討伐部隊
「あら、この青色のは……」
地面に散らばった青色の厚い殻。
「これは、アウィス・ラーラの卵の殻ですね」
無精髭の男ネヘミヤが答える。
「確か、アウィス・ラーラは子育てが終わったら巣の掃除をする」
マティアの言葉に
「ああ、被害が出てない理由がわかりました」
ですがマズイですね、とネヘミヤは続ける。
「どういう意味だ?」
「自分の食料として攫って来た人間が、巣の中に居るってことです」
「ネヘミヤ隊長」
崖上に巣を発見しました、と飛竜に乗った青年エベルから報告。
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「クエーッツ」
濃緑色の瞳がククルを睨みつける。
「オレなんか食べても美味しくないって」
鋭い嘴から逃げ回るのも、そろそろ限界だ。
クロノスを剣へと変化させ
「このっ」
運が良かったのか、剣の先がアウィス・ラーラの濃緑色の瞳をかすった。
怯んで飛び上がった巨大な鳥に
「あれは……」
マティアたち討伐部隊も気づいた。
「囚われてる餌の人間もしぶといと見ました。エベル、このまま飛竜でアウィス・ラーラが巣に近寄らないように牽制しろ」
ネヘミヤの指示に
「分かりました」
エベルは頷く。
「私たちは、攫われた人間の救出だな」
「巣の中には、私が降ります」
ネヘミヤはマティアにロープを渡すと
「これを、太い木の幹にお願いします」
「いや、中には私が行こう」
ワガママを言って君たちについてきたのは私だ、とマティアが言った。
「しかし、危険では……」
「危険には慣れている」
そう言って、マティアはロープを体に巻きつける。
「分かりました。サポートは、任せてください」
ネヘミヤは、深いため息をついた。