記録のバックアップ
「前の世界では、トゥーラの意思にバックアップをとっていたのでな」
必要な時に閲覧できたが、それが破損してしまった今では竜たちの記憶は虫食い状態。
「それで、トゥーラのことを詳しく覚えてる竜族がいないんですのね」
頷くセノーテの隣で
「やっぱり、記憶を残すなら紙だな。怠慢はよくない」
ククルが言う。
「それを聞くと耳が痛いのう」
だが記憶力が悪いわけではないぞ、とラピス。
「最近では、城の書庫のデータベースに保存された重要記録は自動筆記で記録されていますわ」
お父様も定期的に記録整理してるようですし、とセノーテが説明。
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「ラピス様に、同行して頂けるなんて光栄です」
つきましてはハーレムの件を考えておいてください、と地面に額をつけるセト。
「お主は相変わらずじゃの」
溜息をつくラピスに
「すいません、すいません。若いの悪いくせです」
頭を下げるアルドル。
「でも、やっぱりメスの竜は優美でいいよな」
目の保養だ、と言ったククルに
「同志よ!」
「同志よ!」
ククルとセトは、拳を合わせる。
その光景を前に
「二人は似てるのですわね……」
セノーテは溜息をつく。
「若、これからの説明を」
アルドルに促され
「そうだった」
コホン、とセトは咳払い。
「まずは、イグニス砂漠のオアシスを目指す」
そこが俺の実家だ、とセトは伝えた。