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模型術士の鬼盛りサクセス  作者: 雲渚湖良清
一話 【異世界の中で】
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メア専用・魔攻重機(makou jyuuki)【イクサ・アームズ】

 「状況は、余りゲーム時代と変わっているようにも思えんな、主様」

 「そうだなあ。ていうか、メアが変態に見えん光景だなあ……」

 「変態行為とは、それを変態と思うから成立するのだ。故に主様は、それが変態であれと願い求めているのだぞ。もう⤴、あんな恰好が好みならっ⤴、直ぐに致しますのに☆」

 「とってつけたように、アニメ声止めれ」

 

 腹の虫的な餓えた変態を腹一杯に満足させて、無くした両腕の代替え処置を終えるのに一日使った。

 まあ、こんな内容のゲームにハマる俺だ。女体を魔改造する知識はそれなりにある。加えて立体系での経験だって多少はある。

 ならばそれが、リアル女体となろうと、そう変わらん。

 

 元々、【リモッドキスト】である自分のアバター構成も外部兵装に慣れた方向性のもんだし、模型的な概念がスキルと反応して、ゲームじゃ不可能な方向性でも結構簡単に具現化できた。

 それがメアの義腕だ。

 

 俺の【リモッドキスト・2】という職能種族は、本体は意識で電子機器へとハッキングが可能な生身の人間。武装は魔力を動力源とするあらゆる外部機器となる。

 外部機器とはほぼ【魔道具】と呼ぶ物で、脳内で設計図がコンプリートできてるなら、構成素材を一気に現物へと変換するのを可能とする。

 まあ、魔道具に決まった形は無い。強いて言うなら、過去に地球にあった機器なら全て再現できる。ただし、動力は魔力一択だがな。

 ここまでの能力が【リモッドキスト・1】で、【リモッドキスト・2】となると、その脳内設計図がゲーム提供品以外の、自分の空想からもでっち上げれるようになる。

 

 俺はそのスキル群を活用し、ゲーム時代は【PoF♂】の世界に変形合体巨大ロボでも作ろうか、なんて野心を抱いてたんだよな。

 

 既に練習な気分で幾つかのパーツは作ってた。もちろん、トライ・アンド・エラーの精神で表に出す気も無いガラクタだったが。

 

 メアに流用したのは、そんな試行錯誤を盛り込んでた時期に試作した巨大ロボ用のマニピュレータだ。

 掌に人が乗れる巨腕。そんな巨大な掌に、その手の形本来の機能があろうが実際に役に立たないのは解りきっている。

 人が乗って操る物に必要なサイズとは、結局のところ人間サイズの掌なんだからな。

 

 だからまあ、そんな巨大な手ではあるのに、俺は人間サイズの機能を無駄にぶち込んでたりしたわけだ。実にご都合主義的にな。

 

 【イクサ・アームズ】と名付けた義腕は、指の一本一本が人間サイズの腕となっている。爪の部分が展開して、結構人の掌に似せた形へと変形する仕組みだ。

 人差し指から小指と、微妙に大きさの違う腕が四種類あるんで、比べれば小指のサイズがメアに合うのが確認できた。で、それをメインに使うよう調節した。

 義腕化させる指の基部も含め、各関節は磨耗避けで非接触型の球体関節だ。位置の調節だけ変えれば良いんで改造の苦労は無い。

 

 小指だけを使うのも芸が無いと思い、残りの指や手の甲部分も活用させた。小指とサイズの近い薬指を予備の義腕として残し、人差し指と中指は義腕の機能を一部オミット。携帯武器的な機能を内蔵させ、メアの気分で使い分けれるようにする。甲の部分は指の接合部でもあるんで、あまり細かい可動部の追加は剛体を弱めるからと避ける。悩んだ結果は、日々地味に悩まされたメアの露出狂防止アイテムだ。幸いメアの胴体部を隠せるだけのサイズがあるんだ。金属製のクロークのような、防盾として身体の周囲に浮かばせる感じに落ち着かせた。

 腕として使用しない指の格納用としても使うんで、無駄にはならんし。

 

 

 このやっつけ仕様は結局、後のメア用装備の基本仕様となった。

 何度か装備の更新もしたが、基本は同じ。装備が直接肌に触れないんで、多少不満そうだが拒絶はしていない。

 まあ、プライベート空間じゃ相変わらず使わんようだが。

 

 ちなみに、腕部喪失の直後はそうでもなかったが、約一年を経たメアの足の指癖は、チンパンジー系も真っ青の活用レベルだったりする。

 

 義腕に搭載した『女の子の指に相応しい可憐さの形状再現』に苦心した俺の努力は徒労の一言。あの努力はいったい何だったのだと問いただしたい気分になる、女子力皆無のワイルドさだ。

 

 

 そんな感じでメアのマギボーグ処置も終わり、改めて現実となった近所を行く。

 

 俺がホームを設置した町の名はエンマリオ。一度は崩壊した都市部の一部を、地味に再開拓した町となる。

 地球の感覚を被せると、ぶっ壊れた新宿副都心の中に人口五百人の村を作りましたって感じかな。

 樹海に埋もれた廃墟には過去の文明の遺産が眠り、同時に魔物の巣でもある。

 命を担保に廃墟を探索し、成功すれば廃墟は新たな生活の場へと変わって行く。そうやってチマチマと町を元の環境に戻していくのが、ゲーム時代は俺達プレイヤーのお仕事だったってわけだ。

 

 エンマリオの町は直径約二キロの円周形で、中心部に行政区画、そこを囲むように北西部に農耕区画、南部に商業区画、北東部に居住区画と分割している。

 まあ、人力による開拓という言葉とは裏腹な、随分と整然されたデザインだ。だがこれはこの世界が【PoF♂】というゲームを反映させているからだと思えば、まあ納得できるか。

 納得せんでも現実なんだがな。

 

 俺とメアが移動したのは居住区画から商業区画へ、そして行政区画にと続くメインストリートだ。俺以外にも魔攻重機を使うやつはいるし、それらの移動に使える広い道も限られる。

 幅六車線ほどもあるメインストリートならば、まあ不用意な事故も無いと考えてのルートだった。

 

 だが俺以外の魔攻重機は案外少ない。しかも見る種類は人型ばかり。

 もしかしたらなんだが、ゲームから移動してきた俺達は少数派なのかもしれない。

 そう言うとメアが不思議そうな顔を向けてきた。

 解ってねーか。メアだし。

 

 「いいか、周りを良く見ろ」

 「肌色成分が多くて良いな。実に効率的で美しい」

 「そこも含むが、注目の視点を変えやがれ」

 

 ゲーム時代、設定上の環境は南国に近い気候として描かれていた。しかしゲームだ。プレイヤーの恰好は自分好みの装備で行くのが普通だし、NPC扱いの女亜人達も、その所有者の好みが反映された。

 

 なので、気候なんぞ関係無い。

 着込めば十分と過ぎずに熱中症となるような全身甲冑のプレイヤーとか、バニースーツとかナースとかゴスロリとかデコレーションされたのとか、ちょっと冷静になれば発狂してる連中の集まりにしか見えない光景ってのが、この場所のデフォルトなわけだ。

 

 しかし。

 

 男連中の大半は砂浜を歩く海水浴客のように、上半身には何も着てない奴等ばかり。ゲームの名残は、ハーフ丈のカーゴパンツに吊してる剣やら斧やらくらいか。

 もう少なくとも、ここに歩く連中に即時戦闘を臭わせる雰囲気は無かった。

 

 で、女連中だ。

 ……ここはヌーディストビーチですか?

 

 正直に言おう。俺個人の感想の範囲ならば、ここは実に天国だ。

 幼女同然の未熟さ晒すメアとは天と地とも違う。いろんなとこがユッサユッサと揺れる美姫の群れ。

 おーヤバい。自分の顔面が溶解していくような気がする。

 

 ゲーム時代にも似たような風景はあるにはあった。

 あっちも男の欲望全開の世界だったからな。当然だ。

 だがこんな映像は、無かったよなあ。

 

 生命の感触とでも言うんだろうか、この世界の女達から発せられるものは、ゲーム時代とは全くの別物だった。

 あっちの方にも、メア同様に女プレイヤーは居たんだけどな。

 何だろう、この違いは?

 

 「主様、首輪をして腰振り強請る奴隷が好みならそう言えば良かろうに」

 「え? 違うとこってソレカ!?」

 

 感じる疑問に合わせるが如くメアが言う言葉。

 つい反応してしまった。

 

 周囲の女亜人達、つまり奴隷達となるんだろう。

 ゲーム設定のまんまなのか知らんけど、女達の首には奴隷を表す解りやすい要素として、鉄の首輪が填められてた。

 首輪から伸びる鎖は主人となる男の腕へと繋がるか、もしくは地面近くまで放られてるかと様々だ。


 「主様に媚びるならば我も充分してる。往来では普通に、とか言われたから大人しくしてたが、要はそれを圧して雌犬の如く振る舞えは良いということだったのか?」

 「俺、メアの言ってる意味がわかんねーんだ。いやもうマジで」

 

 まあ確かに。通りを行く連中の雰囲気はメアが言うのに近いか。

 見た目は、年端もいかない少女奴隷を連れたゴツい顔で名前がヤから始まる系統っぽいオヤジ達。

 しかし女連中に悲惨さを匂わせるものが無い。まるでスキップするような軽い足取りで着いて行っている。ま、本当に犬連れての散歩のようだな。印象だけは。

 

 なるほど。俺の中にはアレを望む魔獣が居たと。

 そしてメアも……。いやちょっとまて。

 

 「スマン。雰囲気に酔った。つか俺が言いたいのはそこじゃない」

 「む?」

 「ぶっちゃけてだ。こんな夏の浜辺みたいな状況、ゲーム時代を知る奴が染まるかって言うつもりだったんだがな」

 

 町はセーフティーエリアだったが、その町から出れば即戦闘可能なのが【PoF♂】だ。魔物相手は当然だし、プレイヤー同士でも挨拶するように殺り合えるのが売りなんだし。

 倒してお終いとか温い温い。負けたプレイヤーは死亡後、勝者の気分で精神的な生き地獄の場合もある。敢えて詳細は語らんけどな。

 

 それがまあ、こんな倒錯的だけど長閑な風景とか。

 ちょっと違和感がハンパない。

 

 そして、俺が感じる違和感を、俺と同類な奴らが感じないのか?

 

 だから思ったわけだ。

 今俺の前にいる連中は、地球出身じゃない、この世界本来の人間達なんじゃねーか、ってな。

 で、冒頭の感想へと帰るわけだ。

 

 「自分の趣向は置いておくとしてだ。主様、ほぼ裸の女を首に鎖つけて連れまわすのは、あまり真っ当な社会とは思えんのだが? いやこの肌色空間は素晴らしいのだが」

 「正論吐きつつ発狂するか。お前も少しは世間の正気で行動しろ。な」

 

 あのゲーム環境が成立したのは、万人が自由を主張でき、莫大な資本を背景に開発者の少数派的な倒錯趣向を社会的には肯定させた上でのものだからだ。現に男女同権とか女性の人権保護を正義と唄う大多数の連中からは、【PoF♂】は生涯の仇敵扱いの上、開発関係者へのテロ紛いの実力行使すら何度もあったらしいしな。

 

 「色欲塗れの伏魔殿ってのは【PoF♂】の特徴の一つだが、それはあくまでゲームのフレーバーだ。メインのコンテンツってわけじゃ無い。なあ、町を行く連中にマギボーグらしいのが全く居ないのは、おかしくねえか?」

 「……あら。本当だ主様。生体装甲じみた外見のオジサマ達だが、あれは無改造の見た目のようだ」

 「だからサラッと毒をはくな。俺の解析系スキルが言うんだが、ナノマシンでの生体強化すら必要最低限。俺より低いって、もうナノマシン使う意味あるのかってレベルなんだがなあ」

 

 【PoF♂】に登場するナノマシンには、やたらと活用できる汎用性が持たされている。

 体内で鎖状連結しての身体頑健性の強化機能。体内ホルモンや脳内麻薬成分を調整しての限定超人化。外傷や病気に対する治癒回復系効果の増加機能などの能力を基本として持つ上に、マギボーグ化やリモッドキスト化に対応した専用機能にも補助として利用できるんだ。

 

 逆の言い方をすると、充分な量のナノマシンを保有していない奴は何もできない。どんな追加装備で強化しても、それを宝の持ち腐れにしかできないんだからな。

 

 「んーむ。確か亜人設定のフレーバーにもナノマシンは使われてたような? 主様には申し訳ないが、我的には意味ないとこなので記憶が怪しい」

 「まあメアの状況を知ったからにゃ、仕方ないとしか言えんしな」

 

 現実で失った部位感覚回復用の、切羽詰まったリハビリ環境探しとか、正直、俺の想像を超えてる。

 ここまで変態なメアに、そんな深刻な背景があるって実感すら未だに怪しいしな。

 

 でだ。俺の記憶が確かなら、プレイヤーが集まった状態の町が実質こうも低レベルな状態なんて、新規サーバー開設初日くらいだ。

 そして何より、男女の有り様は脇に置いても、こんなイチャラブ臭過剰な長閑さが蔓延したなんて状況、プレイしてから初めて見た。

 

 故に、俺は決断できる……

 

 「この世界で【PoF♂】プレイヤー出身ってのは、多分、現状、俺達だけなんだろうな」

 

 ……と。

 

『イクサ』は『X』の呼び方の一つとして、『X』は『10』を現す意味があり、両手の分の十本の指の数にかけてます。


映像的デザインは、1/35のフィギュアの肩の部分にPG1/60サイズの手首から小指を外して貼り付けたようなデザインと思ってくださいな。

手首の残りはマントのような位置で浮いてます。


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