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短編小説

デカメロンを飲みに行こう

作者: 及川りのせ

 この高校はどうにも冷房の効き方が不平等だ。あえぐほどの熱気に包まれた教室があれば、歯の根が合わなくなる極寒の土地もある。昼飯くらいは少しでも快適な場所でと求めた先は図書室だった。

 当たり前だが館内は飲食禁止。なるべく人目につかないところへ足を運ぶ。その途中、書架の最下段に尻だけ突っ込んだ姿勢でC組の歌代が座っていた。膝の上で器用に教科書を広げながら。「あっ」と飲んだ息の音に彼女は顔を上げた。

「あっ」

 目と口を同じ丸にして開けている。それからおいでおいでと俺を手招きをした。

「三神くん、デカメロン買ってきて」

 数歩ばかり近づいたところでお使いを命じられた。

「いきなりパシんな」

 自分で行けよと返せば歌代は口を尖らせた。

「ここを退いたら誰かに取られちゃう」

「誰も取らねえし」

 五歩目のところで立ち止まれば、今度はヒラヒラと手で追い返された。

「そこで止まらないでよ。風がこないじゃん」

「え?」

 歌代の視線の先には天井エアコンの吹出口があって、俺の背中に心地よい冷気が降り注ぐ。半歩横に移動すると彼女の前髪が柔らかく揺れた。

「ねえデカメロンは」

「だから自分で……」

「A組は次の時間、世界史だよね」

「そうだけど」

「抜き打ちテストがあるよ」

 教科書から取った紙切れが一枚掲げられる。それが何か、すぐに予想できた。

「デカメロンと交換で」

「……最速で買ってくる!」


 段飛ばしで階下に駆ける。学習ホールの片隅にある自動販売機で指定のデカメロンを手に入れて、同じくらいの速さでとんぼ返りした。


「走るなんて有り得なくない?」

 歌代の唇が尖り、そして黒目がちな瞳も尖る。

「中身メロンソーダなんですけど。炭酸なんですけど!」

「大丈夫だって」

「絶対振れてるじゃん」

 ないよねえ、とぼやきながらも歌代はプルタブに躊躇なく指をかけた。軽い破裂音とわずかに吹き出す白い泡。絶妙に手首をきかせて運んだから中身が爆発するわけがない。

「さあ、例のブツを」

 交換条件は抜き打ちテストの問題用紙。解答用紙と一体になっているから、テスト終了と共に回収されたはずのものだ。

「一枚余って、こっそり貰っちゃった」

「あなたが女神か……」

 間もなく始まるテストの問題用紙が、ご丁寧に解答案付きで我が手の中に。書架にはまって答案作りとは変態なのか、歌代は。

「ちなみに赤点は」

「平均マイナス五点」

「エグいな」

「歌代はどれくらい出来たの」

「八割かな」

「鬼かよ」

 歌代は平均点をグイと引き上げる側、つまり赤点も引き上げてくれる完全な敵だ。壁時計を見やると授業開始まで十分を切っていた。

 歌代が八割を獲得する難度なら、赤点回避は四割といったところか。問題用紙に目を落とす。やばい、一問目から分からない。



 教室へ戻るまでの時間も惜しくて問題用紙を凝視する。自席に着くと同時に予鈴が鳴り、和地先生が現れた。歌代からの御神託を見られるのは非常にまずい。パタリと両手で折りたたみながら、あとは祈るしかない。


 抜き打ちを告げられた衝撃が教室を駆けめぐる。一足先に知っていたとは言えそのダメージは俺にも公平に突き刺さる。問題用紙が全員に行き渡ればテスト開始だ。

 順調にペンを走らせることができたのは十問目あたりまで。折り返しを過ぎるとその先は解答案を読めておらず、さっぱり手が動かない。居眠りで受けた授業の記憶をかき分け無理やり答えをひねり出して、最後の問題だけはまたスラリと答えられたが手応えは五分五分だ。

 全五十問。授業時間の大半を使ったテストは多くの空欄を残したままで幕を閉じた。こんなの抜き打ちでやる問題数じゃねえと、隣の矢幡が机に突っ伏しうめいている。青色吐息の教室を見回す和地先生の表情は明るい。

「合格はマイナス五点までだぞー!」

 うん、知ってる。このクラスには歌代のような歴史マニアはいないけれども、平均点基準での赤点ラインではどうせ誤差しか生まれない。和地先生が教室を去り、空気がズドンと重くなる。

「俺もうダメだわ、今から赤点課題やっとくわ」

 諦めモードで矢幡が原稿用紙を広げた。「三神もいる?」と言って一枚こちらにも寄越してくる。

「……今回はギリかも」

「マジで!?」

「C組の奴に問題もらってた」

「なんで独り占めしてんだ、卑怯者!」

 今にも噛みついてきそうな矢幡の背景に、いつの間にか歌代が立っていた。


「さっきの返して」

「あ、どうも……」

 差し出した問題用紙を矢幡が目で追いかける。

「なんだ、みぎわだったのかよ。三神じゃなくて俺にくれよ!」

「だってその場にいて目が合ったから」

 ああ、確かにそうだったよな。歌代にとっては背景の一部にして冷気を妨げる壁にすぎなかった。

「ところでテストはどうだったの?」

「ギリギリかも」

 ふうん、そんな嘲りとも感心とも取れる吐息だけ残し、歌代は踵を返した。その後ろ姿を矢幡はいつまでも目で追いかけている。


「そういやあいつのこと下の名前で呼ぶんだな」

 一年の時も違うクラスだっただろう。であるから、そこまで親密である接点がすぐには見つからない。

「小さい頃から……なんとなくね。小一の終わりだったかな、みぎわが転校してきたんだよ。半年くらいでまたどっかに転校したけど。でも六年生でまた戻ってきて、そっからずっと同じ学校なんだわ」

「小学生の頃から歴史オタクだったのかな」

「好きなんじゃない。……まあ、良いやつだよ」

 ジュース一本で解答案と交換してくれるんだから、その点良いやつには違いない。顔に反比例して媚びない性格は一部の人間を惹きつけ、一部の人間は突き放す。奔放さに巻き込まれ泣きをみた人間は多々。でも今日はデカメロンを飲んで帰ろう。



 テストは翌々日に返却された。

「魚谷、68点……、山田、松木、54点……」

 毎度恒例、得点順に返される答案用紙。矢幡はどうせ関係ないしと椅子にそっくり返っている。

  40点の返却が終わってなお、俺の名前も呼ばれない。それに気付いた矢幡がやけに嬉しそうな視線を向けてくる。これはあいつと一緒に仰け反るパターンになるか……。

「三神、37点」

 グイと深く椅子に座りなおしかけたところで名前を呼ばれ飛び上がった。紙一重で助かった。そして和地先生による点数読み上げもここで終わる。

「全員で1397点かぁ。1397年って言ったら、お前らまだ金閣寺建ててるのかよー。C組はとっくに桶狭間で戦ってるぞー」

 クラスの合計点をくだらない例えに乗せ、ひとり大笑いしながら残りの答案用紙を黒板に貼り付けている。赤点組は点数読み上げをしないせめてもの情け。黒板に駆けていった矢幡が取ったのは一番最後に貼られたもの、つまり最下位だったようだ。

「こっちはふたりも欠席してたっつーの」

 赤点片手に矢幡がぼやく。ぼやいたところで平均点も赤点も変わらない。C組が戦国時代にいることだって、八割取ったであろう歌代やわずか数名の真面目による成果に過ぎないのだ。

 そして和地先生が言いわたす無情の赤点課題はいつもの通りで、原稿用紙用紙で十枚分、教科書の中身を写し書き。この写経には御利益のかけらもない。


 やっぱり卑怯者だ。

 ジロリと八幡の視線を浴びる。俺はちょっと運が良かっただけ。なんだか心地悪く、逃げるように席を立った。


「ええっと、2Aの三神だね?」

 二階と一階をつなぐ踊り場のところで副校長とはち合わせになった。一体何の仕事をしているのか、かつて授業を受け持っていた頃の担当教科は何だったのか、誰も知らない。でも職員室にこもって仕事をしているとき以外は、こうして校内中を歩き回って端から生徒に絡んでくるのだ。副校長にロックオンされたら最後、やたらに響く大声で立ち止まるまで名前を叫ばれる。

「それ、見せてみなさい」

「ハッシーには関係ないっ」

 そして絡んでくるときのノリは完全に生徒と同レベル。仕事のことは知らないけれど、愛称で呼ばれても一々咎めないユーモアの持ち主であることは分かっていた。

 俺からかすめ取ったものに副校長が目を落とす。わずかに唇を歪め、そして大袈裟にため息をついた。

「37点はないでしょう……」

「赤点じゃなかったし!」

 もういいだろう、返してくれ。引っ掴んで寄せたら真っ二つに裂けてしまった。それに構うこともなく副校長は答案の続きを舐めるように見ている。

「最後の解答、これもないなぁ」

「最後?」

 副校長が指さしたところ、一度はバツにしかけたものをサンカクに直した形跡があった。

「濁点がないよ。テカメロンになっている」

「あー」

 あー、じゃなくて。副校長の指先に額を弾かれる。

「これじゃあボッカチオも草葉の陰で泣いてるよ」

 どっちでもいいでじゃないか。どこか四角張った顔を向けられて身を固くした。

「ところで夏休みは何をしていたんだい」

 親に連れられ旅行に出る齢でもないし、かといって特別な何かを予感させるわけでもない高二の夏休みは、手間ひまかかることをするにうってつけだった。

「バイクの免許を取りに行ったよ」

 バの字が出たところで副校長の眉間に皺が寄る。

「バイクなんて! まさか乗るつもりじゃないだろうね。事故になるだろう!」

「乗りたいから取ったんだってば」

「ダメだダメだ。事故になるからやめておきなさい」

「乗る前から決めつけないでよ」

 多少のジョークや悪ノリが通じるはずの副校長がただの頭トンカチになっていた。校則にバイク禁止なんて決まりでもあったかなと思い出そうとするが、そもそも校則なんてあってないような学校だ。バイクより頭を青く染め上げた奴を放置している方が風紀も乱れる。

「そんなことより彼女でも作りなさい、高校生なんだから」

「いないって決めつけんなっ」

「いるのかい?」

「……うっ」

 彼女がいれば夏休みに暇などしていない!

 言葉に詰まった俺に副校長は追い打ちをかけた。

「ほうら、いないんだろう。彼女作れ、彼女を」

「簡単に言うけどさ、両想いになれるなら誰も苦労しないっての!」

「勘違いをするでないよ。恋は常に片想いなんだからね。片想いができないようじゃあ誰とも一緒にいられないのだよ」

 フェニルエチルアミンがどうのと畏まった講釈には大袈裟な耳塞ぎで対抗した。ガミガミ親父の雷を思わせる大声が手の平を貫通して耳穴に入り込んでくる。

「そうだ、図書室にあるからデカメロン読んでみなさい」

「せっかく赤点じゃなかったのに、堅っ苦しいのは嫌いだ」

「あんなの半分エロ本だよ、彼女できたら一緒に読んでみな」

「最低じゃん」

 とにかく、バイクなんかやめて彼女を作れ。

 そう繰り返し満足したのか、副校長は口元を緩め階段の続きを昇っていった。デカメロンなんて読まないけれど、ジュースの方は飲み干したい気分になった。



 自動販売機のボタンを押す。緑色の缶が転がり落ちて、瞬間、ボタンには『売切』のふた文字が浮かび上がった。この暑さでスポーツドリンクや炭酸飲料の類は完売続出、メロンソーダももちろん欠品だ。

 缶の表面には次々と結露の粒が湧いてくる。ぬるくなる前と一気飲みして、残りをチビチビと煽りながら来た方へ戻ろうとした時。普段はほとんど人の出入りがない教材室から声が聞こえた。この声色は耳に馴染んでいる、さっき恨まれた矢幡だ。


「……に、行きたいんだけど」

 数センチ開いたドアの隙間から覗く。誰かと話をしているようだが相手は物陰で分からず、会話もほとんど聞き取れない。矢幡の横顔は強張っていて、この距離でもその緊張は嫌という程伝わってきた。

「ダメかな」

 矢幡の腕が相手を掴みかける。しかしその手はかわされ、浅黒く日焼けした指先は空を切った。

 しばし押し問答をした後、大きく肩で息をしながら矢幡が部屋を出ようとした。俺は慌ててドアから退き、あたかも廊下をずっと歩いていただけを装いながら背を向けた。

 隣の教室前まで来たところでドアの開く音がした。そうするとどういうわけか足音も追いかけてくる。俺は気が付かないフリで缶に口をつける。


「こんなとこで何してんの」

 それは俺の台詞だ。なんでわざわざ追いかけて、そして声までかけるのか。振り向いて「喉が渇いてさ」と缶を掲げながら答えた時だった。

 矢幡がいたところから出て来た歌代に思わず視線が奪われる。会話の相手は彼女だったということか。こちらには背を向けているから俺たちがいることに気が付いていない様子だ。しかし矢幡は明後日を見ている俺に気が付き、俺と同じ方へ顔を向ける。そして一寸置いて言葉を漏らした。

「あんなとこで、何してんだ」

「……さ、さあね」

 人目を避けて二人きりでいたことも、それを隠して知らぬ存ぜぬの態度をしていることも、俺には不可解なことばかりだ。でも矢幡の横顔は隠し事などしていないようでいて、もしかしたら俺が見間違えていただけなのかと考えてしまうほどに。

「お前こそなんでこんなところにいるのさ」

 矢幡はまだ歌代の後ろ姿を追いかけている。チラリと俺が教材室へ目配せしたのは見ていない。

「散歩」

「嘘つけよ」

「じゃ、徘徊」

 予鈴が鳴る。次の授業には出ないと宣言した矢幡は本当に帰ってしまった。


 二人は何をしていたんだろうか。気もそぞろになりどうせなら矢幡に真似てサボれば良かったと後悔した。

 欠席者がいても授業中に抜け出す者がいても、あるいは堂々遅刻しても、静かにさえしていれば気にしない先生ばかりだ。それ良いのか悪いのかは別として。


 話の切れ間を狙ってさりげなく教室を出た。先生も当然気付くが、引き止めるどころか行ってらっしゃいと快く見送られる。校舎を出るには副校長がいる職員室前を通らなければならないから止めておこう。確実に捕まって泣きをみる。

 それで職員室とは真反対に求めた行き先が図書室だ。授業中に来るのは初めてだったが、俺以外にも自由に過ごす姿がチラホラある。

 ゲームやスマホに熱中していたり昼寝をしていたり、珍しく読書しているかと思えばそれはマンガ雑誌あったり。義務教育でない高校でどう過ごすかは自由で、その結果は自分だけが背負うことになる。


 そんな自由人で良い場所の席は埋まってしまっていた。仕方なく奥まで行くと、こんなタイミングでまた歌代に遭遇したのだった。

 読書に耽る彼女から離れようと脇の本棚裏へ隠れようとしたが、静寂の図書室ではかすかな足音も騒音だ。切れ上がった眼にジイと捕らえられ思わず動きを止めた。邪魔して悪かったねと言いかけた舌が口腔内で泳ぎ、情けなく瞬きを繰り返すばかりだ。

「なあに」

 抑揚なく質されて息を飲む。歌代が手にしている本の表題はデカメロンだった。

「女がそんなの、読むなよっ」

 ひり出した声はひっくり返る。それを彼女は素っ気なく切り捨てた。

「なんだっていいじゃない」

「でもそれは……」

「読んだことあるの?」

 それはない。だがしかし副校長の言葉が脳内で旋回していた。

「もっと普通の、読めよ」

「普通のなんてないよ」

「いくらでもあんだろ」

 図書委員による選書コーナーには新進気鋭の若手作家や、年明けにも公開される映画の原作、或いは偉くなった卒業生の著作だろうかマルクスを読めなどという堅苦しそうな本までもが取り揃えてある。

 そんな普通だらけコーナーに向けた視線を歌代に戻す。読みさしの本を閉じて何か言いたげに口を尖らしていた。

「普通っていうのが一番難しいと思わない?」

「はあ?」

「例えば想像してみてよ。顔は普通でいいし、頭も普通くらいでいいしって思ってても、そんなのいなくない?」

 急に前かがみで迫ってくるものだから引き気味に身構えた。顔も頭も普通な奴なんてそこら中いるじゃん。そう吐きながら最初に浮かんだ顔は何故か矢幡だった。

「それでもやっぱり好みってあるじゃない? 色黒は嫌だとか。ちょっとお馬鹿も嫌だとか」

「水泳部の俺に、それ言うわけ」

「冬場は白かったじゃん」

 日に焼けても赤くなるばかり、シーズン過ぎればズルリと剥け落ちるコンプレックスをさりげなく刺激する放言に苛立った。そこへ赤点ギリギリもないよねと、心に突き刺さる追撃を食らう。

「さてはハッシーに聞きやがったな」

「あの人、お喋りだもんね。でも私は知る権利あると思わない?」

「聞かなかったフリする気遣いはねえのかよ。そういう性格、普通以下って言うんだぜ」

「母親譲りだから仕方ないね」

 ディスったつもりが嬉しそうに口角を上げられて戸惑ってしまう。

「そういうところが顔だけ女って言われるんじゃないの」

「父親譲りだから仕方ないね」

「普通以下が普通を求めるんじゃねえってば」

「普通の読めって言ったの三神くんじゃない」

「変えた話をいきなり戻すなよ……」

「本書くなんて根暗趣味普通じゃない。普通じゃない人間が書いた本が普通なわけない。そもそも普通の人間がいない。全部繋がってるじゃん」

 ねえ、そう思うでしょう。また一歩迫られ黙って頷きだけを返した。

「そーやってすぐ黙るのも、普通じゃないよね」

「会話のテンポが早いんだっての。俺、そんな本読むなとしか言ってなかったのに」

「三神くんの頭の中、まだそこで展開止まってるわけ?」

「それで普通だから」

「男って大体そうだよね」


 口篭もる俺を見る歌代の表情はいやに満足そうだ。こちらが頷くまで言いこめるつもりだろうか。

「ところでさあ」

「なんだよ」

「デカメロンが飲みたいんだけど」

「もう買えないよ」

 品切れの赤ランプは次の水曜日まで消えないだろう。

「坂の下のコンビニ、あっちにはまだ売ってると思うよ」

「は、また俺に行けっての」

「そこは普通さー、一緒に行こうって誘うもんじゃない。普通はそういうとこ空気読んで欲しいよね」

 普通、普通と普通のゴリ押しに「あ、はい」と間抜けた面を晒す羽目になる。

「早く飲みに行こう。それじゃあこれ、しまっておいてね」

 普通の次に押し付けられたのはデカメロン。どこにあったのかなんて知らないよ。手頃な隙間を見つけて差し込んだときに歌代はもう、乱立する本棚の間を抜けていた。

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