことへの対処を任せる気にはなれなかったのだ。
まあ、最悪、学校側が本気で調べれば今回のskypeをしていた相手が俺だったことくらいはバレかねないけど、そこから花火にまで辿り着く道に繋がっていない。
そもそも、花火をどうするべきか決める権利を持つのは、担任でも、俺でもなくて、本当の被害者である雪代さんだろう。
そう考えていた俺は、その日の放課後、雪代さんに話したいことがあると声をかけた。
彼女は少し目を見開いてから、こくりと頷いた。
多分、俺の様子から、何か深刻な話なのだとは勘付いたのだと思う。
クラスメイトたちからいじめ事件が解決した記念にみんなで遊びに行かないかと誘われたけれど、今回は断り、雪代さんと学校の近くにある公園に向かった。
遊具が申し訳程度に設置された夕暮れの公園には、雪代さんと俺以外誰もいない。
滑り台の向かいに木のベンチが二つあるけれど、そこに並んで座るのはなんとなく恥ずかしかった。
雪代さんはブランコに近づいていくと、「懐かしいな」と言って腰を下ろした。
もしかして空気を和らげようとしてくれている?
そう気づいて初めて、自分がどこか緊張していることに意識が向かった。
俺はこれから花火との間にあったことを雪代さんに打ち明けようと思っている。
責任逃れの言い訳になりそうだから、黙っておきたかったというのが本音だけど、巻き込まれた雪代さんにはちゃんと伝えるべきだ。
それが数日悩んだ末に俺が出した答えだった。
「雪代さん、前に少し話したけど……今回の大道寺絵里花の件は、俺を恨んでる人が仕向けたことだって言ったの覚えてる?」
「うん……」
「その相手について話したいんだけど、聞いてくれるかな」
「……! も、もちろん。でも一ノ瀬くん、話したくないんじゃ……」
ブランコに座ったまま、雪代さんが気遣うように俺を見上げてくる。
俺は「話しておかないとだめだと思うんだ」と返した。
雪代さんが言葉を探して口を開きかける。
きっと彼女は俺の気持ちを最優先してくれようと考えている。
その優しさが俺に勇気を与えてくれた。
「すごく情けなくて、引かれそうなんだけど……」
俺は花火との関係、モラハラを受けていたこと、そしてそれが耐えられなくなり絶縁したこと、今の花火が向けてくる歪んだ感情についてすべてを打ち明けた。
「ーーだから、本当に今回の件は俺の責任なんだ。雪代さん、ごめん。巻き込んでしまったこと、どう償えばいいか……」
「違う……! 一ノ瀬くん、なんにも悪くない……」
髪が乱れるほど頭を振って、悲痛な声で雪代さんが叫ぶ。
心底苦しそうな彼女の顔を見て、俺はハッとなった。
雪代さんは目に涙をいっぱい溜めていたのだ。
「一ノ瀬くん、辛かったよね……。気づいてあげられなくてごめんなさい。私、君の何を見ていたんだろう……。もし私が勇気を出して一ノ瀬くんに話しかけてたら、一人きりで辛い想いをさせなくて済んだのに……」
雪代さんはブランコから立ち上がると、俺の目の前まで駆け寄ってきた。
「私、一ノ瀬くんのことを助けてあげたかった……。ごめんね」
ぽろっと一粒の涙が、彼女の頬を伝った。
「……雪代さん、どうして泣くの」
びっくりしてそう問いかけることしかできない。
そんな俺を濡れた瞳で見つめながら、彼女は言った。
「あなたが苦しんでたことに気づけなかったことが悔しくて……。だってね、私、一ノ瀬くんのことがずっと好きだったんだよ」
私が読みたい幼馴染ざまぁを書いてみました
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