竜王の間
「ケツァルコアトル族とは、私たち竜奏医師が弾く楽譜を作った伝説の竜奏医師の一族ことですわよね?」
大きく目を見開き、セノーテが言う。
「父上、彼はケツァルコアトル族の王族ですか?」
グランが聞くと
「……いや」
フナブ・クーはため息をつく。
「ケツァルコアトル族は、先の対戦でほほ全滅。生き残ったケツァルコアトル族を保護しているのは、テスカトリポカ……神獣の王だ」
フナブ・クーはククルに視線を向け
「近頃、神獣の統制に不具合が起こっているようだ。これは、神獣の王であるテスカトリポカに重大な損失があったと思われるが」
「さすが、竜王様は鋭いな、ですね」
ククルは、肩をすくめると
「オレが、黒の楽譜の断片を弾いて壊した」
でも、テスカトリポカを確実に仕留めることは出来なかった。
「だから、完全な黒の楽譜が欲しい」
真剣な眼差しのククルを見て、グランは頭を掻く。
「俺たちの敵である神獣の王テスカトリポカを倒すってことには、大賛成だが。お前が、テスカトリポカを恨む理由はなんだ?」
「……そうですわね。保護してくれた相手なら、情があるでしょうし」
兄の言葉に、セノーテが頷く。
「テスカトリポカは、竜王様を殺して……自らが、神の座につくために全てを滅ぼすと、何度かオレに言っていた、ですね。でも、オレこの世界が結構好きだからそんなことさせたくないんだ、ですよ」
ぎこちない敬語で、ククルが言う。
その言葉にを聞いて
「心あたりはあるが、教えることは出来ない」
フナブ・クーが言う。
「な、何でだ、ですか!!」
動揺するククルに
「落ち着けって。父上が言いたいのは、今のままじゃ教えられないってこった」
グランが説明。
「そうですわね……底知れない力は感じますが、竜騎士と組むレベルにまでは達していないかと」
追い打ちをかけるように、セノーテ。
「お、オレはどうすれば!?」
「とりあえず王立アカデミーに入学して、鍛えることだ」
竜王フナブ・クーの計らいにより、ククルは王立アカデミーに入学することになった。