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その0

長らくお待たせしました。(待ってない。)

 ここは何処でしょう?周りを見渡しても見えるのは一面の白では無く(・・)、六畳一間の一室。南向きの大きな窓にはベランダが付いていて、その窓と反対側には玄関へ通じる廊下と一体となったキッチンがありますね…。

 あ、多分廊下にあるあの扉は水回りが集まっているのでしょうか?


 冷静に考えましょう、私。


 第一に、私は死にました。はい、これは確かなはずです。

 だって心臓が止まった感覚を、私は今この状況でも確実に覚えているのですから。


 第二に、前述の事を考えるとここは死後の世界ってことですかね。それにしては、些か庶民じみていると言うか、日本に存在するアパートの一室みたいな印象ですね。


 第三に、…。特に何も無いですね。いや、あるはずです。考えなさい、私。格好つけて、第なんとかって続けたならば、何とか捻り出すのです私!!


 …。無いですね。これぽっちも思い浮かびませんね。

 相変わらず残念な頭ですね、私。なんか悲しくなってきましたが、そんな事はいいでしょう。今は、状況を打開すべき案を出すのが先決です。


 さて、改めてここは何処でしょう?死後の世界なら、そろそろ神様とか出てきてもいいんですよ?

 …。

 出てきていいんですよ!!

 …。

 えー…。ここは、出てくるとこでしょう?あれですか、放置プレイですか?神様のくせに、生意気ですね…。

「神様に向かって、それはどうなんだい?」


 お?やっと登場ですか。いい度胸ですね?さて、遅れてきたあなたはどちら様…。

「あーうん。一応神です。」

 …。

「ん?えと、どうしたの?」

 かわわわわわわわわいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!

「うるさいね。何、急に叫んじゃって?」

 ショタですよ!!ショタっ子ですよ、皆さん!!

「皆さんって誰のこと?ここには僕と君しかいないけど?」

 ?皆さんとは、不特定多数の人を指す言葉ですよ?


「知ってるけど…、え?これ僕がおかしいの?」

 うふふ。可愛いですね~。おねぇちゃんって呼んでいいんですよ?

「いや、呼ばないけど。」

 んんんんん~。そ、そうですよね~、急にデレてはくれないですよね。

「え、なんで私分かってますよみたいな顔してるのこの人?怖いんだけど?」

 うふふ。大丈夫ですよ。おねぇちゃん、分かってますから?


「…。もういいや。」

 な?!諦めたらそこで試合終了ですよ!昔の偉い先生も言ってましたよ。

「何その優しいけど時々年下を諌めてくるおねぇちゃんムーブ。」

 おねぇちゃん来ましたーー!!いえ、おねぇちゃん入りました!!

「もうやだ。」

 で?ここは何処なんですか?神様。


「…。えと何?この代わり身の速さ。」

 おねぇちゃんが聞けて満足しましたので、話を本題に戻そうと思いまして。

「…。はい。じゃあ、説明するね。」

 ジト目が私に暴走を促しますが…、はい、続けてください。

「…。あなたは死にました。」

 はい、知ってます。

「ここは、死後の世界に近い場所です。」

 はいはい。

「貴方には、異世界転生協定・特例事項第1条が適用されました。」

 伊勢…?聞きなれた部分的にあれでしょうか?ジャパニーズ忍者でしょうか?

「違います。異世界転生協定・特例事項第1条です。」

 ふむふむ。異世界転生協定・特例事項第1条とは、なんですか?


「簡単に言うと、貴女(あなた)が死ぬ間際に行った決死の善行が、神に認められたので、貴方の生きていた世界とは違う世界に、記憶を保持したまま転生をしていただくことになりました。」

 あー古典的なラノベ展開ですか…。

「…。もうそれでいいけど。」

 個人的には、元の世界に転生したいのですが?

「無理ですね。」

 ふむ。あれは、通常の輪廻転生の考えから外れる行為だったからですか?

「…。」

 沈黙は肯定ですよ。

「君は…。」

 おねぇちゃんです。

「…。」

 ジト目が、ジト目がああぁぁぁ!

「はぁ…。」

 溜め息をすると幸せが逃げますよ?

「この人は…。」


 さて、話しは大分それましたけど。

「誰の所為だと…。」

 記憶を持ったままとの事でしたが、それ以外にもらうことはできないという事ですか?

「…。いいえ。一つだけ望むモノを与えます。伝説の剣でも、超常的な能力でも、無論神だって。」

 神もですか?

「はい。ただ、神は下界、つまり今から行く場所では何も役に立たない無駄飯喰らいですので、悪しからず。」

 無駄飯喰らいですか…。

「はい。」

 

 そうですか。…では、決めました。

「何を?」

 望むモノです。

「それは?」

 私が毎日、安心安全で快眠できる宿を望みます。


「…。」

 どうしました?

「いや、てっきり僕を望むかと思ってたからね。驚いただけだよ。」

 それも考えたのですが、先程の話だとすると、私が転生する世界は所謂ファンタジー小説、と言うかゲームのような世界だと認識していますが、その認識に間違いはありますか?

「無いよ。」

 つまり、魔法もあって、魔物がいる世界という認識で良いですか?

「そうだね。君が転生するドーメナスは、君が生きていたア…、いや地球と言った方が良いかな。地球で言う中世位の文明で魔法と魔物がいる世界だ。そして、科学の変わりに魔法が発達した世界だ。」

 そうですか。ならばやはり、だからこそ無駄飯喰らいは、要らないですね。


「…。」

 意外ですか?

「正直ね。君程の能力があれば、人一人ぐらい余裕だと思っているからね。」

 趣味に生きていることを否定をしませんが、それとこれは別です。

「そう。」

 はい。


「そっか。じゃあ、続きを始めようか。望むものは、『毎日、安心安全で快眠できる宿』でいいね?」

 いいえ。()が毎日、安心安全で快眠できる宿です。

「ふ~ん。その宿は、君が自由にできる宿かい?」

 できれば。

「家、ではなく宿かい?」

 はい。

「立地は?」

 そこも決めれるのですか?

「いや無理だね。立地も決めたいと言うなら、君が望めば現れる宿にすることもできるけれど、君はそれでいいのかい?」

 

 いいえ。それでは、宿にする意味がありませんので。

「やっぱりね。君が自由にできる宿を望んだ時点で、そんな気はしたよ。」

 慧眼けいがんですね。

「神だからね。さて、望みを与えるにしても、これは困ったね。」

 その心は?

「分かっているくせに。」

 

 あら、女性とは分かっていても、口に出して言って欲しいものですよ?

「じゃあ、敢えて言うけれど、その望みは難しい。まず、宿と言う性質上利用者がいるが、それを得る為にある程度の街や村の中が良い。道の近くに、宿だけあるのは無理な話だ。例えそれが神から与えられた宿だとしてもだ。」

 利用者が、泊まるのを躊躇いますね。私ならそうします。


「ああ。従業員が君一人だけだしね。明らかに怪しすぎる。盗賊の罠を疑う。」

 ええ。

「となると、君の望む宿は街の中が良い。その方が、変な噂なんかは減るしね。」

 配慮に感謝します。

「だけど、今度はそれが問題だ。街はすでに土地に建物が立っている場合が大半だ。」

 はい。

「君が宿を手に入れて、それを君の望みに沿う形にするとしよう。だが、これも問題だ。」

 …。


「君も気付いていると思うけれど、君が既存の宿を手に入れるまでは、君の望みは叶わないんだ。それは、異世界転生協定に違反する。」

 又出ましたね、異世界転生協定。

「さらに、君の望みは幅が多すぎる。」

 幅、ですか?

「『毎日、安心安全で快眠できる宿』というのは、君の感情に左右される部分が多い。例えば、快眠だ。」

 うふふ。

「はぁ…。気付いて言っているとは思うけど、お腹が空いて君は快眠できるかい?」

 いいえ。

「汗をたくさんかいて、そのまま眠れるかい?他にも汚い部屋で、快眠できるかい?数え出したらきりがない。」

 あらあら。


「本当に厄介な望みだ。」

 褒められても何も出しませんよ。

「可愛げのない人だ。はぁ…。だから、貴方には妥協をしてもらいたい。」

 妥協ですか?

「ああ。」

 


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