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模型術士の鬼盛りサクセス  作者: 雲渚湖良清
二話 【仲間創り】
22/39

意外なカルエの性能

未推敲。誤字脱字があれば申し訳ない。


 さて翌々日。カルエ専用人型魔攻重機【magi mortar】、その試験仕様二番機を組んだ。そして即、稼動テストとなる。

 今回のテスト場所は、エンマリオからは近いが、やはり人も魔物も少ない森林地帯に来ている。

 

 「ふあぁ……。うーん、世界が黄色い。マジなんだなあ、この現象」

 「この世界では別にノルマがあるでなし、今日一日くらいベッドの中でノンビリ過ごせば好かろうに」

 「その次の日にはもっと衰弱しそうなんでな。俺の危機感知スキルが起きろと叫んだから起きた。こら目を反らすな。後『チッ』とか舌打ちすんな」

 

 この戯れ言の詳細は省く。

 俺はカラカラ、メアとカルエはツヤツヤという状況から察してほしい。

 まあ、“誰か”や“何処か”の寛大さが発揮される機会でもあれば、ちょっと法則の違う並行世界とかで事細かに記されるかもしれない? いや知らんけど。

 

 さて、二番機の作成に約半日を費やし、その間暇してた女共の御希望にそえての一日を潰しての再開である。

 何だかんだで現実化した【PoF♂】の調査の方は放ったらかしの日々だが、まあ仕方ないからしょうがない。

 それより今は、機体性能のテストが優先である。

 

 「さてカルエ。予め標的は設置してあるから、順次狙ってみるぞ」

 「はーい、です。ご主人様」

 

 この森林地帯は、ゲーム時代で言えばプレイヤーを移動的に遠回りさせるための緩衝空間となる。ぶっちゃけるなら、フィールド上にある侵入不可能なオブジェクト地形だ。こういう地形を配置する事でプレイヤーのVR端末にロードされる地形データの遅延を緩和させるための存在というわけだ。

 

 ただし、現実での【PoF♂】では扱いが少し違う。

 

 フィールド系の魔物の特徴として、その身体を展開できる空間を必要とする事は前に言った。そしてこの森林地帯は、木々の間隔がかなり詰まった状態となっている。木と木の間隔は人間一人分だが根元となればほぼ木の根同士が絡み合うほど。正直地面すら見えないほどで、獣道すらできそうも無い徒歩での移動は無理な感じの環境である。

 この状態ならば脅威の度合いの高い魔物は棲めないし、当然、侵入も不可能だ。つまり、本当の意味で天然の防壁にもなっているだ。

 移動方法はこの大回りに森林地帯を迂回してのみとなり、近づく魔物が居た場合も町からの監視が見つけやすいし、余裕をもって対処が取れることとなるわけだ。

 

 「木の高さは、八メートルってとこか。先ずは登攀のテストだ。登れそうな木を選んでやってみろ」

 「りょーかいでーす」

 

 人間の手を模倣した機械の五指は、その先端が爪と言うよりは杭の先となっている。そして、そんな指先は簡単に木の幹へと食い込んで機体を固定する。

 その腕が動けば、支柱となった木はしっかりと機体の重量に耐えていた。どうやら絡み合った根は完全に地面と一体化して、見掛けよりもりも強度を増しているらしい。

 足の裏は一見扁平足だが、一面全体が細かい溝の刻まれたヤスリのようになっていて摩擦度は高い。触れた幹から盛大にオガクズを撒き散らしつつも、機体が滑って落ちる気配は無かった。

 

 「土台になってる木、思ったより頑丈だなあ」

 「主様の軽量化処理が尋常でないのだと思う」

 

 木の太さは直径にして一メートルくらい。それが五メートルくらいまでは変わらず伸びて、それより先端は急激に細まっている。横枝が密集してるのもその先端三メートル分ほどなので、大体五メートルまでの登攀には問題は無さそうだ。

 

 「これ以上だと木が折れるっぽいんで無理でーす」

 

 案の定、カルエからもそんな報告が来た。

 太めの横枝に腕を伸ばし、如何にも平気といった雰囲気の鋼の巨体。

 やらせてみた当人が思うのも変だが、木登りロボットとは実に妙な絵面だった。

 

 「んー、さすがに樹上まで行けないんじゃ高所索敵とかは無理だな」

 「軽さと馬力では我の方が使えそうか。……偵察任務は面倒臭いからやだなあ」

 

 最初の予想として、カルエの機体の登攀行動が可能なら偵察もできるだろうとか考えてたが、こういう問題が出るってとこには思い至らなかった。

 まあ、場所が岩壁とかなら問題も無さげなんだが。ビルの壁とかはともかく、圧倒的に多いのは大木の類なんだよな。

 何か対策しないとだなあ。

 

 などと新たな問題対策に没頭しかけた時だ。

 

 「ご主人様~、何か南西方向からこっちに接近する集団がいまーす」

 「「は?」」

 

 当のカルエから別口の問題が降って来た。

 

 実は今回のテストに先駆けて、この森林地帯のアチコチには標的となる物を俺が設置していた。外見的には生肉素材の人型マネキンであり、射撃系のテストでそのリアルなダメージを表現するためのツールとして、ゲーム時代には重宝したアイテムとなる。

 ゲーム時代にはメニューを開き、【テストプレイ】という項目を選ぶだけで俯瞰地図が展開し、任意の位置へと配置するだけで終わる。後はそれらを全て命中させるか、テスト終了のコマンドを選択すればキレイサッパリ虚空へと消える。

 どんな武器にしろ、このような体感での確認は既製品から性能を変化させれば必要となる部分である。だからか、ほぼノーコストで全プレイヤーへと配された機能であった。

 

 「標的の、マネキンの感知し損ね。とかじゃ無いよな?」

 「徒歩っぽいスピードで動いてますから、多分、人間かと?」

 

 この標的には人型やら動物型やら、果ては車両型とバリエーションがやたらとある。なのでプレイヤーによって呼び名は変わりがちだ。俺の場合は生物型なら【マネキン】。その外なら【標的】と呼び変えている。

 今回の標的には全て人間サイズの者を選んでて、この世界では標準的な生物の特性反応を示すようになっている。サーモセンサーに反応するような体温とか、気配や嗅覚に反応するための擬似呼吸とか。後は特殊なとこで放射魔力とか。

 探知系や索敵系のスキル持ちなら、これらの情報を総合すれば、まあ、感知した物が何なのか、くらいは判明させれるってわけだ。

 

 本来、侵入防止の役目を持つ森林地帯には似合わない選択だが、視界も通らない環境でそれらの情報を元に索敵できるか? というテストだから気にしない感じでやってみた。

 

 ついでに言えば、まだカルエには索敵系はおろか戦闘に直接関係するスキルは覚えさせてない。まだまだ単に、色ぼけ気味で魔術適性がバカ高いだけの小娘って構成だ。

 先ずは魔攻重機の純性能で基準を決めて、そんでもってカルエのスキルによる強化要素という算段だったんだけども……。

 

 「移動してってことは、まあ、確かにマネキンじゃねえか」

 「はいです、と思います」

 「主様よ、それ以前に確認する事があるだろう?」

 「ん、何がだ?」

 「カルエの言う方向で、人が移動可能な場所をさす距離とは、いったい何キロ先となるのだろうな?」

 「……あ」

 

 天然の防御壁となる森林地帯。敢えて手付かずの樹海としているその広さは、ざっと地図で観るに数キロほどにの距離があった。

 俺達がいるのはエンマリオの町側の端、当然、移動している存在は森の反対側の、その外を移動しているという事となる。

 

 「カルエ、もしかしてお前、その対象が見えてんのか?」

 「見えては無いでーす。でも視えてはいますよ~。ここの木達が伝えてくれますから」

 「ほう、それは予想外」

 「だなあ」

 

 どうやらエルフとかの種族特性らしい。

 ファンタジー的な感じの、森の民っぽいやつなのかね?

 

 「ふーむ。どう伝わってんのかの説明とかできるか?」

 「えーと。キノコさんいわく『胞子付けたら好い感じで苗床になりそうな汚い人間が十二個』と、ハエトリ草さんいわく『油臭いし虫除け臭いから近くに居てほしくない小さい人間が三個』。何となくな解釈だと、『我が儘ボディな女の子三人が大勢のゲス男に追われてる』って感じ?」

 「「あー……」」

 

 例えようが容赦ない。

 というかどっちに対しても悪意が満載の例えだった。

 というか、動物って草木にそういう区別されてんだ。

 

 「主様。人道的な面からならば、『女性が性的に襲われそう』という風に解釈したいが此如何に」

 「うん。俺もそれで良いと思うぞ」

 

 取りあえず、知ってしまったトラブルならば関与するしか無かろうと、テストは中止して合流しようと移動しなおす俺達だった。

 

 

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