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無窮  作者: 華 雪うさぎ
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無窮〜第6章〜

【第6章】


マンションの外は、のどかな朝を迎えている。仕事行く学生や、会社に赴く仕事組等が各々の場所に向かう中、それが私のマンションのベランダから見える景色である。ベランダの淵に、カラスが鋭い爪と無機質な眼差しで止まった。

毛質は、滑らかで真っ黒な毛質のカラスがベランダの淵に止まり、部屋にいる私をガラス越しに見ている。

私の白い世界に舞い降りた、悪魔の使いの様だ。

鳴く訳では無く、ただ私をその眼差しで静かに見ている。


その、カラスが止まっていたのは、数分だったのかも知れない。でも、私が感じたのは数時間に近い感覚であった。ガラス越しで対峙をしていた中で、私のスマホが着信を知らせる音が鳴る。

カラスから目を離せない呪縛から解放をされた。


鳴り止まない着信に、スマホを置いてる寝室に向かう。設定をマナーモードにしていたはずだから、着信音がなる事自体変ではあったが、その時の私には気付く事が出来なかった。

鳴り止まない着信音に、急ぎ足で赴く。

正直、その音に急かされてる様で、尚更焦る。静寂を打ち壊した着信相手に怒りを感じるレベルだった。


スマホを取り上げてみる。

表示をされている番号が、数字では無く全て、✖️✖️✖️ー✖️✖️✖️✖️ー✖️✖️✖️✖️だった。それを見た時に、頭の中で自分の見えてる視界がグラグラと揺れる様な感覚に陥る。

昔から、偏頭痛持ちではあったが最近の私の体調が変なのは明白だ。

嵐の中船を出していて、大津波に遭遇している様な酷く不安定なバランス感覚だった。

鳴り止まない着信音に、怒りが込み上げてくる。知らない番号からの着信には普段出ない。

数字表記で無かった為、不信感から【拒否】を押す。

鳴り止まない音を、とりあえず止めたかった一心で一杯一杯だった。


数分後に、又✖️✖️✖️ー✖️✖️✖️✖️ー✖️✖️✖️✖️から着信が来る。

スマホが壊れたのかと思ったが、仮に仕事関係からの着信なら【留守電】にすれば要件を残してくれるだろうと思った為、【留守電】に設定にしてみる。

昔、職場からの後輩からの着信だった事もあったからだ。出先でスマホの電源が切れて、取引先の電話を借りて私に連絡して来た事があったからだ。でも、その時は✖️から始まる番号では無かったから、何かが変だったが。


一時間に30件、✖️から始まる着信があった為スマホを一旦テーブルに置いておく。マナーモードになっているかも確認を再度してみて。

マナーモードには、最初からなっていた。何故鳴っていたのか?やはり最初から、スマホが壊れていたのか?混乱はしたが、今は監視カメラを見る事に専念しようと決めた。


監視カメラは常に起動をしておいた。

昨日のベットを映している側の監視カメラを見てみる。

昨日の夜中の0時から、玄関先と同様に再生してみる。

そこには、静かに寝ている自分が映っていた。寝息も聞こえない為に、深い眠りに就いいてる事が分かる。

自分で、自分の寝姿をモニター越しで見ると言うのが初めてだった為に、不思議な感覚だった。

食い入る様に見ていると、熟睡している姿を映している画面に僅かな音が聞こえ出してきた。

「カタッ……カタッ……」と僅かに聞こえている。

私の部屋の中で音が鳴る物はない。監視カメラも、僅かなモーター音はするが「カタッ…カタッ…」とは決して鳴らない。

私自身が寝返りを打つ時に何かに当たり立ててた音なのかとも思ったが、その可能性は決してない。

何故なら、私は深い眠りに就いていた為に全く寝返りすら打って無いからだ。

僅かな音だが、蚊のモスキート音みたいに気になったら止まらなかった。


夏場の私はタオルケットを掛けて寝ている。そのタオルケットがベットの足元にまで落ちていた。

寝つく時に、寝返りか何かで自然とタオルケットが少し落ちたのか。

ベットのマットレスの下はベットを支えるフレームと脚以外何もない空間であった。

その何も無い空間に落ちているブランケットが、僅かに動いた様に見えた。

時間は監視カメラを再生してから、時刻はAM2時を過ぎていた。

又「カタッ…カタッ…」と聞こえた。

その音の後に、先程動いたブランケットの端辺りのベットの下が僅かながら動いた。

一瞬の出来事だった為に、風で動いたのかと思ったが窓は開けていなかった。エアコンかと思ったが、強風だと喉を痛める為に弱の設定にしているから、まずブランケットを動かせる程の威力は無い。


その音は、それからも鳴り続ける。


時刻は2時15分近くになり、異変はより明確な形で監視カメラに映る。

ベットの下から、黒い靄の様な物が出てきている。見ている自分でも、徐々に背中が絶対零度の様に凍るのが分かる。

ドンドン黒い靄はベットの下から流れてくる。その中監視カメラに赤いノイズが走り出す。

その数分の間に、私の心臓が止まるもっとも怖い事に監視カメラ内は起きていた。


時刻は2時24分

ベット下の空間を隠す様に掛かっていたブランケットが、少しずつ動き出した。

先程まで動いてた僅かな動きでは無い。

ブランケットの下から、赤い物がスルスルと出てくる。

それが何か分かった時、恐怖は増した。

人の手だ‼︎

私の心臓が飛び跳ねた。完全に凍った瞬間だった。

赤い手が、ユックリとベット下から出てくる。ベットを伝い寝ている私の側に移動をしてくる。

赤い手の部分以外は、人間の形状をして居ないが赤い霧の様な形をしている。人だとは思えた。

赤い手からは、赤い液体が滴り落ちている。


その赤い手が私の側を動いている中、私は熟睡をしていた。

ただ、時折苦しそうに寝顔が歪む。


時刻は2時39分

赤い手は、私の手から腕、さらに胸元から首元に移動をしている。


時刻が2時40分を指した段階で、その赤い手は止まり赤い靄の動きも止まった。

苦しそうに寝顔が歪む私の顔が見える。

2時41分を迎えた段階で、私の首を触っていた手は消えた。

この恐怖感は、どの様に言えば良いのだろう。見当たらない。

今まで、玄関先に現れる者とは違い私の寝ている側で、理解が出来ない事が起きるのは今回が初めてだった。頭が真っ白になる。自分の理解出来る事では無かった為である。


しかも、玄関先に現れる黒い人型の靄とほぼ【同時刻】に、今回の赤い手と霧の現象が同じなのである。

2時45分に私が目を覚ます。

先程まで、赤い手に触られていた時の苦しんだ表情ではなく、気怠い感じの目覚めであった。


そのモニターを見て、絶対的な恐怖に完全に支配をされていた。

何故なら、私がモニターを見ているのが自分の寝室だからである。ベットを背中側ににして座りながら見ていた。

後ろを振り向く勇気など持ち合わせてはいなかった。片手で、自分のカバンを取り後ろを見ない様にしてリビングに急いで向かう。


リビングに入った所で、誰かに見られている事に気付く。ベランダに先程いたカラスが一羽止まっていた。嫌だ……見ないで……お願いだから。

その禍々しい目で私を見ないで…。

だが、カラスはピクリとも動かずに静かに私を見ている。


手にしていたスマホが静かにバイブの振動が響く。

見てみると、又✖️から始まる番号からの着信であった。パニック状態で【拒否】を押したつもりが、やはり冷静さが無かったのか?【応答】を間違えて押してしまった。しかもスピーカー対応で

スピーカーからは、駅のガード下の様に凄い音がしている

「カタッ…カタッ…」とノイズの中に響く。

先程、モニターで聞いてた音と同じであった。それに気付いた時、私の手からスマホが落ちた。


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