アウィス・ラーラの巣
「ここは……」
ククルは、薄っすらと目を開いた。
空が高いーー
「いっ……」
右腕に痛み。
よく見ると、藁と雑草で作られた円型の地に硝子の破片が混ざっている。
どうやら、それで手を切った。
(これで、いいのよーー)
コアトリクエがの顔が、ククルの脳裏を過る。
彼女は避けなかった。
あの感覚を思い出し、ククルは頭を抱えた。
他人とはいえ、自分だ。記憶は共有される。
もう、後に引くことはできない。
ククルは立ち上がって周囲を確認。
「鳥型神獣の巣……アウィス・ラーラか」
巣には雛はいない。
「なんで、こんな場所に……」
巣の中央に、白いバイオリンケースを発見。
「よかった、クロノスは無事」
ククルがバイオリンケースに触れると同時
「クエー、クエー」
大きな鳥の影が覆った。
ポタポタと、生温かい液体がククルの頬に落ちる。
(ビリビリする……)
ふと、イツトリに教えられたことを思い出した。
アウィス・ラーラは嘴にノコギリのように鋭い歯を持つ。
雛が巣立つと、今度は自分の食料を巣へ持ち込む。
「こ、これって涎か?」
非常にマズイ。
「クエーッツ」
巨大な嘴が巣立の底を突く。
「あ、危ねえ……」
ククルは端に避けたが、アウィス・ラーラは餌を食い損ね不機嫌に苛立っている。