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第三章:騒がしい夕食

「・・・・着いたわよ。飛天」


店の前で到着すると隣で眠る飛天の肩を叩く。


ロンドン郊外にある小さな店で偶々みつけてから月に何度か食べるようになったスペイン料理屋。


「・・・着いたのか?」


低い声で答える飛天。


「えぇ。だから起きて」


「・・・・分かった」


飛天は眠たそうに瞳を擦りながら車から降りた。


いつもは無表情の鉄仮面だが無意識に見せる仕草などは子供のように可愛らしく暗黒街の者たちからは密かに笑い種にされている。


「ここはパエリアがお勧めよ」


私は眠たい瞳の飛天の腕を掴んで店の中へと入った。


「おぉ。シンシアじゃねぇか」


中に入ると店の主人が出迎えてくれた。


今年で60になると聞いているが髪も豊富で身体着きも丈夫だから10歳くらいは若く見える。


ちなみにシンシアとは私の人間界での偽名だ。


「今日は珍しく男連れかって・・・・・・・伯爵様じゃねぇか!!」


主人は飛天の顔を知っているのか閉口した。


「・・・・ん?何だ。お前の開いている店だったのか」


飛天は主人の顔を見ると小さく言った。


「は、はいっ。あの時はお世話になりました!!」


主人は頭を下げた。


「知り合いなの?」


「・・・・昔、仕事で助けた」


「はい。命を助けてくれて更に仕事まで与えてくれた伯爵様は俺の恩人だ」


胸を張る主人に私は淡々と命令した。


「それは分かったから、パエリアを作って」


「何だよ。その命令口調は?」


明らかに不快な表情をしたが文句を言いながら厨房へと消えた。


「さぁ、私たちは席に座りましょう」


私は適当なテーブル席に飛天を座らせた。


飛天は席に座るとセブンスターを彫刻の入ったジッポライターで火を点けた。


「相変わらず良いライターの趣味してるわ」


飛天の使っているライターはデザインも使い易さも良くて多くの者たちが真似て使っている。


私も真似て彫刻の入ったジッポライターを使用している。


私もセーラムを取り出したが生憎の空だったので飛天のセブンスターを貰う事にした。


ジッポライターで火を点けて煙を肺の中に入れると少し鈍い痛みが走ったが気にせず吸い続けて余った煙を吐き出した。


セブンスターを吸い終える頃に主人がパエリアを持って来た。


「お待たせしました。伯爵様」


「ありがとう」


礼の言葉を出す飛天。


癖なのか飛天は注文した物を出されると礼を言う。


普通は礼を言うものなのか分からなかったが、律儀な飛天なら納得できた。


「ありがとうございます。伯爵様」


主人は嬉しそうに頭を下げて厨房の中へと戻って行った。


そして互いにスプーンを持って皿に分けて食べようとした時に窓ガラスが割れて銃弾が入って来た。


私と飛天は直ぐにテーブルを引っ繰り倒してバリケードにした。


「せっかく夕食をしようとした時によくも邪魔してくれたわね」


苛立った声を出してパイソンを取り出す。


「せっかくの料理が台無しだ」


飛天も不機嫌そうな声を出してモーゼルを取り出した。


「・・・・何人かしら?」


「・・・5、6人・・・・いや、9、10人だな」


鳴り止まない銃声の中で私たちは敵の人数を確認していた。


「加勢しますぜ!伯爵様!!」


主人がショットガンを持って駆け付けて来た。


「おぉ。サンキュウ」


飛天は気さくに笑いながらテーブル越しに敵に発砲し主人と私も続いて発砲した。


激しい銃撃戦が繰り広げられる。


周りは民家などが無い事から迷惑も掛らないと思いながら私は敵が乗って来た車のエンジンを狙って発砲した。


二、三発当たるとエンジンから火が吹き車は爆発した。


車の近くにいた敵も巻き添えを食らったが悲鳴一つ上げなかった。


「・・・・・何か怪しいわね」


“普通”の人間なら悲鳴の一つや二つ上げる。


しかし、彼らは悲鳴を上げない。


答えは二つ。


一、薬物か何かで口が聞けない。


二、彼らは人間じゃない。


「まぁ、どっちでも良いわね」


私は残りの二発で敵の脳天に銃弾を撃ち込んで二人を仕留めた。


「奴ら何者かしら?」


殻になった弾を取り出し新たに弾丸を交換した。


「さぁな。ただ“普通”じゃない」


飛天も感づいていたのか新しいマガジンを取り出しながら答えた。


「そう言えば、近頃ですが貧民街の奴らが居なくなってるって聞きました」


ショットガンを撃ちながら主人が言った。


「って事は奴ら貧民街の奴らか」


モーゼルを撃ちながら飛天は主人に聞いた。


「えぇ。恐らく・・・・・・・」


確証はないと言っている顔だった。


「何の為かは知らんが使い捨て、というなら良い考えだ」


飛天は冷静な口調で言うと最後の敵を仕留めた。


確かに貧民街の奴らを使えば足は着き難い。


はした金を握らせれば良いだけだ。


捜索願いを出す家族も居ないから死んでも誰も分からない。


使い捨てとしては実に都合が良い。


「・・・・・何もんかは知らんが喧嘩を売って来たんだ。手加減はしないぞ」


誰に言う訳でもない飛天の言葉。


その後は主人に店の修理代とパエリアの料金を払って飛天と別れる事にした。


一体、誰がこんな真似をしたかは分からないけど、少しは退屈しのぎが出来そうで私は帰り道で薄らと笑みを浮かべた。


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