若き竜
周囲の木がなぎ倒され、大きな土煙りがあがった。
「……ちょっとは、手加減してヨ」
「それでは、稽古の意味がなかろう」
地面に落ちた若い地竜を見下ろすラピス。
「ラピスは、前のご主人様のことが心配じゃないノ?」
人間たちの噂は、自然と耳に入ってくる。
「……」
「ラピス、バルテサス」
グランの声を聞いて
「あ、ご主人」
聞いて聞いて、と小さな子供のようにラピスとの稽古内容を話すバルテサス。
「おう、かんばってるな」
「やったー、褒められたヨ」
その様子を見て
「あいかわらず懐いてるな」
「兄様に助けてもらったのが、契約のきっかけのようですわ」
猫のアズールとセノーテ。
「何か用かのう」
地上に降りたラピスは、グランに聞いた。
「三兄弟が、揃って妾の前にそろうとは珍しいからな」
「さすが、鋭い。ラピスなら、ククルの匂いをたどって探すことが出来ると思ってね」
セノーテとアズールと共に捜索に協力してもらいたい、とグラン。
「妾がたどれるのは、ククルの一部だけじゃ。距離が離れれば正確さにも欠ける」
「それでも、頼む。今のあいつは放っておけない」
「私からも、お願いしますわ」
真剣な眼差しのセノーテとアズールを見て
「……」
「心配なら、素直に行けばいいのに。年取ると、むずかしく考えてダメだよネ」
そのククルって子が犯人て決まったわけじゃないヨ、とバルテサスの言葉に
「……若い者は、単純でいいのう」
ラピスは深いため息をつくと「協力しよう」と告げた。