第一章 ep5 虹二人VS炎五千人
窓ガラスの強い日差しを受けて少年は起き上がる。いつもと変わらない日がまたやってくるのかと思っていた途端にバタンッ!! 部屋のドアが突然開きそこにいたのは、
「ショウ!! ここにいたのね!」
サユリがとても慌てた様子で部屋に入り込んできた。しかし、今日のサユリの様子はいつもと何かが違うのを感じたショウ。
「どうしたんだよ、サユリなんか慌ててるみたいだけど。」
「そんなことよりもクロナはどこにいるの?」
「あ、それは」
「どこ!? どこにいるのか知ってるなら教えて!!」
「あそこ」
指差す先にはベッドの上で気持ち良さそうに居眠りをしているクロナの姿があった。
「クロナ、ショウと一緒に寝ていたのね。」
「あ、いやこれはその、」
「ショウ! ここでクロナを守ってあげて、」
「え? 一体なにがあったんだよ。」
「それは、」
サユリは出かけた言葉を無理やり閉じ黙りこんでしまった。その時クロナが、
「多分それは炎の国の人たちだと思う。」
「炎の国の連中ってそれはまさか、」
「うん、クロナを襲いに来たと思う。」
(まさか本当にクロナを襲いにくるとはな)
「とにかく、ショウ、クロナを守ってあげて。」
「いや、」
「え?」
「クロナ、」
「何? ショウ、」
「俺と一緒に行こう。」
「ショウ一体何をいっているの、クロナを死なせるつもりなの!?」
「バカか、そんなことするわけないじゃん。」
「それじゃあ、なんで、」
「戦ういや、正確には迎え撃つ。」
「誰が?」
「俺とクロナの二人でやる。」
「バカなことを言わないで、相手は五千人いるのよ、勝てるわけが... ...」
「やってみなきゃわからないだろ?」
「いくらなんでも無茶苦茶だわ、」
「ショウ、」
クロナはショウの袖を強く引っ張って強い視線をショウに向ける。
「クロナ、お前はどうしたい?」
「ショウと一緒に行く。」
「クロナ!!」
「お願いサユリ、クロナはショウと一緒なら大丈夫な気がする。」
「だってさ、サユリ悪いがもう時間はないんだろ?」
「え?」
「え、じゃないよ。さっきのお前の様子と外の異変からしてもう炎の連中はすぐそこまで来ているんだろ?」
「えぇ、その通りよ。」
「それなら、一刻も速く会いに行かなきゃこの街が大変なことになるからな、」
サユリは強く拳を握りしめショウとクロナにおまじないの言葉をかける。
「《汝らに虹の神のご加護があらんことを。》」
「なんだそれは?」
「はるか昔から伝えられている言葉よ、意味は〈虹の神の守護がいつでも貴方たちを救いになることを願う〉という意味。」
「なんか難しい言葉なんだな。」
「当たり前よ、いつからこの言葉が使われるようになったのかはわからないけど、」
「でもなんだか、負ける気がしなくなったな、」
「ショウ、行こう。」
「あぁ、それじゃあサユリ行ってくるよ。」
「ショウ!!」
「なんだ?」
「クロナを頼んだわよ、それと貴方も絶対に生きて帰ってきて。」
「あぁ、もたろんだ!!」
そして、ショウとクロナはサユリとは別れ、城の門のところまでやって来た。そこに見えたのは炎の旗を掲げて待つ炎の国の姿があった。
(クロナ一人を相手にこれは多すぎないか?)
すると、一番前にいた総長らしきものが前に出てきた。すると突然、
「クロナの首を取りに来たさぁ、クロナを差し出せ!!」
もの凄い気迫が一瞬にして全身を襲う。
(あれが、総長なのかさすがの俺でも強いっていうのは分かるな、)
「ショウ、」
クロナは怯えた様子でショウの後ろに身を潜めた。
「心配するな、俺とお前であいつらを迎え撃とうぜ!」
「ショウ、大丈夫かな、」
「平気平気誰も殺さないようにするよ。」
「うん、わかったショウを信じる。」
そして、二人は炎の総長のもとへ歩み寄る。
「ん? 誰かこっちにくるな、ん、あれは、おい!」
「はい!」
「あそこにいる小さいのがクロナなのか?」
「えぇ、その通りです奴が虹の能力最強の能力者クロナです。しかし、隣にいるあの男は見たことがないですね、」
「誰でも構わないさ、」
城の門の中でショウとクロナの様子を見守る民衆。
「いくらなんでもサユリを圧倒したからとは言えあの大人数は相手にならんだろう。」
その民衆の中にはサユリとマユミの姿もあった。
「ショウさん、クロナさん大丈夫でしょうか。」
「わからないけど、いまはあの二人を信じるしかできることはないわ。」
ついに、総長の目の前に到着した二人、やはり総長なのかとてつもない目力に圧倒されていた。
「ふん、クロナよ今日こそはお前の首を持って帰るからな、」
「... ...」
「させねーよ、」
「なんだと?」
「一体どういう事情があるのか知らんがこんなまだ幼い子供の首を取りに来るだなんてあんたら頭大丈夫か?(笑)」
「なんだと貴様!」
「今ここで回れ右して帰るってんなら許してやってもいいよ、な! クロナ。」
クロナは静かに頷いた。
「貴様、どこの誰かは知らんが邪魔をするなら死ぬ覚悟ができているんだろうな?」
「その台詞はそっくりそのままそっちに返すぜ。俺はいや、俺達二人はお前らなんかに負けはしない。」
「ほう、ならばよかろう遠慮はいらんぞ小僧どこからでも来るがいい!」
「それなら、遠慮なく。」
ショウは右手を挙げてそのままの状態で固まってしまった。
「ん? どうした、何も起こらないぞ。」
「総長きっとそいつ総長にビビって動かなくなったんですよ。」
「ふっ、それならこっちからいかせてもらうぞ!」
剣を振りかざしたその時、
「総長!! お待ち下さい!!」
「なんだ!? どうした!?」
「あれを!!」
兵隊の一人が指差す先にあったのは、
「な、なんだあれは?」
なんと空にあったのは、まるで氷の隕石のような大きさの氷が浮いていた。
「まさか、あの小僧があれを出したというのか?」
「ご名答さてと遠慮は要らないんだよね?」
「く、お前らあの氷に向かって攻撃を仕掛けろ!!」
すると、炎の兵隊達が一斉に空にある氷に向かって、
〈マグマメテオ!!〉
炎の塊のようなものが氷にぶつかるが氷には傷ひとつつかない。
「嘘だろ、こんなのありなのかよ、」
「さて、もうこっちの準備はできたからいいよね?」
「く、まだだ!! お前らもう一度マグマメテオを!!」
「もう遅いよ。」
《氷塊落下!!》
巨大な氷の塊は炎の総長は愚か兵隊のべ五千人に直撃する。
「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
辺りは一面綺麗な白い銀世界が広がりその地面には兵隊達が倒れていた。
「ショウ、」
「大丈夫だよクロナ手加減はしたからさ、」
「くそ、この小僧一体貴様は何者だ?」
「俺か、俺はだな漸能翔。一応俺もクロナと同じ虹の能力使いだ。」
「バカなこの世界に虹の能力使いが二人いるだなんて。」
「さてと、あんたらはどうするの? まだ諦めずに俺とやりあうのかそれとも、諦めてとっとと自分の国に帰るのか。」
「誰が諦めてたまるものか!」
「あぁそう、諦める気ないのね、」
「当たり前だ!!」
「それなら、この技で締めるとしようか。」
〈瞬間移動〉
炎の兵隊の地面に魔方陣が出現し兵隊達は次々と姿を消していく。
「あ、そうそうワープ先はあんたらの国に指定してあるから、心配するなよ。」
「く、小僧今度また来たときにはこうはいかないからな。」
「あぁ、いつでも相手になるぜ!!」
そして、炎の国の人達は全員国へと帰らせた。
「ふぅ、一仕事終了。」
「ショウ、」
「ん? どうしたクロナ。」
ムギュッ!! 突然クロナがショウの胸に飛び込んで来た。
「どうしたんだよ、クロナ。」
クロナは泣きながら、
「ありがとう。ショウ、」
「どうしたしまして。」
そしてまた平和が訪れた。
しかし、まだこれでは終わりではなかった、本当の物語はこれから始まる。ショウ、クロナ、サユリ、この三人はこの物語の中でどんな結末が待っているのかをまだ知らない。
あれから数日後、俺はサユリからこの世界の言葉の意味や書き方の授業を受けていた。まだこの世界に来てからまだ二週間ほどなのだから当然である。
「それでこの言葉はこういう意味で、」
(なんか日本語よりも難しいなここの言葉は、)
「ショウ、聞いてる?」
「まぁ、一応、」
「一応って、ちゃんと聞いててよ。」
「わかってるよ。」
「はぁ、ショウはまだこの世界に馴染んでないから言葉を覚えさせないといけないけど」
「けど?」
「ショウ、貴方はこれからどうするつもりなの?」
「あぁ、そういえば何も考えてなかったな、」
「何も考えてないの?」
「いや、全然ではないけど」
「それじゃあ、何か考えているの?」
「... ...」
ショウは顔をうつむきその場で静かになってしまった。しばらくの沈黙はショウに考える時間を与えるがの如く静かに時が過ぎていた。そして、ショウは顔を挙げて、
「俺は、古の書物に書いてあった虹の能力神の【ロストシェルム】に会いに行く。」
「虹の能力神に会いに行くって本気なの?」
「冗談でこんなこと言わないよ。」
「そう、」
不思議にサユリは笑みを浮かべた。その笑みには何かしらの目的があることをショウは察した。
(サユリ、何か企んでるな。)
「ショウ、もう一度聞いてもいい?」
「なんだよ、」
「貴方は本気で虹の神に会いに行くの?」
「俺は嘘はつかない。」
「それならショウ、お願いがあるの、」
「なんだ?」
「貴方のその旅に私もついていきたい。」
「え、」
「お願い私はどうしても虹の神が住むと言われる虹の島へ行きたいから。」
「... ...」
ショウはしばらく考え込みそして答えを出した。
「俺とお前だけじゃダメだ。」
「どうして?」
「俺とお前じゃない、」
「え?」
「俺とお前とクロナで虹の島に行く。」
「クロナも、」
「あぁ、三人で虹の島を目指そう。お前もいいよな?」
部屋のドアの隙間からひょこっと顔を覗かせるクロナの姿があった。
「クロナ。」
「さっきから俺とお前の会話を聞いてたみたいだからな、」
「ショウなんで気づいたの?」
「影」
「かげ?」
「そう、ドアの隙間に小さな影があったからな、」
「ショウ凄い!」
「いや、まぁ、そんなことよりもクロナお前はどうしたい?」
「わたし?」
「そうお前は俺とサユリと行くのは嫌か?」
「いや、クロナは嫌じゃにゃいよ、二人と一緒に行きたい。」
「これで決まりだな。サユリこれでいいだろう?」
「え? あぁ、う、うん。」
「それと、サユリ俺からも頼みがある。」
「なに?」
「俺とクロナを虹の島へ連れていって欲しい、頼む!」
深々と頭を下げるショウとクロナを見て焦るサユリしかし、その頼みの返答は早かった。
「もちろん、一緒に虹の島を目指そう!」
「あぁ、クロナ、サユリ頑張ろうぜ!!」
「うん! クロナ頑張る!」
「もちろん、足手まといにならないように頑張ります。」
そして、ショウ、クロナ、サユリの三人は虹の島へ行くことを決意する本当に三人は島へたどり着くのかそれは、神以外誰も知らない。