隠していた気持ち。
西嶋さんと並んで和装の写真を撮る。洋装も和装も一枚ずつ、西嶋さんとの写真を撮ってもらえるなんて夢みたい。
「はい。見つめあってー。」
機材を片付けていたはずのカメラマンさんがカメラを構えていてビックリ。
言われたとおり、向かい合って、西嶋さんを見上げると目が合った。
シャッター音が小刻みに聞こえるなか、涙が頬を伝うのを感じた。どうして?青山さんのときは平気だったのに。
「だ、大丈夫ですか?」
西嶋さんが心配そうにのぞき込んだ。
勝手に出てきた涙は、私の本当の気持ち。憧れ、ファン。小説のネタ。そんな都合のよい言葉でごまかして、気づいていないふりをしていただけ。西嶋さんへの気持ちは、恋だと認めざるを得ない。それは見つめあった瞬間にあふれ出た。胸の痛みの理由に気づいてしまった。
夫の吾郎のことは変わらず愛しているし、家族は大事に思っているからこそ、認めたくなくて、後ろめたくて、抑えていた気持ち。
でも、ここでおしまいにしよう。花嫁さんにまでなって、恋愛ごっこを楽しめたんだから。
「いえ、何でもないです。すみません。」
涙をそっと拭って微笑んでみせる。
「やっぱり無理させちゃいました?」
まだ心配そうに西嶋さんが言う。
「大丈夫です。」
そう言うと、西嶋さんがそっと頬に口づけをした。ビックリしてまた涙が頬を伝う。
「すみません。七瀬さんがあんまりキレイだから…。」
目を逸らし気味に言う西嶋さんは、手で赤い顔を覆っている。そんな言葉、私にはもったいないと思う。
本当はいけないことなんだけど、西嶋さんのことを考えている間は本当にドキドキしたし、楽しかった。美容院にいる、短い時間だけ女の子に戻れたから。
「おいおい。西嶋~。憧れの七瀬さんを泣かせるなよ~。」
青山さんの言葉に二人してはっとする。うわ~、気まずい。
「すみません。お疲れ様でした。では店に戻りましょう。」
「はい…。」
不覚にも涙を見られてしまった気まずさで、うつむいたまま西嶋さんと並んでしずしずと車に向かって歩く。こんな恋は、もうこれっきりにしなくちゃね。そんなことを思っていたら、西嶋さんが立ち止まった。私も一緒に立ち止まる。
「あの、七瀬さん。一度だけ、言わせてください。」
「なんでしょうか?」
顔を上げると、西嶋さんが前に回り込むようにして見つめている。何を言うつもりですか?西嶋さん?
「一度しか言いません。聞いたら忘れてくださって結構ですから。」
「はい。」
やっぱりドッキリでした~!とか言うのかしら?だとしたら、さっきの涙ってかなり恥ずかしいんですけど。全国的に笑い者決定だわ。…などとぐるぐる考えていると、西嶋さんが息を吸い込んで口を開いた。
「僕、嘘ついてました。七瀬さんに恋してました。フ、ファンなんて嘘なんです。」
私は何も言えないまま、西嶋さんを見つめていると、また涙が頬を伝った。




