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模型術士の鬼盛りサクセス  作者: 雲渚湖良清
やっとメカメカしくできる。の閑章
36/39

アルファ改造の顛末 ④

 さて、場所を移動しよう。

 【Paradise of Fauve ♂】がゲームだった頃は、町に設置するマイホームは家型のオブジェクトな扱いだった。要はエリア移動のための目印なので、極端な形なら【どこでもドア】でも問題はなかった。

 が、現実化した現在は、少なくとも家の中と外は地続きな感じになっている。開けた窓越しに互いを見ることも、会話をすることもできるっわけだ。まあ、普通に現実な扱いだな。

 ただ破壊不能のオブジェクト設定は健在なので、物理的な接触は無理だけど。

 むしろ、押し込み強盗が有り得ない分、この物騒な環境では安心できると言うものだ。

 

 そしてもう一つ、ちょっと現実では有り得ない要素が俺的にはとても助かっていた。

 

 リビングから廊下を歩き、ホーム隣に続くガレージへと移動する。

 車二台が横に並べれる広さは、ガレージとしてまずまずの広さだろう。ゲーム時代なら俺のメイン車両であるアルファが勝手にストレージから顕現化して置いてあるのがデフォルト仕様なんだが、今ガレージ内に置いてあるのは街乗り用に調達したウィリスタイプのジープのみ。ジープでも小型車サイズなのでガレージの広さが際立つ感じだ。

 

 「えーと、転移ポイントは……、ここか」

 

 ガレージのスミ、コンクリート地剥き出しの床に黒の黄色のストライプで囲まれた二畳サイズの四角いマークがある。工事現場で見そうな感じのそれはガレージの工房区画へと転移するためのポイントで、上に乗れば自動的にエリア移動できる機能をもつ。

 元々はそんな機能だったんだ。しかし、乗ってみれば転移の感覚の代わりにガコンとひと鳴りし、足元の床ごと沈みはじめる。どうにも現実化に伴い、転移ポイントはエレベーターという仕様に変わったらしかった。

 

 「ま、確かに設定上は工房区画は地下にあるって内容だったからなあ」

 

 神様になったゲームシステムは、そのあたりを律儀に再現したらしい。

 ただし、その再現は片手落ち過ぎる。

 

 ほんの数十秒の下降の後に目にした地下工房区画。それは到底、古き良き1950年代のアメリカ片田舎な家の地下にあるとは思えない様相だった。一辺300mはあろうかという横幅。高さも軽く30mはあるだろう。正直、どこの軍事工場かという広さである。

 ゲーム時代、課金の限りを尽くして工房レベルを上げた結果の成果なのだが、これが家の地下にあるのは正直言って違和感ありまくりだった。

 

 広過ぎる工房内の一角には、現在俺が管理する魔攻重機が並んで置いてある。まだ装備解除をしていないアルファは当然、カルエ用のチャーリー、カゴメ用のブラボーもある。

 登録上は俺のストレージ内に収まってるんだが、この工房内は展示空間としても機能してるんで、自動的に顕現化してるわけである。

 それぞれの機体にはメンテナンスタラップやクレーンが隣接していて、正に整備中といった感じだがそこは雰囲気だけだ。というか整備するのが俺だけだし、整備自体がメニュー選択で済むんたからな。実際に機材の組み込みや溶接やらしての整備には好奇心が湧くが、そんな専門技能は無いので割り切るしかないのだから。

 

 で、その工房の一区画。

 そこはいわゆる作成空間で、大型機器を新規に何か作る時の専用エリアな扱いだった。

 

 メニュー内にある新生アルファの設計図をロードすると、そのエリア内に設計図通りの実物が出現する。ただし、半透明の状態で。立体映像なのは、実際のサイズはこんな感じだというイメージ確認のためだ。この状態で必要素材を投入すれば、対応するパーツ類が完成して実物と化す。その時点で素材は消費されるので、例えキャンセルしても元には戻らない。もし使わなければ単にゴミを作ったのと変わらない扱いだ。

 慣れない頃はそこに気づかず、パカパカ実体化させて素材不足に泣くことになるのだが、予め人に言われてても自分で経験しないと結構忘れる要素なんだよなあ。

 

 「さすがに三度目となると慣れるもんだ」

 

 チャーリーは拾い物の骨格に追加するパーツ類程度だったので気にしなかったが、ブラボーは一から選定したんで、つい無駄に実体化されてはスクラップな部品を大量に出した。ゲーム時代なら八割は素材へと戻せた筈なんだが、今はスクラップ化すると二割も回収できなくなっていた。

 で、ついゲーム時代の気分で素材を散財し、非常に残念な気分になったんだ。しかも希少素材のロストは僅かだったが、反面よく使う一般の素材が在庫不足化する始末。鋼鉄系やアルミ系がこの世界でも一般流通してなかったらマジ泣きしなきゃならんかったよ。

 

 うっかり実体化させないように、ホロ映像の状態のまま各パーツのステータスを確認する。耐久値の安全マージンを最低にして全体を確認、問題が無いようなら素材の在庫から均等割りで追加し、素材密度を増やして耐久値を上げていく。

 

 「素材密度を上げると重量も増える。そうすると自重負荷で結局強度不足な部分も出てくる。どこかで軽量化スキルの付与に切り換えないとなあ」

 

 このあたりの処理工程がゲーム設定のままじゃ通用しない部分だろう。実体化といってもゲームじゃ単なるデータだ。強度増加でこんな負荷計算が必要なところは無かった。だから稼動補正としてのスキル付与だって機体強化な解釈だけで通じたわけだ。

 しかし現実では、下手なスキル付与だと純質量による慣性が生きたまま。いわゆる魔法的な軽量化処理とかは逆に機体の耐性を下げるだけの結果になった。

 

 例えば、重装甲で超重量なコンセプトのブラボーは、最初に作った片腕一本の素の重量が162トンになった。当然関節が重さで動かんかったんでスキル付与で無理やり軽量化。無事動くかと安心したら、素のまま生まれる慣性でプチンと肩の関節から千切って飛んでった。しかも同じ構造で全身作成済みだったんで、一体丸ごとの廃棄が決定だ。接合強度の再設定で何とかしようにも、そうすると関節丸ごと作り直しで今度は骨格の設定も直さにゃならんしと、結局は全体の見直しになる。

 二日間、脳内で再考した結果。最初の機体は廃棄で、ゲーム内の重量級人型魔攻重機の素体に増加装甲が一番無理無いという形になった。つまりは、初のオリジナル機制作は大失敗だったわけだ。

 

 なので今回は、自分でもクドイと思えるくらい慎重に工程を踏んでるのだ。

 メアが変な機体構成をゴネなきゃ、こんな苦労は無かったんだが。

 

 一応ミス無しでコンプリートした脳内設計図だが、実体化前に可能な限りの強化も入れたので念入りにチェックする。搭載する武装も決定済みだが、将来的に変えないとも限らないから、あんまりピーキーなバランスにはできないし。

 まあ、汎用性と言う言葉がギリギリ使えるくらいには余裕を持たせないと。

 

 で、できた結果がこちら。

 

 ───────────────────────────────

 

 【アルファ-2】

 全長 6.3m

 全高 3.9m

 全幅 2.8m

 主武装 XM813 /mk310

 副武装:1 Denel NTW-20 (ogc)/NTW-20x82mm

 副武装:2 HB sling /w3m

 

 ・構成機体

 車体:Piranha c3 6x6 (軽量化)

 砲塔:Kv-2 T1940 (軽量化)

 機関部:Ford Magi Hexagona 2245Engine

 駆動部:Active suspension /EL

 

───────────────────────────────

 

 全長と全幅はほぼ基本のまま。全高に関しては『言うな馬鹿』の世界だ。一応、移動や射撃で生まれる慣性負荷は、逆方向にカウンター斥力を自動発生させるスキル付与で相殺したから駆体に変な捻れが出る心配は無い。いや、ほぼ無い。

 デザインも元の機体に近いままだが、砲身は基部を残してブッシュマスター化したのが大きい違いだな。後、車外に貼り付けられる備品類は俺達的に無駄なので全て取っ払った。ミリタリー感とすればノッペリしない表面のゴチャゴチャ感は魅力だし、現実でも射撃戦なら関節被弾を狙える有効性がある。なんだが、対魔物の機体とすると相手に掴まる部分は減らしたい。取り付かれて密着されてからの打撃力とか、さすがに馬鹿にならない被ダメージになるからな。なので掴まれやすい部分はなるだけ削ぎ落としたいわけだ。

 

 主武装はほぼ基本仕様だ。ブッシュマスター2のエアバースト規格。前のアルファからは大幅に口径が小さくなったが、貫通性や榴爆効果性は劣っていない。むしろ連発性能は上がってるから射撃行動一回での総ダメージも上がるだろう。

 副武装の対物ライフルは前と同じで、普段使いの意味ではこれがメイン武装となる。なので性能説明は省略。

 副武装その二となるのは【Paradise of Fauve ♂】オリジナルのアクティブトラップ兵装で、両端に分銅が付いた長さ三メートルのワイヤーを撃ち出す榴弾砲になる。撃てば水平に回転しながら飛び、魔物に当たれば巻き付いて拘束状態にできる。弱めの魔物なら勢いで切断くらいは可能かもだが、そこは試してみないと断言はできんか。

 

 機関部は異世界化から生き残ったフォード日本が作ったというゲーム設定の魔動エンジンで、元ネタは『大出力エンジンならアメ車のフォードでしょ』と頭の悪い発想かららしい。実はこれより他に山ほど高性能なエンジンはあるんだが、必要な出力を得られて一番重量があって重心を下げれるからと選んだ。これも横転防止対策である。

 

 駆動部は電磁反発式サスペンション仕様を利用した俺のカスタマイズ品。なので特に型番が無い。基本位置設定が随時変えられるので車高変更やら六輪独立しての変更で不整地での平行性が上げられる。

 仮に横転しても、地形によってはジタバタさせての自律復帰も可能だろう。絵的にマヌケだがな。

 

 居住性に関してはオッサン十人以上が詰め込める空間もあるし、砲塔部だって給弾機構はアイテムストレージ経由でスッカスカ。当初の俺の想像以上にユッタリだ。もうメアに文句を言われることも無いだろう。

 

 「……主様、キングサイズのベッドが置けないぞ」

 「やっかましぃわあ!」

 

 ドヤ顔で完成させ披露すれば、ドーシヨウモナイ理由で即効ダメ出しが来た。

 どこぞの油田王が作った内装ラブホのリムジンじゃあるまいし。もう切実に思う。誰かこの色魔の脳を矯正してほしい。

 

 へるぷみぃ……。

 

ちなみに、キングサイズベッドはマット厚込みで幅220×長さ230×高さ100くらいあればな感じ。なのでメアの希望は叶うのですが、正に見た目だけで言ってるのでキザオミはキレましたw


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