第7歌
年末年始企画 最終回はアイドルは誰!? 最新話です!!
なんとか5日間連続更新ができたので、本当に嬉しいです!!
やはり生で聞くメロディーは音楽媒体を通して聞くのとは違った。
遥かに良かった。
奏でていたメロディーが悲しいものであったことも相まって
俺の瞳からはいつの間にか涙が流れていた。
(これが歌手の生歌を聞くということなのか・・・)
4分間しかない一曲の中で、俺の心はきつく締め付けられ、
そんなことを感じていた。
そして今までは興味がなく、少し馬鹿にしていたライブに行く
人々の気持ちがようやくわかった。
こんな短い時間で、考え方が180度変わる。そんな力を彼女は持っていた。
「ふぅ~。久しぶりに歌詞を乗せないで歌っちゃった~」
1曲を奏で終えたのか、空はふっと息をついていた。
そして先ほどとなんだか違う人間のように俺の目には映っていた。
先ほどまでは、俺と同じ男子制服を着ていたはずなのに、
なぜか俺には前にテレビで見た時のアイドルの服装が重なって見えて、
髪の毛もその時のものに見えていった。
それくらい、俺の心に響く音だったのだ。
しかし、俺の中には微かな違和感があった。
(どうして空は今まで自分が優であるということを明かさなかったんだ!?
むしろ知らないふりまでして・・・。
それにもし知られたくないのなら、なんで今歌ってくれたんだ?)
明かさなかった理由としては、
単純にアイドルであるということがバレたくないという想いからだということは
少し考えればわかった。
だけどそれならバレるリスクを冒してまでなぜ俺の家に来たのだろうか。
わずかな間の中、俺の中で彼女に質問したいことは急激に増えていった。
しかし、これらを聞いてしまってもいい事なのか、迷ってしまう。
「あのさ、優だよナ!?」
そしてついに問いかけた質問は、
そんな確認するだけのものとなってしまった。
それもあまりにも緊張しすぎたせいで、最後で声が裏返ってしまった。
(うわぁぁぁぁぁぁぁ!!恥ずかしい。俺ってこんな奴だっけかぁ!!)
俺が自分で言って狼狽えるを見てなのか、いきなり空はフフと声を出して笑っていた。
「そんなにも緊張しなくてもいいよ~。ふふふ。ご名答だよ。
ボクが大空優だよ~!!えへへ、びっくりしたぁ??
なんだか君がボクの音楽に乗ってくれてるのを見てたら、
こっちも楽しくなってきちゃって~。ついついいつもの癖で口ずさんじゃったぁ」
空はとうとう自分が大空優であることを教えてくれた。
そのことが単純に嬉しかった。
なんだかさっきまでの空とは話し方が違うような気もしたが、
そんな些細なことはどうでも良かった
「そ、そうなんだ!!それじゃあさ、なんで男子の制服を着ているんだ?
それになんで知らないふりまでして俺の家に来ようと思ったんだ?
バレるかもしれないのに。あ、あと・・・」
ついつい調子に乗ってしまった俺はまくしたてるように
質問を並べそうになったのだが、3つ目の質問を口に出そうとした瞬間、
いきなり優の指先が俺の口にあたり、言葉を止めた。
「ちょっと落ち着いた方がいいと思うな~。僕はどこにも逃げないんだからぁ、
ゆっくり一つずつ質問してほしいなぁ~。」
そして彼女から発されたのはそんな言葉で、苦笑いを浮かべていた。
俺は申し訳なくなり、少し口をつぐんだ。
「あぁ、もう!そんなあからさまに落ち込まないでよ~。
ボクも悲しくなっちゃうでしょ~。はぁ、それじゃあ、
さっきの質問に順に答えていってあげるね~!!
まずボクがなんで男子制服を着ているのか!だよね~?それはね~。・・・・」
先ほどまでの落ち込みはどこへやら、
彼女からの言葉の続きを待つように喉を鳴らした。
「ひ・み・つだよ~!!これはもっと仲良くなったら教えてあげよ~」
彼女から帰ってきた答えはそんなもので、当然悲しさが倍増になった。
しかし、最後に付け加えられた言葉から、
もしかして今後も会ってくれるのかという期待が生まれた。
それが分かっているのか、彼女は頷きながら、言葉を続けた。
「それで、次の知らないふりしてここに来た理由だよね~。
う~ん、これに関しては少し難しい説明になりそうだから~。
とりあえず簡単に言うね~!!
君がどれだけ私のことを好いてくれているのかが知りたかったんだ~。
この業界って結構、どろどろした人間関係が広がってるんだけどね~。
今までボクのことを好きって言ってくれる人もたっくさんいて~、
近付いてきてくれたんだぁ。だけどほとんどがにわかさんか、すぐに飽きる人、
もしくはボクの弱点を探すためだけに近づいてきた人だったんだぁ。
そんなのにうんざりしてた時だったんだぁ。
君がボクの話をあんなにも楽しそうにしてくれているのを見たのは~。
それでなんでかなぁ、君はあの人たちとは違うかもしれないって思ったの。
だから1度話したいなぁって思ってたら、今日あんなことがあって、
これはチャンスだなぁって思ってきちゃったんだ。ふふ」
彼女は話しながら、少し寂しそうだった。
アイドル業界ではよくあることなのだろうが、
俺のような平凡な人生を送ってきた人から信じられないことだ。
それなのに、もう既に彼女はそう言う実態に
慣れてしまったのか軽い感じで話してくれた。
だから、この時の俺は単に慰めようとして、
言わなければ良かったことを言ってしまったのだ。
「それなら俺もアイドルになったら、優と一緒にいられるのかなぁ」
次回更新はまた少し間が空きます。
またお楽しみいただけると、執筆意欲も沸き上がりますので、お願いしますね♪
それでは、2018年もどうかよろしくお願いします(#^^#)