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第17話

「ライラ!」

「む、クロか。先程の戦い、見事だった」


氷竜を地面に叩き落とした俺は、氷竜に突撃しようとしているライラと合流していた。

氷竜を落とすまでの戦いは決して綺麗な物ではなかったのだが、それでもライラは満足してくれたようだ。


「ライラにそう言って貰えて何よりだよ」

「うむ。では、行くか」

「……了解」


迷いなく突撃しようとするライラの戦闘狂ぶりに呆れたものを感じながらも、定位置と化しだしたライラの肩に止まる。

俺が肩に止まったのを確認してから、ライラは一歩、また一歩と何かを確かめるようにゆっくりと氷竜が落ちた場所に向かって歩きだした。


「クロ殿! ご無事でしたか」

「おう、ゼンゲンか。見ての通りだよ」

そして氷竜の元まであと少しといったところでゼンゲンが合流する。

今のゼンゲンの様にゆっくりと追従して飛ぶ器用さが俺にあれば、氷竜による尻尾の一撃を避けることもできたのだろうか。いや、今考えても仕方ないな。それよりもこのままついてこられても仕方ないだろうし、指示を出しておくか。


「これからライラと氷竜に突撃する。ゼンゲン達は上空で周辺警戒を行ってくれ、直接の手出しは無用……だよな? ライラ?」

「うむ。あの氷竜は私とクロで討ち取る。ゼンゲン、クロの言う通り手出しは無用だ」


自分と契約精霊だけでという縛りのついた竜狩りを目的とし、かなり戦闘狂なところがあるライラなら手出し無用だとか言いそうだったから先んじて言ってみたのだが、どうやら当たりだったようだ。


ゼンゲンは俺達の声を受けると一礼し、群れをまとめるべく飛び上がっていく。

さて、これで万が一への備えも出来た。あとは……


「準備はいいな?」

「いつでもどうぞ」


氷竜を討ち取るだけだ。


「では、まいる!」


ライラは大剣を上段に構えると、全力で氷竜がいると思わしき方向へと突撃する。

一歩、二歩と大きく飛ぶように駆けること数秒。突然視界が開く。



「グォ、ォォォ……」


木々が薙ぎ倒されて作られたその空間の中心に氷竜は居た。

俺の蹴りによるものだろう。背中の甲殻は吹き飛び、焦げ付いている。翼もその根元に大きな傷があり、とても飛べるものではない。

誰がどう見ても手負い、それも瀕死に近い状態だ。


「ォォォオオ!」


だが手負いの獣は決して油断できない相手である。

それを証明するかの様に、氷竜はこちらに向けてブレスを撃とうとする。

だが━━


「はぁっ!」


それを許すライラではない。

氷竜に飛びかかるかの様にして放たれた大剣の一撃は氷竜の頭に直撃し、ブレスを撃つ為に開かれていた口を無理やり閉じさせる。

そしてすぐさま距離を取るライラを援護する為に放たれた炎弾は氷竜への追撃となり、更なるダメージを与えた。


「よし……クロ、やるぞ」

「ん? あぁ、了解だ」

度重なる攻撃で目でも回しているのか、いよいよ動かなくなった氷竜を見てライラは大技で止めを指すことにしたらしく、俺に声をかけてくる。

要求しているのは間違いなく精霊剣。

そう判断した次の瞬間にはごっそりと魔力が持っていかれた。慣れなのか今までよりはスムーズかつ、違和感も少なかったのは成長と言えるだろう。


「すぅ……」


一拍。ライラは燃え盛る大剣を上段に構え。


「せぇやぁぁぁ!」


勢いよく大剣を振り下ろした。



氷竜との戦いから一週間が経った。



ドラゴンとはいえどまだ幼かったらしい氷竜はあっさりとライラの大剣で両断され、魔獣騒ぎは終結を迎えたのだ。


俺を含むカラス一同は教会のお世話になることとなり、教会は賑やかさをました……らしい。

それについてはゼンゲン達が何事か泣き付いて来た気がするが……まぁ、子供達も楽しそうだし小さな事は気にしないでおこう。

俺の契約者たるライラは氷竜戦後しばらく不満そうにしていたが、以前の通りの生活に戻った。いや、戻ってくれた。

行動から察するにどうやら暴れ足りなかったらしい。どんだけ戦いたいんだ……


そして俺はと言えば毎日惰眠をむさぼっている。セツカやライラと何かしらすることも多いが、基本的には寝ている。

まさに完璧な老後というやつだ。



なんとなくではあるが、こんな平穏が続くのも大して長くはないだろうと思う。

だからこそ今だけは、穏やかな日々を満悦したいと、そう思うのだ。











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