来訪者
ミクトラン側からやってきたククルが、初めて来た場所に近い竜都南部に位置する辺境の町レインディア。
その情報を頼りに、クロスフォード子爵と部下たちは調査を進めていた。
「やはりオベリスクか……」
ミクトランへの道を隔てるゲートの存在。
「子爵閣下、ここより離れた孤島にもオベリスクの存在が確認されています」
「そうか……」
部下の報告を聞き、クロスフォード子爵はレインディア海岸の地図を広げる。
「そうなると、三ヶ所目は洞窟のあたりか」
この三角形の中央ーー
クロスフォード子爵は空を見上げ
「まさか、ミクトランというのは……」
「焦らなくても、ステラは無事だよ」
背後に少年の声。
「君は、テスカポリトカの」
警戒するクロスフォード子爵と部下たち。
青年は眼鏡ブリッジを押し上げ
「僕は、ウィツィ。調査はここで中止させてもらう」
あなたには相応しい役目がある、と続ける。
「それは、一体どういう……」
訝しげな表情を向けたクロスフォード子爵に
「竜王に伝言があるーー王立アカデミーの生徒ステラの解放条件として、二重楽器の所有者をアルメニア近くの廃村ファティマへ連れてくること」
ウィツィは、淡々と告げた。
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後日、クロスフォード子爵からの報告が竜都にもたらされた。
「父上、これはどうみても向こうに有利なのでは?」
苦言を呈するグランに
「うむ……おそらくは、ファティマでアルメニアへの道を開かせることになる」
竜王フナブ・クーは、長い首を上げた。
「今の我々には、進むしかない」