黒幕、捕まえた
放課後。
俺と雪代さんと蓮池は、校舎の裏にある花壇の前に集まって、今回の一件について話し合った。
ここなら通りかかる生徒もいないし、クラスメイトの目を気にする必要もない。
実をいうと、帰りのホームルームでさらに困惑するような出来事があり、クラスメイトたちも最早、味方と言い切れる状況ではなくなってしまったのだ。
ホームルームで、担任は一枚のプリントを配りながら言った。
「先ほど雪代さんとお話させてもらいましたが、雪代さんは苛めをしていないと言っています。でも、それで終わらせるわけにはいきません。学校には雪代さんがいじめをしたという手紙が届いているわけですからね。ということで、先生はみんなから力を借りたいと思います。今配った用紙を見てください。そこには今回のいじめに関するいくつかの質問と、自由欄が印刷されていますね。さあ、そこにみなさんが知っていることを書き込んでください。朝のホームルームでも言ったとおり、今回の事件が解決しなければ、林間学校は中止です。そのことを踏まえたうえで、他人事だとは思わず、しっかり協力してくださいね」
そんな言い方をすれば、雪代さんがいじめを認めなかったから、林間学校が中止になりそうだというふうに聞こえかねない。
現に「なんで関係ない私たちが巻き込まれるの」という非難の言葉が囁かれたりもした。
担任の行動によって、どんどん状況が悪化しているようにしか思えなかった。
残念だけど、この担任はまったく頼りにならないな……。
今回の件は、自分たちだけの力で解決させるしかなさそうだ。
まずその意見を伝えると、蓮池も同感だと頷いてくれた。
「いじめに無頓着な教師もどうかと思うけど、でもあの担任みたいなパターンも問題だな。あいつがしてることって、間接的な雪代さんいじめだよ」
蓮池の言うとおりだ。
「ごめんね、ふたりとも。こんなことに巻き込んじゃって……」
「雪代さんは何も悪くないよ。わかっていることから情報を辿っていけば、誤解や濡れ衣も必ず晴らせるから、安心して」
「うん、ありがとう……」
まだ元気はないけれど、雪代さんは少しだけ微笑んでくれた。
一刻も早く彼女を心から安心させてあげたい。
「それじゃあまず、手紙について担任が言っていたことを教えて欲しいんだ。差出人は誰だかわかる?」
「うん……。大道寺さん本人だって……。しかも二通目の手紙は、家庭訪問をした時に直接手渡されたらしいの」
「なるほどな。被害者本人が雪代さんの名前を出してるせいで、分が悪くなっちゃったんだろうな」
顎をさすりながら蓮池が呟く。
でも第三者の告発じゃないなら、思っていたより簡単に解決させられるかもしれない。
雪代さんがいじめの加害者にされてしまったのは、大道寺絵里花の誤解か、もしくは雪代さんの思い当たらない理由で、大道寺絵里花が雪代さんにいじめられていると思う何かがあったか。
どちらにせよ、大道寺絵里花から話を聞けばいいだけだ。
「今から大道寺絵里花の家に行ってみようか。住所ならクラス名簿に載っているし」
俺がそう提案すると、緊張した面持ちで雪代さんが頷いた。
「あのね……私は大道寺さんをいじめてないって言ったけれど、ちょっと不安になってきたの。もしかしたら私が知らないうちに、彼女を傷つけてしまったのかもしれないって……。話したこと一度もないけど……。それでも可能性はゼロじゃないし……。だから、私が何かしちゃったなら、直接謝りたいって思ってたの……」
話したことが一度もないのに、いじめられたと相手が訴えるような事態になるだろうか?
ただ、今はまだ雪代さんの優しい言葉を否定してあげられるだけの情報がそろっていない。
とにかく、大道寺絵里花に会わなければ――。
そう思って、大道寺の家を尋ねたのだけれど、なんと俺たちは門前払いを食らってしまった。
しかもインターホンで対応したのは、大道寺本人だった。
『帰って下さい。いじめてないって言ってることは先生から聞きました。でも私は毎日あなたに言葉の暴力を振るわれてましたから』
「え……」
『さっさと認めて、クラスメイト全員の前で謝って下さい。それ以外では許す気ないんで』
威圧的な口調で吐き捨てるようにそう言うと、大道寺はインターホンを切ってしまった。
茫然としている雪代さんの後ろで、俺と蓮池は顔を見合わせた。
明らかにおかしい。
なんでクラスメイト全員の前で謝ることを要求したりするんだ?
そこに大道寺自身はいないのに。
雪代さんは一体だれに対して謝罪すればいいんだ。
いったい大道寺は何がしたいんだ……?
不信感を募らせながら考え込んでいると、なぜか急にぞくりとした寒気を覚えた。
これはカラオケボックスの前でも感じたあの感覚だ。
急いで背後を振り返ると、路地の曲がり角にサッと消える影が見えた。
視界に映ったのは一瞬だけだったが、あのシルエットは間違いない。
「ごめん、ちょっと待ってて!」
俺は二人にそう言い残し、勢いよく走りだした。
路地を曲がると走り去ろうしている後ろ姿が見えた。
どんどん距離を詰め、ついにその腕を掴む。
「……っ」
強引に引き留められた相手はハッと短く息を吸って、こちらを振り返った。
心の底から人を見下した笑顔は相変わらず。
そう、俺の目の前で息を切らしているのは花火だ。
「花火、ここで何してた?」
「それ答える義務ありますかぁ、先輩?」
数秒前、花火の後姿を見た瞬間に浮かんだ閃きが確信に変わっていく。
大道寺のいじめ問題、どうやら花火が絡んでいるようだ。
そうでなければ、こんなところで偶然出くわすわけがないし、何より面白がっているような花火の態度が顕著に語っている。
「そんなことより、どうしちゃったんですか。必死に追いかけてくるなんて。他人になるなんて言っといて、私のいない生活の寂しさに、もう耐えられなくなっちゃったんですかぁ? 先輩ったら仕方のない人ですねえ。でも、私はとぉっても優しいので、謝ってすがってきたら許してあげなくてもな――」
「あ、それはいいや」
「ふえっ……」
「用件だけ聞くよ。――うちのクラスで今、いじめ騒動が起きてるんだけど、花火、関わってるんだよね?」
花火の目を真っ直ぐ見たまま問いかけたら、彼女の口元がヒクッと歪んだ。
「な、ななななんのことです? あははー」
逃げるように逸らされる視線。
それだけでも答えになっている。
俺の予想どおり、やはり花火が裏で糸を引いていたようだ。
さて、どうしてくれようか?
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