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7.疑惑、教会、オルガンの音色6


その日。その界隈に住む全てが小さな礼拝堂に集ったのではないかと思えるほど。古びた教会は賑わった。

久しぶりに侯爵家の礼拝堂以外で祈りを捧げ、隣に座るキシュと目を合わせては微笑むオリビエは周囲の皆の目を釘点けにしていることにも気付かずに深い充足感を満喫していた。

こういう場所で、奏でること。誰かが喜んでくれること。

自分の音楽が、誰かを幸せにする。


ミサが終わった後、司祭に請われてオリビエは数曲を奏でた。それはどれも、いつか侯爵家の茶会で披露したものだったが、人々は嬉しそうに聞き入っていた。

老婆が涙を流し、その隣の孫が不思議そうにそれをなだめる。

薄暗いランプの明かりの中、聖母の像も優しげに見えた。


夜もふけた頃。

オリビエはキシュと一緒に司祭にもてなされ夕食をご馳走になっていた。その内容は質素なものの、穏やかな司祭の話を聞き、キシュが珍しく借りてきた猫のようにお行儀良くしているのがまた新鮮で楽しかった。


さすがに、ズレンが心配するだろうかとかすかに不安を覚え、帰ることにしたオリビエにキシュは口を尖らせた。

「ねぇ、家に来て」

それは甘い誘惑だった。

ふと酒場の様子とあの男たちを思い出す。

「それは……」

「あの曲。すごく素敵だった。これまでのオリビエとちょっと違ったよ。なんていうか、勇敢な感じ」

少女の語るのは情事の後の。今思い出せば少し気恥ずかしい曲でもある。

「キシュにあげるよ」そう言ったのも羞恥心から。

「ほんと?嬉しいよ!ちゃんと覚えているの。ね、今度楽譜にしてね。引けるようにオルガンで練習するから」

「ああ、分かった」

ここ最近の空しい仕事が、一気に熱を帯びる。

気付けば少女の歩みに沿って、あの酒場近くにいる。ちくりと警戒心が芽生える、そのとき。


「これは、楽士殿」

見たことのある、ここにいるはずのない。

「あら、男爵さま、いらっしゃいませ。今日は飲みすぎちゃだめですからね」

何故にキシュが親しげに?

どうにも言葉を作り出せないオリビエに、ロントーニ男爵はいつもどおり肩に手を回す。

「珍しいね、こんなところで出会うとは。キシュ、ちょっと用事があるんだ。彼はいただくよ」

「え?だめよ、父さんに約束したんだから、オリビエを連れて行くって」

「彼と話をするのはこの間からの約束なんだよ。悪いねキシュ」

いや、待て。

オリビエは意味を飲み込み、改めて男爵の手を解こうと。

「あの、男爵、僕は」

「さ、行こうか。聞きたいことがあるんだよ」

強引に引きずる男爵が、なぜこんなところにいるのか、キシュの家は革命家の集う噂の酒場。オリビエの想像はあのファリの【エスカル】と同じ。確かにあそこにも貴族らしき人もいた。だがあれは、あの場所は。王弟であるロスレアン公の屋敷内でもあるわけだから、おかしくもないといえるのだが。ここはエスファンテ衛兵のズレンが警戒するような下町の酒場。

ぐるぐると思い巡らせ、これはどうしたことかと思う。


男爵は。革命家と、仲間?


第八話「葦のようにまっすぐ」へ続く


******


…ここまで読んでくださって、ありがとうございます!

この作品、実はブログで先行連載しておりまして、そちらは随分進んでいます…(^^;)

折角、こちらのサイトでの読者さんがいらっしゃるから、こちらでも連載をと思ったのですが、何しろ長い作品ですし、コピペだけでも大変…

同時に「蒼い星」も連載しているので…(蒼い星シリーズは、この「小説家になろう」だけの公開なので、頑張って続けています♪)

ということで。

お叱りを覚悟の上、このサイトでの連載はここまでにさせていただきます(><)

ごめんなさい〜。


ブログ「聞いて聞いて、聞いて」の方で連載しておりますし、多分、あちらの方が読みやすいと思います。


あとがきにリンクを貼っておきますので…続きをブログで読んでくださると、嬉しいです〜

わがまま言ってすみません!

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