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無窮  作者: 華 雪うさぎ
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無窮〜第4章〜

今回は、短い内容になりましたが怖さを楽しんで頂けたら嬉しいです。

フッと目が覚める。今何時なんだろう。

部屋の中は、つけていたライトが淡く照らしている。暗いのを酷く怖い私にはライトをつけながら寝るのが日課であった。その為、少しでも気持ちが安らぐ様に家電量販店で黄色いランプシェードも衝動買いした。黄色い花柄に蝶が飛んでいる柄で、私は気に入っている。

そんな明かりの中で時間を確認する為に、ベットの横にある時計を見ようと寝返りを打ってみる。

ライトスタンドの横に置かれている時計は、2時45分を指している。

て事は、まだ深夜と朝方の狭間の時間帯。


まだ、完全な目覚めの時間帯では無いからか?身体は、まだ寝ていたいと訴えてる。今、気を少しだけでも緩めたら、二度寝出来そうなぐらい眠たい。でも自分の中で、何かを忘れていると言う警告音がする。

監視カメラだ。ベットの側のミニテーブルに監視カメラのモニターを置いた。玄関先と寝室を映す二台のモニター。作動をしている赤いランプが付いている。

ホッと一瞬した。

ベットから必死に身体を起こす。何かが映っているかも知れないと言う、恐怖感を拭い去る為にも、確認して寝ようと思ったからだ。防犯カメラを買っても、何も映って無い方が良いに越した事は無い。矛盾かも知れないが。

監視カメラが録画した映像を見てみる。一番気掛かりな玄関先の映像を再生する。映す時間を夜中の12時からにした。

一瞬ギクリとした。何故なら、人が映ってたからだ。でも、遅い帰宅をする他の部屋の住人の様だった。手元にコンビニの袋を下げている。

このマンションは、現代社会の闇の様な人間関係の浅さを反映している。隣の住人が誰が住んでいるか?全く知らないからである。大家さんからも、特別挨拶とかは要らないと言われたのは、こぅいう事の表れである。皆んな、生活をしている時間帯がバラバラで挨拶に行っても留守が多いからだと。

1時を過ぎても、遅い帰宅をする住人が通り過ぎるだけであった。2時近くになると、何も映って無い。住人が寝静まった証拠である。


異変が起きたのは、2時15分過ぎてからだ。この監視カメラが何かの音を拾っている。

「うぅうう……」遠くで、何かが低い地鳴りの様な音を立てている。最初は小さく聞き取れないぐらいの音をだったから、睡眠が浅い私の聞き間違いかとも思ったが、違う。犬かなって思ったが、このマンションはまず、ペット不可だ。

マンションの廊下の奥から、低い禍々しい音が近ずいてきている。マンションの奥は、監視カメラの映す範囲外であった為、音を出している者の確認が全く取れないでいた。

眠気が、一気に遠い退いているのが分かる。この音は危険だ。

自然と、両手を握り締めていた。得体の知れない音に、自分で取れた臨戦態勢であった様だった。

徐々に、近付く音と反映して赤外線で映すナイトビジョンモードのモニターの画面に黒い靄みたいな物が左端から流れてくる。

その音は、犬の唸り声にも近いが、やはり何かが違う。聞いていて、自分の神経が逆撫でられる様な不快感を感じる。

どんどん「うぅうう……」と近づいて来てる。モニターの時間は2時24分。

その時に、新たな事が起きた。「うぅうう……」と響く音が近付くにつれて、「ズルズル」と何かを引きずる音がし出した。2時過ぎて、どれだけ近隣住民に興味のない住人であっても、出歩かない時間帯である。

さらに、黒い靄みたいなのがモニター画面を侵食し始めている。玄関先の廊下の電灯がピカピカと消えたりついたりしている。


「うぅうう……ズルズル……」このリフレインに、私の感じる不快指数が高くなって来ている。

モニターの画面に、表示をされている時間が2時30分をさしている。

モニターの画面が半分程、黒い靄で覆われている中で、さらなる異変が起きた。

左端から、黒い靄みたいな人型の塊が、私の玄関先目掛けて酷くユックリと歩いている。「ズルズル」と言うのは、この黒い塊が歩く度に発生する音の様だった。

その、酷い音を立てている塊が私の玄関先まで着くまで、約10分掛かった。私が、同じ場所を歩くなら2分も掛からない距離である。それを、10分も掛けて歩いて来られていた私の神経はガタガタだった。

確かに、得体の知れない人物から監視をされているのは怖い。だからこそ、監視カメラを設置した。でも、この人とも呼べる様な者ではないのが、映るとは思わなかった。違う恐怖心で私の平常心はズタズタだった。


その黒い塊が、私の玄関先に着くと私の玄関扉に向く。顔なんか分からなかった。ただ口の端がニヤッとしたのは分かる。と同時に、玄関先で「カタン」と音がした。

これが、毎日届く手紙の送り主なのか?って気付く。余りにも現実離れしている事に呆然としていたが、自体が明確になると、背中を冷たいナイフで撫でられたかの様に冷たい。


その黒い塊が、封筒を投函した後モニターにノイズが走り始める。砂嵐と言っても良いぐらいに酷いノイズが走る。それが五分続いた後にモニターが回復する。

そこには、静かなマンションの廊下と、黒い塊や黒い靄は綺麗に消えていた。そんな物が元からいなかったかの様な静かさである。遠くで、バイクの走る音が響いてる。

モニターの時間は2時45分を指している。私が起きて時計を見た時間だった。それに気付いた時には玄関に近寄る気持ちに、全くならなかった。全身がガタガタと震えている。こんな恐怖は生まれて始めてだった。


私が目を覚ます直前に起きていた現実を見て、眠れる状態では無かった。

「怖い……嫌だ、こんな事」布団の中でタオルケットを全身に巻いて朝日がさすのと、震えが止まるのを静かに待っていた。

玄関先に、あの黒い塊から封筒が届いているのは、分かっている。でも、今の私には直視出来ない現実に項垂れて布団の中にいるのが精一杯だった。

その中で、静かに目を瞑る。思考のフリーズ。意識を失って行くのが分かる。


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