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模型術士の鬼盛りサクセス  作者: 雲渚湖良清
二話 【仲間創り】
19/39

人型魔攻重機を造ってみよう

 「ご主人様、これは何のチェックなのでしょう?」

 「勿論、我等三人がクンズホグレツしても平気なベッドサイズの採寸っごぶぁ!」

 「少しは脳天に穴開けて膿んだ部分排出しやがれ」

 

 マイホームに併設してあるガレージ内に、“カカカカカン!”とメアに弾かれる跳弾音が鳴り響く。跳弾とはいっても俺自身に被害が出ないのは何時もの事なので気にしない。【PoF♂】にはフレンドリーファイヤの判定はあるが自己被害判定まである武装は限られる。ハンドガンは含まれないので安全というわけだ。

 

 で、そんな戯れ言は置いといて。

 俺は目覚めさせたカルエを伴い、ガレージへと移動していた。そして立たせたカルエの全身をメジャーで計っている。

 確かにメアの言うとおり、ベッド用の採寸にも使えるが、今使うのは別の目的だ。

 

 「カルエの能力は後でチェックするが、それよりも武装を用意しなきゃならんのでな。まずはコクピット用のサイズが知りたかったんだわ」

 「武装? コクピット、ですか」

 

 リモッドキストである俺には銃器や兵器の類は必須なアイテムとなる。しかし【PoF♂】の戦闘においても必須かと問えば、実はそうでも無いんだな。

 マギボーグや亜人は基本、人間よりも強靭な身体を持つ存在だから、素手やその延長の近接武器でも充分に魔物に対応できる。

 例え魔物が数十メートルクラスの代物でも、その周りを三次元的にウロチョロして攻撃できる能力があるわけだ。

 それは人間未満の身体能力であるエラフも含む。

 エラフの場合、遠距離からの大規模攻撃魔術という手段で、存分に魔物と対峙可能なのである。

 

 「エラフの武装ったら、普通は魔力増幅のアクセサリー系とか杖なんだがな」

 「ええ、はい」

 「ただ内の場合、基本の機動力がちょい異常でなあ。カルエが素で行動する自体、問題外な感じなんだわ」

 「えーと、はあ?」

 

 まあ解らんだろうな。

 

 まだゲーム時代。メアが五体満足な状況での戦闘も、現実と化した【PoF♂】で行動する内容とそうは変わらなかった。人間砲弾のように激しく跳び動くメアが陽動とアタッカーを兼任し、その間に俺が弱点を探索して集中攻撃で倒す。

 場合によっては立場が逆転するのも普通にあるんで、俺とメアは基本、同じような戦闘能力を持つ必要があった。

 それはまあ、レベルが釣り合う頃は俺がメアの戦闘能力に追い付く事を意味するわけで、その解決策が魔攻重機の積極的な活用だった、というわけだ。

 最初は単なる移動の足として使ってた偵察車両型の魔攻重機も、今じゃ頑丈な砲塔まで載せた武装装甲車の扱いになってる。

 将来的には巨大ロボに乗り換えるつもりで、小コストな武装強化に抑えての結果だ。

 

 だが、そんな編成にカルエを追加となると、節約した適正武装で済まそうとは言えない。

 戦闘の舞台は絶えず平均時速三十キロで走り回るんだ。カルエにも、それに見合う機動能力を持たせる必要があるんだよな。

 

 「主様、ちなみに初速からだぞ。最低でも加速二秒後にはその速度でないと魔物に対峙などできない」

 「いやいや、無理ですそれ。魔術って普通、でんと腰据えて呪文詠唱するんですから」

 「だわな。そこはカルエの方が常識だ」

 

 て事で、カルエには移動と魔術行使を両立させる追加武装が必要となる。それが今回の魔攻重機だ。

 

 スペースを開けたガレージに、アイテムストレージからとある部品を取り出す。

 

 「あれ?」

 「おや、これはあの壊れた?」

 「そのとおり」

 

 カルエのクエスト導入で見つけた、壊れた人型魔攻重機である。

 クエスト終了で去った奴隷商人は、回復するなり無事な荷車を自前のマギボーグな馬力に任せて引いてったのだ。大破し残された魔攻重機はオブジェクト扱いでも無かったので、これ幸いと戦利品に加えた。

 最初はスクラップ用の流用パーツな気分だったが、これ、実はカルエのクエストの付加要素だったらしい。

 フレームから破壊されてたはずなのに、回収してアイテム化した途端、魔攻重機は新品へと化けた。

 それこそ新米リモッドキストならメインに使える武装の素体ってな感じにな。

 

 なので、今ガレージには、立派に屹立する全高五メートルの鋼の巨人があるってわけだ。

 

 胴体は卵を横にして、すぼまった方を前方に向けた頭部一体型のカプセルタイプ。ただしカプセルとは言っても組まれた骨材によるワイヤーフレーム状態で、中は丸見え。ちゃんとした外装甲を貼り付けてやらんとならない。

 手足もそうだ。人体骨格とよく似た基礎フレームと稼動させるのに最低限必要な魔巧学式のステッピングモーター類以外には何もない。

 荷運び程度の行動には問題無いが、戦闘には到底使えない状態だ。

 

 「まあアレだ。俺がカルエを得たからな感じの、クエストが用意したボーナスアイテムってとこだろうな」

 「ああ、なる程」

 「はあ、ボーナスですか?」

 

 如何にもなゲーム解釈に俺とメアは納得するが、当のカルエは困惑する。

 まあ当然だ。

 たぶん、俺の職能がマギボーグだったら、この魔攻重機は無かったと思う。むしろエラフには王道の魔術強化用の装備でもあったんじゃねーかな。

 つまりは、クエストのクリア対象によって報酬が変わる仕様って感じだ。

 

 「魔攻重機ってのは完品なら職能関係なしで使える便利な強化武装でな、当然、それなりの高級品だ。普通はスタート直後のカルエに用意できるもんじゃ無い」

 

 それが動かすだけってレベルでも入手できたんだからな。クエスト報酬なら破格のもんと言えるだろう。

 

 そして改めて機体スペックの検分をする。

 

 

 ────────────────────────────────

 

 

 【形式】MF-JGP-L00667-CT

 全長:2.3m

 全幅:3.3m

 全高:5.6m

 胴部:JGP-00667-b

 腕部:JGP-00751-a

 脚部:JGP-00663-l

 主魔動炉:KM-005式五芒星型魔力変換モーター

 副魔動炉:FST-540式ステッパ

 

 

 ────────────────────────────────

 

 【PoF♂】には、現実で活躍した武器や兵器のモッドが付随している。

 これらは武器という括りだけじゃなく、武器を構成する部品単位でデータ化されてて、プレイヤーは職能に拘らずそれらの武装を組み替えられた。

 もっとも、それの専門といえるリモッドキストじゃないと強化とは言えない代物にしかならないんだけどな。

 ただまあ、見た目カッコいいだけで使うプレイには問題無い程度に、現代兵器は誰にでも改造可能なわけだ。

 その基本に則って、空想含みの兵器類も同じ扱いで運用できる。

 残念か幸いかは置いといて、現実の紛争に人型の機動兵器が投入された歴史は無い。しかし人型兵器という概念は、日本以外の諸外国にもアニメを通して普及済みだ。そんな兵器をデータ化して流用する【PoF♂】でも、当然どころか人型は魔攻重機の主役な扱いである。

 

 さて、表示された形式の解説をしよう。

 【MF-JGP-L00667-CT】の最初の『MF』はモデルファンタジーの略だ。つまりは空想兵器という意味になる。

 次の『JGP』は『J』がジャパンの記号となり、『GP』はそのものズバリ、『ガ●プラ』の略となる。そう、この人型魔攻重機は144分の1シリーズの某ロボット模型を雛型にしてるシリーズなのである。

 続く『L00667』は『L』がライト、軽量型を意味し、残りの数字はパーツ番号となる。さすがに商品名をそのまま載せるのは避けた結果らしい。

 で、最後の『CT』はカスタムの略で、この世界で言うなら魔改造品であるという表記でしかない。

 で、その内容でこの機体を評するならば、胴腕脚合わせて三種類の既存機種を組み合わせたカスタム機体という感じになる。

 

 卵型の胴体に比べて腕部と脚部は先端にいくほど細くなるタイプなんで、人によってはアンバランスと感じるイメージだろう。ほら人気なモビルスーツとかは足首がやたらデカい印象があるし。

 しかし実際にあんな接地面積が必要だとすると、まさに触れる物全てを踏み潰すような状況じゃないと使えない。それじゃあ街中で使うなんて無理な事になる。だから人型魔攻重機は、片足の接地面が基本的にタイヤ一本分の接地面と等しくなるように調整されているんだ。

 この機体の場合は軽量型なんで、それこそ軽自動車的な接地面となってる。

 

 で、次は魔動炉だな。

 ぶっちゃければファンタジー的な単なるエンジンだ。

 それも、構造で言えば現実でのディーゼルモーターに近い機能の動力源となる。

 現代兵器の多くは、内燃式エンジンや電動モーターによる回転運動を動力源にして動く。

 特に車両型なんかは、ガソリンの爆発力を魔力に置き換えただけの物を使ってる。制御系が全て魔術化してる分、むしろ現実のより故障の少ない完成技術となってるだろうな。

 

 人型魔攻重機の場合、回転運動を駆動源とするメリットが無いんで、使う物はモーター。つまり魔力を電力に変換するものとなる。

 この場合、絶えず安定して高回転力をし続けるのが大事なんで、モデルとなったのが星型エンジンだ。回転基部が円盤のみで、構造的にも空間的にも、小スペースの小型化も簡単だしな。

 この機体に搭載されてる主魔動炉はその基本扱いな物で、後々強化もしやすいエントリー品といえる。

 副魔動炉は名前の通りステッピング機能を持つモーターだ。ただ回転するだけじゃなく、搭乗者の意思どおりに必要な制御駆動のみをする。型式からこれもエントリー品だが、改造如何でそこそこ強化できる品でもある。

 

 「駆動系の強化に外装と武装と。まあ一から造るのは変わらんけど、何とかなるだろ」

 「はあ?」

 

 元より、過去のヤンチャで俺のアイテムストレージには魔攻重機まるまる一体に遥かに余るジャンクが転がっている。あり物の寄せ集めでも何とかなりそうなイメージはあった。

 

 「主様。なんかスゴーく怪しいニタリ顔が不気味だぞ」

 「失敬な。初めて創る人型魔攻重機にオラワクテカしてるだけだぞ」

 

 そう。リモッドキスト歴はある俺だったが、実は空想兵器系にはほとんど手を出して無かったのだ。

 なんせ巨大ロボット創ろうとしたらその経費に悶絶したからな。節約思考だとあり物が安いんでソレバッカリ造るしかなかったのだ。

 

 メアに使った片腕一本のコストとNATO規格の弾丸十万発が同じだ。どんだけ空想兵器のコストが高いかって。

 もう、マジ泣ける。

 

 こんな機会でもなきゃ、俺が人型魔攻重機に手を出すなんか、【PoF♂】が現実となっても何年かは先だったろう。

 と言うことで。

 

 「俺様、今無性に『ヤってやるぜ』な気分なわけよ」

 「「おおっ」」

 

 そこで視線を俺の下半身に向けるメアとカルエだが、敢えて突っ込まん俺だった。

 

さて、間が空きました。

自分がインフルでぶっ倒れ、回復したと思ったらまた問題発生。

身内がぶっ倒れました。


現在、プチ介護な感じでございます。


そして現状、書ける暇と気分が符合した時のみ書けるか? な感じなので、投稿時間の設定するのもナンダカな、かなり不定期な進行となります。


挿絵代わりに模型で情景しようか、なんて思惑なんか異世界の彼方の戯れ言と化しました。


なんともかんとも、ですなあ。


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