2話
とあるマンションの一室にボールチェアの中で毛布におさまりながら寝ている青年がいた。
そしてその一室の台所には綺麗な黒髪の長い少女が朝食の準備をしており、沸いたお湯に味噌を溶かし豆腐をいれ味を確認している。
少女は無表情で頷いた。
ダイニングテーブルには鮭の塩焼き、卵焼きなどの朝食らしい物が二皿ずつ並んでいる。
みそ汁をよそいテーブルに並べるとリビングのボールチェアで寝ている青年を起こしに行く。
青年の肩を揺らして
「めし。」
と声をかけるも青年は起きず
少女は手で青年の頭を思い切り叩いた。
パンっといい音が響き青年が目を覚ますと少女は
「優、起きろめしだ。」
と声をかけた。
青年、優は目を擦りながら少女に目を向け
「彩優、いたい。」
少女、彩優にジト目で呟いた。
「今日から新学期だ。
それにほら、あいさつあるだろ。」
と言った。
そしてボールチェアからのろのろと優はおり彩優の言葉に「そうか。今日から2年生か。」
と呟きながらリビングにある襖に向かいあけた。
そこは和室だった。
和室には仏壇があり望遠鏡も置いてある。
そして仏壇の前に正座し2人は手を合わせ目をつぶった。
「おはよう母さん。
今日から高校2年生になったよ。」
と優は呟き目を開けると仏壇に置いてある女性の写真を無表情で見つめていた。
彩優も同じように目を開き写真を無表情で見つめて
「お義母様おはようございます。
優のことは任せてください。」
と言った。
優はその言葉を聞き彩優を見つめていたが、その視線に気付くと
「なんだ?」
「いや、お義母様って僕たち結婚してないでしょ?」
その言葉に彩優は目を見開き
「もう確定事項だろ?
それとも他の女に目移りしたのか?
でもこの春休み優は私とずっと一緒にいたはずだ。
ならケータイで連絡を取れる学校の女か。優を誘惑したのかどう殺してや「まってまってそういうことじゃなくて僕たちまだ結婚できる歳じゃないでしょ?ただそれを言いたかっただけ。」そ、そうか。
なら優は私とずっと一緒にいたいか?」
彩優は気付いたら優に詰め寄っておりそのまま優に聞いた。
優はその言葉に無表情で
「当たり前だよ。
君がいない生活は考えられないよ。」
と応えその言葉に彩優は納得したようで何度も頷き
「めしが冷えてしまう。食おう。」
とダイニングテーブルに向かった。
どちらも普通の人が聞けばおかしいと思うはずだがこの2人には当然のことなのだろう。
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2人は向き合う形で椅子に座ると手を合わせると
「「いただきます」」
と声を合わせ言った。
優がテレビをつけるとちょうど占いがやっていた。
「ん、かに座1位だってよ。
ラッキーアイテムは犬か...犬はアイテムなのかな?
犬ってアイテムなの?」
彩優はその優の無表情で言った言葉に
「アイテムではないだろう。
今日学校終わったら犬のコスプレするか。」
と無表情で言った。
優は箸を止めて彩優のことを見つめ間を置くと
「ん?よくわからない?」
と混乱している。
「だから、私が犬のコスプレをすればいいんだろ?
さっきそういう意味で言ったんだろ?」
と無表情でなにを言っているんだと言う目で優を見ている。
優は無表情で表情を変えずに
「どういう捉え方したの。
というより無表情な犬耳尻尾か。
犬って表情豊かだから無表情な彩優には向いてないよ。」
と言いみそ汁をずずずっと啜った。
彩優はその言葉に箸を止め
「ん。優だって無表情だろう。」
「だね。まあ仕方ないよ。
それよりこのみそ汁いつもより美味しいね。」
彩優はその言葉を聞くと待ってましたとばかりに大きく頷き無表情で
「当たり前だろう。
私の血を入れたんだ。」とふんふん頷いている。
「朝から冗談きついよ~。」
と言うが彩優は優のことを見つめるだけ。
「まじで...?」
「ああ。」
優はその言葉を聞くと気にすることなくみそ汁を飲み干した。
「彩優のならへーきだよ。」と無表情で言い彩優の方も
「冗談だ。
味噌を変えただけだ。
まあ私はそういう所を好きになったんだがな」と無表情でデレた。
さすがにそこまでやらないだろうと一人頷いている優。
会話の内容と、無表情でノロケているこの光景をもし他の人が見たら異常に思うことだろう。
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朝食を終えると支度をし、ちょうど家を出る時間にさしかかり2人は制服に着替えていた。
ミルクティー色のお揃いのカーデガンをワイシャツの上に着ておりズボンとスカートは灰色だ。
一般的な制服だかこの2人は容姿が整っているためうまく着こなしている。
そして、2人はカバンの中身を確認した。
「忘れ物はないか?」
その言葉に優はもう一度確認しカバンを、開き彩優に見せると
「始業式だから持ち物なんてほとんどないって。」
と言いその言葉に彩優も頷くと二つのカバンと二つのヘルメットをそれぞれ持ち玄関を出た。