血の干渉
二重楽器アレスがヨアルリに奪われたのと同時、竜都を襲っていた神獣たちが一斉に引いた。
グランの執務室で、ククルとセノーテは報告を聞いた。
エルカナ森で負傷したマティアとジルは病院で手当てを受けてる。ラケルタの猛攻に苦戦しているカエルレウム公爵と王立アカデミーの上級生たちの元には、セトとアルドルが向かった。
「ステラさんは、テスカトリポカの手下に?」
セノーテに聞かれ
「我々への牽制だろう」
グランは、深いため息をつく。
「ウェルテクスが、ウィツィに……」
守護竜であるウェルテクスを奪われ、ショックを受けているのはマティアだろう。
「あの、マティアさんに会いに行っても」
「……ああ、手当ては終わっている」
後は心の問題だ、とグランは言った。
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グランと共に竜王の間に向ったセノーテと別れ、ククルはマティアがいる病院に向った。
その途中、後をつけて来る黒猫ルナに気づいた。
「このクソ猫め……」
逃げ出したククルの手首に
(頼む、気づいてくれ)
ルナ中に居るアズールは、飛びついて噛み付いた。
「いっ……」
ルナの口に流れたククルの血を介して
「四大貴族の娘だ」
「見せしめだよ。見せしめ、あいつら人間のこと見下して」
ガラの悪い男たちーー床には大量の血痕。
後から来た女性が、大声で嘆いている。
(あれは、コアトリクエ校長……?)
「これ以上、踏み込まないで」
日傘を持った少女に拒絶され、アズールは現実に引き戻された。
ククルが思いっきり振り払った影響で
「ちょっとは、手加減しろ」
ルナーーアズールは、地面に落ちる。
喋った黒猫を前に
「……この常に不機嫌な声、アズール?」
ククルは眉を寄せた。