11話
夕方6時になると、優と彩優の寝ている部屋でスマホのアラームが響いた。
「んっ...」
彩優は目をこすりながら起きる。
だが、まだ優は寝ている。
彩優は優の寝顔を見て
「晩飯作るか..」
と、呟いた。
トントントンと台所から聞こえてくる音。
「ふぁ~...」
優はその音で目が覚めた。
そしてボールチェアから降りると台所に優は向かった。
「何か手伝うことはある?」
優は彩優の横に行き話しかけた。
「ん?目が覚めたか。
...そうだな。
なら、オーブンでグラタンを焼いてくれ。」
彩優は優に気づくとまだ焼いていないグラタンを指さしそう言った。
「わかった。」
優はグラタンの入った皿をオーブンに入れ時間をセットし焼けるのを待つようにオーブンの前にイスを持ってきて座っている。
「ふふっ..」
彩優は家では常に無表情なのにその後ろ姿を見ると微笑んだ。
優はそれに気づくと
「どうかしたの?」
と、彩優の顔を見た。
彩優はまた
「いや、なにも」
と、無表情になり答えた。
◆
夜ごはんを食べ終え2人は風呂をあがりリビングでテレビをみてくつろいでいる。
彩優の髪の毛は少し湿っていて少し色っぽい。
「今日はほんと疲れたね。」
優は伸びをして言った。
「そうだな。
特にあの雌ネコはな。」
彩優は思い出すように言う。
「ベタベタしていた。」
目のハイライトが消えていた。
優は彩優の頭に手を伸ばして撫でて
「まあ、スキンシップだと思うよ。
気にすることないよ。」
と、言った。
「んっ...」
彩優は目を細めて気持ちよさそうにしている。
優は彩優の頭から手を離した。
「あっ..」
彩優は名残惜しそうに優の手に手を伸ばした。
「今日は僕の部屋で一緒に寝る?
明日も学校だよ。
もう寝よう。」
と、優は自分の部屋に向かった。
彩優も枕をもち優の後ろをついて行く。
優のベッドに2人は並んで寝ており
「もう、電気消すよ?」
と、優は言い彩優もそれに頷いた。
窓の外から月明かりが部屋を照らしている。
しばらくして優が眠りについた。
彩優はまだ眠っていなかった。
そして、さらに優に近づいた。
そして、優の腕に抱きつくと
「すんすん...」
優の首の辺りに顔を近づけて匂いを嗅いでいる。
「はぁ~...」
しばらく彩優は優の匂いを嗅いでいると、
「んっ..」
優が寝返りをしようとした。
それに気づいた彩優は優から離れる。
優は彩優の方を向いた。
彩優は優の顔を見つめている。
そして、また優の腕に自分の腕をからめた。
「..だれにも、渡さないよ。
あの雌ネコにもあの女にも。」
そう呟くと彩優は眠りについた。
難産....