砂の都ラルグス
王立アカデミー・校長室
「その後、調子はどうですか?」
「ええ、立ちくらみもすっかりなくなりました。ですが、何も思い出せず」
申し訳ありません、とマルタは頭をさげる。
マルタは首を横に振ると
「いえ、アナタを責めるつもりはありません」
奴らの行動が水面下を移動するように狡猾で不気味と続ける。
「コアトリクエ校長」
校長室に入ってきたロスに
「何か分かりましたか?」
「それが……」
ロスは髪を掻くと
「生徒の一人が実家に連絡とってたんで、念のために履歴調べたんですが……」
おかしな所はないが微妙にノイズが混じる。
「……ノイズですか。データの改ざんの可能性もありますね、調べてみましょう」
✳︎✳︎✳︎
砂の都ラルグス
照りつける日光。
オアシスを中心に、辺りには砂の世界が広がっている。
「暑いのお」
妾の玉の肌が焼けそうじゃ、とラピス。
「それはいけない。中央にオアシスがあるので、お休みください」
セトの言葉に
「そんなこと言って、水浴びを覗くつもりじゃろ。男はスケベじゃからのう」
ラピスが、茶化すように言う。
「許可を頂けるのなら、堂々と覗きます」
「若……鼻血が」
アルドルに言われ
「ああ、これは心の汗だ」
セトは持っていた布で鼻を抑える。
「濁った汗じゃな。それに、覗きは坊やにはまだ早いのう」
そう言って、ラピスは中央のオアシスに飛んで行く。
「若、ククルさんとセノーテ殿下をお屋敷の方に」
二人とも慣れない暑さにまいっています、とアルドル。
「なんか、クラクラする」
「ククル、それって日射病の手前ですわ。水を……ああ、なんだか私も気分が悪い」
「……アルドル、二人の上を飛んで日陰を作ってくれ」
だいぶマシになるだろ、とセトが言った。




