竜城
「セノーテ、何をしてるんだ?」
壁際に隠れている妹を見て、精悍な顔立ちの青年が訪ねた。
「ぐ、グラン兄様」
ちょっと外を見てたら凶暴な鳥と目があった、とセノーテは答える。
「ほう、鳥か……それより、これから竜舎に行くが一緒に来るか?」
第一王子にして、竜王騎士団の団長グラン。
遠方に神獣退治に出た部下の帰りを労いに行くつもりだ、と続ける。
「わたしも、行きますわ。気になることもありますし……」
「お、好きな男でも出来たか?」
茶化すようにグランが言うと
「兄様なんて、知りません」
セノーテは、頬を膨らませる。
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ウェルテクスの背中から降りると
「ふう、ようやく一息つけますねぇ」
ステラが溜息をついた。
「……そうだな」
マティアが頷く。
「じゃあ、オレは少し寝る」
そう言って、ウェルテクスは竜舎の奥へと向かう。
キョロキョロと周りを見ながら
「竜がいっぱい……」
歩き出したククルに
「勝手に動くと、迷子になるぞ」
マティアが忠告。
「な、ならないっての」
ククルが、頬を膨らませる。
「マティア、ステラ。ご苦労だったな」
グランに声を掛けられ
「もったいないお言葉です」
マティアとステラは頭を下げる。
グランの背中に隠れてながら
「……」
セノーテは、ククルの方に視線を向ける。
それに気づいたククルは
「お前は、あの時……城から熱烈な視線を向けていた」
「こら、王女様に失礼だ」
顔を赤らめたセノーテを見て
「ずいぶんと、面白い鳥だったみたいだな」
グランは茶化すように言った。