広がる噂
「聞いたか、編入生の話」
「やっぱり、テスカポリトカと繋がってたとか?」
コアトリクエ校長が刺されたことにより、生徒の間では噂が広まっている。
「噂ってのは、タチが悪い」
不機嫌なアズールを見て
「……変わりましたわね」
今までなら「どうでもいい」で終わらせてますのに、とセノーテ。
「お、俺は別に……」
誤魔化すように、アズールは窓際へと跳躍。
人探しを専門にしている猟竜と竜騎士を捜索に出しているが、ククルの体は他人を寄せ集めて捜索されたもののため匂いが混ざりすぎて、猟竜の鼻が効かないようだ。
「少しでも、嗅ぎ分けられればいいんだろうが」
ため息をついたアズールに
「確かラピスは、ククルのことを懐かしいって言ってましたわ」
兄様にラピスを貸してもらえるようお願いしましょう、とセノーテが言った。
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「……では、失礼します」
深々と頭を下げたマティアに
「たまには、実家でゆっくりしてこい」
気分転換もいいものだ、とグランは声を掛けた。
執務室から出て来たマティアの後ろ姿を見て
「兄様、マティアさんとお話を?」
セノーテが聞くと
「ああ、しばらく休暇をとりたいと。しばらく実家に戻ってなかったからな」
グランが答える。
「そうでしたの」
「兄上、ククルを探すためにラピスの力を借りたいのです」
セノーテとアズールから事情を聴き「なるほど」とグランが頷いた。
「今、バルテサスに稽古をつけている所だ」
城の裏手にある森へと向かった。