僕は人より
ツイッターお題シリーズです!
お題「鼻の穴に暮らすもう一人の僕」
僕は人より鼻がいい。
それは比較的、なんて言葉で括れる程度ではなく、人より数倍、という意味だ。
でも僕の鼻のよさは僕本来のものじゃない。
僕の中には、もう一人の『僕』がいる。
そしてその『僕』は僕の中でも【鼻の中】に住んでいて、それが僕の鼻のよさの要因となっているんだ。
ほかにも、【耳の中】にもう一人の自分を住まわせてる彼女は、『彼女』のお陰で耳がいいし、【目の中】にもう一人の自分を住まわせてるあいつは、『あいつ』のお陰で目がいい。
そんな感じで僕の周りにはちらほらと人より優れた何かを持ってるやつがいる。
でもその優れた何かのせいで、彼女が攫われたのだとしたら、僕らはむしろ不幸だったんじゃないかとさえ思う。
「おい」
頭を叩かれて目を覚ますとあいつが僕の目の前で仁王立ち。
「・・・なに」
あくまで個人的にあいつが嫌いな僕はなるべくぶっきらぼうに、早く帰ってもらえるように言葉を発す。
というかなんだ?あいつから僕に話す事なんて・・・
「彼女が攫われた」
その言葉に僕は意識をする前に走り出していた。
彼女が攫われた!?誰に!?どこで!?いつ!?フー!??ウェア!???ウェン!????
僕は即座に『僕』に鞭を打つ。
起きて!!起きて!!彼女を探すぞ!!どこに居るかは僕だけが知るはずだ!!!
この時僕はあいつに知らされた彼女誘拐の事実と同等に、誘拐された彼女をあいつが先に見つけるのが怖かった。
もしかしたらそれで彼女が僕じゃなくてあいつに惚れるかも、惚れるかも、惚れるかも!!??させるかっっっ!!!!
「おい、おちつけ!!!」
うしろであいつが僕を止めようとしてる。だが止まるか!!僕は知ってるあいつが僕の『僕』を利用していち早く彼女を見つけようとしているのを!!
僕は叫ぶ、彼女の名前を大きな声で!!!!
彼女の中の『彼女』に聞こえるように!!!!!!
そして『僕』が目覚める。
実はここまで僕はあてずっぽうで走ってた。だから僕自身、『僕』が背後を指し示すなんて思ってなくて。
急転換!僕は咄嗟に来た道を戻る。
「えっ、は!??」
あいつも僕を追ってくる。流石あいつは『あいつ』のお陰で動体視力も優れてる。僕に置き去りにされることなくついて来る。鬱陶しい!!
僕は『僕』に従い走る。全身に血が迸る!!
僕はすでに視覚を捨てて『僕』の司る嗅覚にのみ全神経を置いていた!
だからここで気付いたのは僕と反対に目を光らせていた『あいつ』だった。
「なぁ、これって・・・」
僕は、自分の家の前に居た。
「は・・・は・・・!?」
バッと後ろを振り返る。あいつも唖然としている。
僕は仕方ないから玄関を通って家の中へ。
「あっ、おい」
「ちょっと待ってて、それか窓から見てて」
あいにくあいつは家の者じゃないから、入ることが出来ない。
僕は開いてる扉からリビングに入る!!
すると・・・
「・・・あ!帰ってきたよ!帰ってきたよ!!」
彼女が・・・居た。
窓を見るとあいつも驚いている。
いやなぜ?うん?なぜ彼女が僕の家に?
僕も彼女もあいつも家は違うはずなのに。というか僕は彼女とあいつの家を知らない。
「おかえり、今日から新しい家族だよ」
ご飯と共に彼女を抱き上げる、シン。
・・・へ?新しい家族?
するとカエデさんが奥から現れて、
「シンがね、拾ってきたのよ~」
・・・うん、え?
「可愛いでしょ?名前どうしよっか」
・・・はいはいはい、ちょっとわかってきたよ嘘だよ。
窓の外では格好悪く地面に倒れてるあいつの姿。
それを見つけたシンが窓に張り付いて・・・
「お母さん!!鷲が落ちてる!!!」
と。
「あらあら、猫さんだけじゃなかったの~?」
と、カエデさん。
ワシ?ネコサン?
あいつがワシで、彼女がネコサン?
ちょっと頭が混乱してきたぞ?
僕はネロだけどこの二人にも名前があったのか・・・?
「さすがに犬猫鷲は飼えないわよ~?」
イヌネコワシ?ソレハナンダ?
いや、うん。えっとぉ・・・イヌネコワシのワシはあいつで、ネコはネコサンの彼女で・・・じゃあ残ったイヌって・・・僕!!??
え、待って!?僕ってヒトじゃなかったの!?シンとかカエデさんとかと同じヒトじゃなかったの!?
違う・・・種族?
「聞こえてたよ、君の声」
ハッ、と後ろを振り向く。彼女だ。
「『私』が聞いてたんだ。ずっと、探してたのを」
彼女は僕に擦り寄ってくる。
これって・・・?
「・・・嬉しかった。ありがとう。今日から私も家族だね」
よくわかんないけど・・・僕の隣に彼女、外では落ちてるあいつ。
僕の、勝利!!?
あいつの『あいつ』はしっかり見ていて、その後僕と彼女が出かける度に嫌がらせというか、ちょっかいを出してきた。はっ!僕が彼女を勝ち取った!負けイヌの遠吠えさ!!・・・あ、負けワシか。
鼻がいい僕と、耳がいい彼女と、目がいいあいつは、そんなこんなで長い付き合いになった。それを見兼ねたカエデさんが、あいつを飼う用意を始めた。僕と彼女の時は用意しなかったような物を沢山。
その(大きなお世話の)お陰で僕ら三人は一つ屋根の下で暮らすことになり、僕とあいつとの彼女争奪戦が再び始まった。
とはいっても僕がヒトじゃないっていうショックは治ってない。
人より鼻がいいって、他のヒトより鼻がいいって意味だったのにな・・・ヒトとイヌとでカテゴリが違うとは。流石の僕もびっくりした。
そして更に僕の中の『僕』は、イヌカテゴリではむしろ弱いことが先日初出席したイヌ集会で判明した。
いやまぁ。違う土俵なんだから僕が一番だったのは頷ける、か・・・
如何でしたか?
お題に振り回されましたねあと数回チャレンジしたいけどこれ以外の話が思い浮かぶ気がしません!!!!!!!!