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模型術士の鬼盛りサクセス  作者: 雲渚湖良清
二話 【仲間創り】
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俺の理想のカルエ

 俺達はエンマリオのホームへと帰還した。

 一応受けたクエスト自体は完了させたが、それより優先する話ができたので詳細は割愛だ。

 

 で、ホームで俺が使ってる部屋のベッドには、今、一人の少女が横たわり寝ている。

 名は【カルエ・エラフ】。予定外の突発クエストで入手した、俺用の奴隷NPCである。

 

 観た感じは十代前半な、まだまだ子供な印象が強い。

 ただエルフ的な特徴を除けば、長めのストレートヘアとかメアより巨大な部分的隆起やらで大人っぽくも見える。

 なんともあやふやで不思議な雰囲気を漂わせるのは、やはりエルフの特性なのかもしれない。

 

 「ふむ、呼吸、心音。共に平常だが起きる気配はないな、主様」

 「ああ。別に処置が遅かったわけじゃないはず、なんだがなあ」

 

 奴隷商人なマギボーグのオッサンは、麻痺を解いたらあっさり復活。共に気絶から起きた二人のエラフ少女を伴って去ってしまった。

 まだ目覚めないカルエを俺に押しつけて、な。

 

 ゲーム時代の【PoF♂】を引きずる【ワンダリングクエスト】の仕様かもしれんが、なんとも薄情な展開だった。

 

 

 『助けてくれてありがとうな。気づけばいきなり襲われてよ、反撃前に麻痺らされてどうにもできなかったんだ……』

 

 そう言って奴隷商人は簡単なあらましを説明した。

 

 奴隷商人は懇意にしているエルフの隠れ里から、エラフ希望の少女を定期的に人里まで運んでいた。どうやら奴隷って言葉は使ってはいるが、エルフ的には単に出稼ぎな感覚らしいのな。

 エルフの特徴で有名な部分としては、その長命がある。

 奴隷となれば主人となる人間に一生付き従うんだが、結果から言えば人間の方が先に寿命を迎えるわけで、その死に別れで奴隷契約は解消されるってわけだ。

 その時点で里へ帰るのがエラフの定番の流れであり、里に帰ったら、長年主人から得た子種を元に里の子孫繁栄に励むのだとか。

 

 ……なんつーか、エルフってカンガルー並みに便利な生態してたんだと知った。

 いやほら、カンガルーって砂漠の過酷な環境で生きてるからか、子育て可能な環境を待って出産できるように、ある程度の期間は受精卵のまま体内に保存できるんだと。しかも出産自体が母体に負担少ない形でできるわけで、有袋類、マジすげぇって感じなわけだ。

 

 因みにエルフは、軽く百年は保存ができるそうだ。

 たまに後継者断絶問題で悩む貴族のために、何代も前の血統を里に隔離避難させる仕事もあるとか聞いた。

 どこの遺伝子バンクだという話だ。

 

 という事で、カルエを含むエラフの少女達は将来安泰っぽい主人さえ見つけられればいいわけで、魔物を軽く撃退できる俺はその条件に合うのだとか。

 本来、奴隷である以上は金銭的な売り買い部分も発生するんだが、今回の救出は立派な仕事と見なされるんで、カルエ自身が報酬として俺に譲渡されたってわけになる。

 もしあのまま死なせたら、クエストは失敗にならないが報酬は金だった。

 正直、どっちの報酬が正解なのかは判断できない。

 

 「まあ主様の場合、もし我がいないと過程したならばカルエを一も二もなく入手したであろう?」

 「その断言の理由。聞きたくはないが一応聞いてやる」

 「ほーらタユタユ~。ぷにクパァっごふ!」

 「言葉で言えやコラ。擬音とポージングでやんなっ!」

 

 寝こけるカルエでパントマイム。素速すぎる動きで止める間もなくやったメアには、後からゲンコツくれるしかない。

 まあ、眼福ではあるが。

 それはそれ、これはこれだ。

 

 「うう、じゃあ言葉で言うが。合法的に少女に対して毎晩まいば……。うん痛い。もう言わないから。ゴメンナサイです主様」

 

 改めて発狂発言しかけたメアに三点バーストだ。

 『カカカン!』と銃弾は無力な音をメアの額で奏でたが、一応バカを止める事はできたっぽい。

 

 「しかし、こうして実際に触れてみるとプレイヤーとかNPCとか区別しきれるとも思えないぞ。主様。ほら」

 

 体勢的に全身で肌と肌のスキンシップ中なメアである。正直、男の俺が凝視するには危険極まりない絵なんだが。

 メアは基本変態なので置いとくとして、今のカルエにも服らしい服は着せてない。元々の簡素な服は魔物に襲われた時点でボロボロとなっていた。土に汚れた布の端切れといっていい状態だ。なので脱がして風呂洗いを済まし寝かせてるんだが、その工程をメア任せにしたので、カルエもこの結果となってるわけだ。

 

 「なあメア、寝間着くらいは……」

 「ふっ……、サイズが合わんのだよ、主様。特に胸部が」

 「あ、うん。スマン」

 

 俺にとっちゃあ、エラフもドラフも小柄な少女でしかない。だが両者を比べれば、より子供っぽいのは残念ながらメアとなる。

 どうにも黒い感情つきのメアの慟哭の言葉には、目尻に光るものもあったんで素直に謝罪を入れた俺だった。

 

 「仕方無い。とりあえず間に合わせの服とか作るか」

 「くう、主様お手製のブラ。我には到底必要無い魔性の装備がっ」

 「いやそれは作らねえから。ていうか作ったことねーからな。あ、ちゃんとレシピとかデフォであるのか」

 

 生産職能歴は長いが、女性用インナーを作ったことは無かった。だから否定しつつもつい、レシピ検索をかけたら出てきたので驚いた。

 ほう、ふむ。なんと立体的な構成図だ。これはある意味、模型趣味持ちには関心高い感じにも思え……。

 

 「主様のバカぁ!」

 

 視界に浮かぶ立体的な映像レシピ。デフォルト仕様のそれをほぼ立体感無しにまで変化させたが、残念ながら、それでもメアには余るのが現実だった。

 えーと、伸縮布地のみのスポーツブラとかグンベ女児用とかレシピねーかな。

 などと思考したのが丸分かりだったのだろう。

 珍しく年相応の少女っぽい反応を出したメアが涙の光を空中に残して、ドア蹴破って戦略的撤退をしやがった。

 

 「……まあ、後でフォローしてやろう」

 

 さて。

 まあ結果的にメアの退場で、俺の目的を叶えることができる。

 

 実は、カルエが目覚めない理由は解ってんだ。

 今のカルエは、まだ初期起動をしていない存在だ。いわゆる、キャラ設定前の素体状態なのである。

 奴隷アイテムとして入手はしたが、その所有者である俺が設定をして、ようやく活動するって段取りを取る必要があるんだな。

 

 「まあ、ある意味メアの言うとおりだよな」

 

 あの対話式ヘルプ機能は今は沈黙している。

 どうやらゲームとしての【PoF♂】と、現実としての【PoF♂】で決定的な齟齬を出す部分にしか反応しない仕様らしい。誤解が出そうな部分に事細かな註釈が必要って時だけ機能する。

 普段は自分が知りたい部分を検索かけて調べる形式なんだと。

 でないと、未知への向上心が育たないとか何とか。

 なんとも意味不明な仕様だよ。

 

 で、対話式ヘルプから、そんな説教じみた説明時に知ったNPC用の奴隷契約なんだが。

 まあ、基本は俺の願望を叶える感じに、奴隷情報を作成するんだ。

 性格は? 容姿は? 言葉使いは? ってな感じに基本な部分から、仲間として必要な能力の設定とかも含めて全部な。

 もう新キャラの作成をすると言ってもいいだろう。

 

 ただ、それはゲームだからこそ通じる仕様なわけで、現実でそんな事をしようとすれば、そんな対象は『おぎゃあ』と生まれたばかりの赤ん坊になる。

 しかし即戦力が欲しいのに、そんな育メン生活に足突っ込むのは真逆な状態なわけで……。そのコジツケ仕様の一つがコレなんだと。

 

 ま、クエストの体裁というか、または異世界ファーヴが誕生する前の仕様というか。これはあくまで、妖精界経由で仲間を得たイベント用の、特殊なパターンという事らしい。

 

 が、しかしだ。

 

 「この方法ってさあ、つまりは理想の嫁創りって事なんだよな。なんて言うか、もし他人に知られたら痛いなんてもんじゃねー大怪我イベントだよな」

 

 嫁ってのは置いといて、理想の女性。理想の彼女。俺の願望が形になった生きた何か。……それが現実となるんだ。

 まあ単純に喜べるなら問題無いんだが、ふと冷静になった時にだ、俺はそんな対象と冷静に向き合えるのだろうか?

 

 そんな羞恥プレイ用なキャラ作成と化す気がして、いまいち踏ん切れないんどよな。

 

 「しかし放置にも限界はあるよな。この子はしっかり生きてるし」

 

 ゲーム時代ならな、このまま何年も放置しようが問題無い。単なるデータだから永遠に寝たままも可能だし。

 しかし現実の【PoF♂】では、『カルエ・エラフ』という名を持つ奴隷少女は例え意識や性能が未知でも生きている。今は停止してんじゃなくて昏睡しているだけとなる。

 ぶっちゃけ、わずか一日近くこうしてるだけでメアによる下の世話を何度かしてるわけで。実は真っ裸で寝かせてるのも、その対応をしやすいって理由からなのだ。

 

 「うーむ。このまま放置は、結局何らかの羞恥プレイって事か……」

 

 俺の精神面とこの少女の状況面。どちらがキツいかは判断が微妙だ。

 さすがに【PoF♂】の基本レシピに【オムツ】は無い。

 育児要素のある世紀末ファンタジーとか新し過ぎるジャンルだし?

 逆にそれ以外でオムツが必要な状況とか、ディープでニッチ過ぎて掘り下げたくない内容過ぎる。

 

 「俺の理想……じゃなくて、なんかモデルにできるようなのが有れば楽なんだがな」

 

 “ピコリン”

 

 「お?」

 

 対話式ヘルプは停止してるが、どうやら状況停滞時のサポート的な機能は残っているっぽい。

 インフォなチャイムの後に出たのは、正に流用サンプルとも言える人格の一覧だった。

 

 「性格、じゃなくて人格って部分に突っ込みたいが、これは助かる」

 

 このまま使うか参考に留めるかの判断は保留だが、今はこういう情報自体が嬉しい。

 結局、決断の先延ばしなんだが、俺はサンプルの概要とやらをチマチマとチェックするのであった。

 

 

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