王立アカデミー
王立アカデミー
竜都シャングリラ西部に位置する、竜騎士と竜奏医師の養成校。
王族や名門貴族が多く通う場所に、グラン殿下の紹介により編入してきたククルは異物。
そしてなぜか……走らされていた。
「ぜぇ、ぜぇ、うぐっ……吐きそう」
「どうした。まだ、五十周残っているぞ!!」
ガタイのいい男、ロス教官の鋭い声が飛ぶ。
「ち、ちょっと休憩……」
倒れ込んだククルに
「もう、十周追加するか」
鬼のような言葉。
さすがに、もう限界である。
「体力強化って、これ竜騎士学科のメニューだろ」
「なにを言っている。竜騎士同様、竜奏医師のも体力は必要。特に貴様の場合は、頭でっかちの貧弱人間!! 体を鍛えねば、戦場では生きられんぞ!!」
「やってられるか!!」
ククルは鼻をならすと、残り少ない体力を振り絞って逃げ出した。
「こら、待て」
ロスは引き止めようと思ったが、ため息をついて立ち止まる。
実際、ククルは竜奏医師としては優秀だ。
彼の知識量に、竜奏医師学科の教師が目を丸くしたぐらいだ。
そこで、校長が特別に竜騎士学科のメニューを特別に取り入れた。
(竜奏医師に、竜騎士のメニューをこなさせるか……ひょっとしたら)
ロイは首を横に振ると
「考えすぎだだな。あの小僧、捕まえねぇと」
つーか、まだ走れるじゃねぇかと呟きながら、ククルが逃げた方向に向う。
「……」
その光景を屋上から見ていた青い髪の少年。
踵を返すと
「あなたが、誰かを見てるなんて珍しいですわね」
少年と同じ顔の少女、セノーテが声を掛ける。
「……別に」
横を通り過ぎようとした少年に
「お父様も兄様も、そのつもりで彼を編入させましたのよ」
セノーテはため息をつくと
「ククルには、あなたと組める可能性がありますわ」
「余計な、世話だ」
そう言って、少年は去って行った。